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帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百十一〕つねよりことにきこゆるもの

2011-07-07 00:11:44 | 古典

 



      帯とけの枕草子〔百十一〕常より異に聞こゆるもの



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。


 清少納言枕草子〔百十一〕つねよりことにきこゆるもの
 
 原文
 
つねよりことにきこゆるもの、正月の車のをと、又鳥の声、あかつきのしはぶき、物のねはさらなり。


 文の清げな姿
 
常とは異なって聞こえるもの、正月の車の音、又、鳥の声、暁の咳、ものの音色は、さらに言うまでも無い。


 心におかしきところ
 
常より殊に感じられるもの、睦つきのものの音、また、とりの声、赤つきのし端吹き、ものの根はなおさらである。


 言は戯れ、心得るべき「言の心」がある。
 
「ことに…異に…殊に…特別に」「きこゆ…耳に聞こえる…心に感じる…身に受ける」「正月…睦月…睦ましい壮士…睦ましいつき」「月…壮士…おとこ…突き」「車…しゃ…者…もの…おとこ」「又…亦…股」「鳥…女」「声…囀り…意味不明のひとのことば」「あかつき…暁…赤つき」「赤…元気色」「つき…突き…尽き」「しはぶき…咳き…子端吹き」「し…子…おとこ」「は…端…身の端」「ふく…吹く…やま吹きの白い花