BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

ベ ス ト

2010年12月30日 | 古本
  さて今年も押し迫った。ことしに読んで心に残る本を挙げます。

 ①「ドナウよ、静かに流れよ」著者 大崎 善生 文春文庫 2006年6月刊
 この際大崎さんは小説はもうやめて、ノンフィクション系だけでいいのでは。
以前にも書いたが、劇団四季はアルゼンチンのペロン元大統領の妻「エビータ」と
いう演目などやるくらいなら、四季の文芸部はこの作品を仕立てたらいいと思うが。
札幌にも常設舞台が出来るのだから、地元出身の原作者であることは話題に富む。
独裁者の妻で世界的に評価の分かれる〔エビータ〕より断然いい舞台になるハズ。
 ②「荒野へ」 著者 ジョン・クラカワー 集英社文庫 2009年3月刊
 この作品がショーン・ペン監督で映画化された時、偶然映画館で予告編をみて
いた。仕事仲間のSさんにも教えてもらった作品だが、読み終えるとしみじみ一人
で日本酒など呑みたくなった。いつかまた再読します。
 ③「ワセダ三畳青春期記〕著者 高野 秀行 集英社文庫 2003年10月刊
 偶発的に出会った本だが、はらわたがよじれるくらい笑った。次々と棚に在る
かぎりほかも買い揃えた。まぁとにかく、アジア探検ものはアヘン中毒になるくら
い出たとこ勝負の現場主義だ。しかも学だって結構あるのです。(笑)
 ④「海炭市叙景」著者 佐藤 泰志 小学館文庫 2010年11月刊
 映画と同タイミングだったが、この年末にいい作品で締めくくれた。もう今後の
新作が読めないのがあまりに惜しい。1990年10月に自死。アタシにとって
文句なく本年ナンバーワンだ。
 ⑤「阿弥陀堂だより」著者 南木 佳士 文春文庫 2002年8月刊
 今年も南木さんを随分読んだ。その代表作として挙げておこう。映画はみていな
い。あとでみるのもなんかなんだし。(笑)ともかく、づーっと好きでいられる
作家さんであることを確信。ただ古本屋さんにあまり出回ってないのが残念。
 ⑥「極私的メディア論」著者 森 達也 創出版 2010年10月刊
 森さんの本も何冊か読んだ。この本は2010年10月刊。それがもう半額だ。
だからいつも申し訳ない気持ちで読む。森さんに印税はいかないからだ。最初に
森さんを読んだのは「下山事件」(2004年2月刊)。「A」「A2」の監督だ
ったのを知ったのはそのあとのことだった。
 ⑦「死にたもう母」著者 出久根 達郎 新潮社 1999年9月刊
 この本にでてくる出久根母さんのはなし。お経も意味解からないのでいらない、
線香も煙いから嫌い、戒名だけ息子のお前がつけておくれ、と云った。出久根さん
は請け負った。アタシは戒名もいらない。〔石垣りん〕さん式の名前だけでいい。
どんな宗教的行事もいらないし、拒否する。
 ⑧「インパラの朝」著者 中村 安希 集英社 2009年11月
 まさしく新たな才能のドキュメンタリーだ。安シェラフをバックパックの底に
入れ、ユーラシアとアフリカ大陸を駆けた2年間。帯の作者の顔写真が強くアタシ
を射抜いていた。次作は新刊書店で即買いだ。
 ⑨「羆 嵐」著者 吉村 昭  新潮社 昭和52年9月刊
 昨年の道北旅へ行く前に読んでおくべき作品だった。苫前の陸奥にはその事件の
資料館が在るというのだから、是非寄って来るべきだったのだ。手に汗本です。
 ⑩「ペシャワールにて」著者 中村 哲  石風社 1989年3月刊
 中村さんのアフガンとの関わりあいは、ライ病の医療活動だったようだ。それは
1984年からで、それ以来いろんな活動を続けている。平和や援助のあり方につ
いて多くの示唆を与えてくれる。
 ⑪「さらば国分寺書店のオババ」著者 椎名 誠 新潮文庫 平成8年9月刊
 この単行本での衝撃デビューは昭和54年11月。それ以来約300冊の発行
らしい。アタシは約その半分を手に入れた。ゆえに近頃はすっかり収穫不足。
シーナさん本は均一で揃えることを旨としている。それがアタシなりのシーナさん
に対する尊敬の証としている。(時には新刊買いも有りで許して下さい)
 オババは10月に改めて再読か再々読。何度読んでも、笑い転げてしまうのだ。

 てなワケで今年も面白い本に出会えました。本屋さんの古本列伝に深く感謝です。


ワースト

2010年12月28日 | 古本
 今年内に読んだバカ本はあげつらって今年内に忘れよう。まぁだからワーストな
訳で、なんじゃこれと思っても決してその著者の著作全てがダメでもないし、ほぼ
もうダメダこりゃというケースもありで・・・。ただしこれはあくまで今年アタシ
が読んだということで、古本屋さんに在った旧刊ばかりだ。
 ①「こんな女でごめんあそばせ」著者 蝶 々 2006年10月刊
 今年のワーストワンは文句無くこの本だ。書く方も出版する方も買って読んだ
アタシも大バカもんである。ただこの方、大きなBOOK OFFなら5、6冊
の別タイトルが在るのだから意外だ。
 ②「トイレまんだら」著者 妹尾 河童 1992年10月刊
 これはもうタイトルがいけない。せめて「ご不浄曼荼羅」にというのがアタシの
意見。内容もただ著名人の便所のイラスト紹介で、それがどうしたというレベル。
 ③「吉村 昭」著者 川西 政明 2008年9月刊 (伝記)
 結局 吉村さんが書いた作品より面白いワケもなく、夫人の作家 津村 節子さん
も迷惑なことだったろうとアタシは想像している。それに定価2400円+税は
高すぎ。勿論その値段で買ったわけではないが。(笑)
 ④「東京が震えた日 2・26事件、東京大空襲」著者 保阪 正康 
                            2008年8月刊
 相当量の著作がある。驚嘆するのは自己写真の多いことだ。つまり取材先の現場
というより、そこへ自分が行ったというばかりに、自分がメインに写る写真だ。
講演セミナーの広告なども、必ず自分がアップの写真入りだから大いに笑える。
 ⑤「思い出トランプ」著者 向田 邦子 昭和56年12月刊
 こんなに古い価値観でなぜあんなに読まれたのか不思議。それも〔古風〕とは
違うのだ。13の短篇集だが唯一まあまあなのは「マンハッタン」だけだ。それも
主人公〔八田〕という男の姓をシャレた呼び方にしただけのもの。
 ⑥「水平線上にて」著者 中沢 けい 1985年4月刊
 主人公は高校生だが高校生には読まれなかっただろう。句点が長い。例えば
<和泉晶子がレッスンに通っていたピアノ教師の家の庭が幾らか似ていて、もっと
も向こう方は三倍くらい広く、敷地内に離れ離れに三軒も家が建っているうえに庭
の真ん中に自動車が楽に通れる道がある代々郵便局長を務めてきた家なのだが、と
しより二人が丹精した庭に花のない時はなく、房州の土地になじんだ夏みかんや
枇杷はたわわに実り、屋敷回りは赤いやぶ椿の太い樹が囲んでいた。>という感じ
が所々普通にある。結局読み終えて何が書いてあったのか忘れてしまうとです。
 ⑦「ランプコントロール」著者 大崎 善生 2010年7月刊
 ついにアタシも堪忍袋の尾が切れた。以前にも小説の部でなんでいつも同じパタ
ーンなのかと詰った。好きな書き手だけについ厳しくなる。だが〔ノンフィクショ
ン〕の部ではベストもあるので、次回にベストリストを書きます。
 まぁ他にもあるけどこんなトコロテンで。(笑)

叙 景

2010年12月24日 | 映画
 新刊で平積みになっていた。アタシは躊躇なく定価で買った。読み終えるとタイ
ミングよく上映中だった。

 勿論小さな不満はある。頭から忘れた頃になんでメインタイトルが入るのかとか、
監督が〔カット!〕と云い忘れたのではと思うくらいカット尻が長いとか、全体に
役者の芝居が重た過ぎとか、どこかクスリとくる場面があってもいいのではとか、
芝居が不自然な場面のなにもそこまで原作に忠実にならなくてもとか、少し夜の
ナイトシーンはアンバートーン(暖色)がきついのでは、とかだ。
 しかし総じてこの映画は傑作になった。ラストのクレジットにも熊切和嘉監督の
誠実さがよく出ている。そしてそれは原作がなお傑作であったことが証明されこと
でもある。
 映画は静かにすすむ。極力抑えた音楽も、三脚に乗せたカメラも煩く主張しない。
どこにでもある、ほぼみんなそれだろうという市井の人々の生活がオムニバス形式
で切り取られていく。そしてそれはそれぞれに繋がっている。たとえ路面電車の中
に乗り合わせただけのでも、目の前を通り過ぎただけの人々であってもだ。映画と
観客はそこを静かに絶望と希望とで私たちの物語としてつなぐのだ。家族の絆とか
愛とか、そんな安っぱな言葉なんぞ恥ずかしくてこの映画から逃げ出しているのだ。
まさに ひとびとの〔いきる叙景〕なのだ。

 小説は1章と2章とに分れ、さらにそれが9本づつの短篇として、とくに1章で
はつながりのある物語として構成されている。予定では全4章になる構想だったと
聞くと、著者の自死があまりにも惜しい。2章の最後に「しずかな若者」が載って
いて、実に巧くて堪能した。2章のややタルミもこれで吹っ飛ばした。
 アタシはこの小説と映画を、文句無く今年のナンバーワンとする。

 映画「海炭市叙景」 監督 熊切 和嘉  音楽 ジム・オルーク
 
 「海炭市叙景」 著者 佐藤 泰志  小学館文庫 定価619円+税
  ( 2010年11月22日 第3刷発行 )
  ※1991年12月に集英社から単行本として発行された作品

ヘヴンズ

2010年12月21日 | 映画
 館主のボウズ頭は鼻の穴をふくらませて云った。
 「長いからね、これ特別料金2500円!」
なるほど、4時間38分ならアタシのみて知る限り「人間の条件」以来の上映時間
の長さだ。「ヘヴンズストーリー」 瀬々 敬久監督をみた。
 実在した殺人事件をモチーフにして、その後の十年ほどの復讐劇という映画の
リアリティは、役者の芝居というか細かいことをいえばヒゲののび方や、ヘアー
スタイルにアタシは目が行く。副業で復讐を代行する警察官のボサボサな長髪は
ありえないだろう。外国映画の、いかにものそれらしい配役を思い起こす。
 とにかく時間軸の無理と破綻が目に付き、そこを補うためのシーンが追加され長
時間になった。手持ちカメラショットの多用は煩くて、アクションシーンのアップ
つなぎはハリウッド映画で飽きている。見終えると、こんなシーンがあってもよか
った、こんなシーン無くてもという不満が彷彿する。これ3時間くらいの映画に編
集するともっといい映画になると思うが。(余計なお世話と十分知りつつ)
 山崎 ハコさん微妙だ。なにも映画に出ることはないと思うが。(テレビなども)
25年前の道新ホールライブに行った身には辛い。ハコさんのデビューライブ盤は
CDにして一番のアタシの旅のお供だ。
 ハコさんは歌詞で「さあアンタは どうする どうする さあどうする」といつも
アタシに生きかたを問い掛けてくるのさ。(笑)

ともしび

2010年12月17日 | 古本
 この本のモデルになったとおぼしきスーパマーケットの、その近くで暮していた
Oさんは、この夏 逝ってしまった。
 まるである傾向本に隠れるように、この1冊だけが場違いな傾向として本棚に挟
まっていた。体調がおもわしくなかったこの1年に、彼はこの本を読んだのであろ
うか。2009年7月刊だから、丁度その1年内にOさんの〔ともしび〕が消えた
のだ。
 札幌在住の著者が書いた〔ともしびスーパーマーケット鳥居前店〕という名の
市場に関わる人間、それぞれの群像。
 Oさんはどんな〔ともしび〕をみつめていたのだろうか・・・。

 「ともしびマーケット」 著者 朝倉 かすみ  講談社 定価1400円+税
  ( 2009年7月21日 第1刷発行 )
 ※朝倉さんは 09年「田村はまだか」で 第30回吉川英治文学新人賞 受賞

届 く ?

2010年12月14日 | 古本
 作家と読者においては、最初がどの作品との出会いだったかが重要なのかも知れ
ない。その一作品で他も読んでみたくなるか、その逆だったりするだろう。アタシ
のように、その時棚に在ったものを手当たり次第の古本漁りは、必ずしもその作家
の発刊順に作品を読むなんてことにはならない。
 しかしこの作家さんとの出会いは理想的だった。すべて古本ではあったがノン
フイクション系の「聖の青春」「将棋の子」「優しい子よ」「ドナウよ、静かに
流れよ」などを涙ながらに読んだ。そしてそのあいだに他の小説も挟んだ。
 しかしもし、この「ランプコントロール」と最初に出会ったとしたら、多分もう
大崎 善生の著作を続けて読むことはなかったのかも知れない。
 大崎さんこの小説はひど過ぎます。一体誰に向けてこんな小説を書いているので
しょうか。「婦人公論」2008年から2010年までの連載だったことにヒント
があるとすれば、これは婦女子向けのつもりなのでしょうか。
 道東の昆布盛で漁をしていたお兄さんや、道の駅に泊まり夜明けと共に出発して
行ったトラックの運転手さんや、公園のベンチに座り顔を手で覆って微動だにしな
かった不思議な少女や、何も持たず早足で歩き突然踵をかえして歩き続けたお姉さ
んに、この小説が何かを届けられるとは到底思えないのだ。勿論アタシにも。
 新宿の高層ビル群の灯りがみえる高円寺のアパートメント、銀行と出版社に就職、
ドイツフランクフルト空港、個性的だが無害な同僚達、申し分ない二人の美人恋人。
それはなにかカタログ雑誌に載っているようであり、スタイリストが整えたモデル
ハウスの室内といった按配の生活感がない恋愛小説なのだ。そしてSEXシーン
だけが妙にリアルだ。(これはこれでチト嬉しいが。笑)
 大崎さん、この作品、誰に読んで欲しかったのでしょうか。誰に向けた小説で
すか。「婦人公論」の読者をナメてませんか。手の内がいつも同じでミエミエの
恋愛小説より、また面白いノンフィクションを書いて下さい。

 「ランプコントロール」 著者 大崎 善生 中央公論新社 定価1600円+税
  ( 2010年7月25日 初版発行 )

199円

2010年12月09日 | その他
 このブログを始めた3年以上前から、パソコンのキーボード用灯りとして蛍光灯
スタンドを付けた。手元が暗いと目が異常に疲れるからだ。管切れなのかそれが点
かない。そこで分解しよくよくテスターで調べると、ON OFFスイッチが壊れ
ていることが判った。管は三菱製だがスタンド全体はチャイナ製だ。
 このタイプ スイッチがグローランプの役目をしているようで、短絡接点の耐圧
容量が小さくONスパークで消耗が激しいようだ。
 その1接点スイッチを買いに街中の梅沢無線に行った。ほぼ同じ物があり、1個
199円。交通費はその約4倍、およそ1000円の修理費というべきか。
 分解して調べたり、街へ出たり、修理したりの1日仕事。トータル時間はおよそ
8時間。ほぼ時間あたり100円のお楽しみだったというべきか。
 かくして外は雪で、やっと冬の様相。 うむー、師走じゃ~。(笑)

ふるっ!

2010年12月07日 | 古本
 どうやら「思い出トランプ」とは短篇の連載集であったらしい。小説新潮 昭和
55年2月号からの13篇を上梓したものだった。しかし昭和55年とは1980
年だから今から30年前で、いかにも昭和の臭いがぷんぷんだ。中高年のサラリー
マン家庭の生活輪郭や幸福感を微細に書いたとて、今に通じるものは殆ど無い。
 アタシは数年前から数十年前の古本を漁る日々だが、これほど「古」を感じる
小説も珍しい。きっと時代を貫く普遍的な気分が何にも無いからか。
 うむっ、向田さんを好きだという作家さんも多くいるのにね。なんだろうこの
トランプは?・・・。 23刷とは、昭和はアマすぎっ!(笑)

 「思い出トランプ」 著者 向田 邦子  新潮社  定価980円
  ( 昭和56年10月20日 23刷 )

な し

2010年12月03日 | 古本
 今年の9月に行った根室では、雑誌に載っていた古本屋を街中で探した。住所を
訪ねたがどうも分らない。暗くなる前にコンビニでおでんを買い、20K先の道の
駅に着かねばならない。そこで探した店とは違うが、目についた古本屋へ入った。
 初めての店は作品陳列棚の系統を把握することにまず時間をとられる。ざぁーと
店内を歩いたが、真剣に悩むほどの時間はない。1冊を手にとった。500円は
予定外だが、まぁ根室古本屋記念として「2000年間で最大の発明は何か」は
いいだろう。それぞれ専門分野の学者や研究者のアンケート回答集だ。
 印刷機とかテレビ・パソコンの順当なものから消しゴム・乾草・馬のあぶみと
首あて、といったものまで。そのなかに〔なし〕という人がいた。言い分はこうだ。
<過去2000年における「最大の発明」があるとは考えない。個々の発明はすべ
て、最後は不幸な結末におわるか、無意味な脇道にそれてまったく無益なものと
堕してしまっている。わたしには人類が前進をつづけているようには思えない。
われわれは変化する時代や出来事に適応し、進化しているだけだと思う。>
 なるほど、思い当たって説得力はある。アタシは携帯電話のメール機能などは
要らないと思うのだが。絵文字の意味が分らんとです。(笑)
 ※ヘンリー・ワーウィック氏の回答 美術や作曲をよくする科学者。米国在住。

 ジョン・ブロックマン編「2000年間で最大の発明は何か」 訳 高橋 健次
  ( 草思社 定価1500円+税  2000年1月1日 第1刷発行 )

コ ロ ナ

2010年12月01日 | 古本
 過去のオリンピック大会で記憶していることや、知っていることはあまりない。
1996年のこのアトランタオリンピックもほとんどなにも憶えていない。元々
スポーツにあまり関心がないせいか。それでその分この「冠」は新鮮で、いま読ん
でも面白い。
 しかし最近のスポーツ大会、寄ってたかってテレビがつまらないドラマに仕立て
てしまう。なんであのバレーボール大会にアイドルグループが出てきて歌い踊るの
か。応援アクションもコメントも台本作家が書いた進行通りの棒読みセリフだ。

 沢木さんは、古代オリンピックが歴史から消えたように、近代オリンピックはあ
まりの商業主義に侵され早晩同じ道を辿るだろう、という。つまり競技がTV放送
の都合上の日程や時間で進行され、視聴率のとれる、また自国のメダルばかりに目
が奪はれていると。それはあのタマランチ(サマランチ)会長になってからより
顕著だと。アトランタでは大スポンサーのコカコーラを飲まなかったとも。(笑)

 ところで沢木さんは一文字タイトルがお好きなようで、この「冠」はコロナと読
んでほしいらしい。「檀」や「凍」はそれなりに解るのだが、どうも冠はね。まぁ
作者がお気に入りならしょうがないか。

 「 冠 」 著者 沢木 耕太郎  朝日新聞社  定価1600円+税
  ( 2004年1月30日 第1刷発行 )
 ※「黒い輪ー権力・金・クスリ オリンピックの内幕」 光文社 1992刊
   を読むと、IOCのその汚い世界に身がすくむ。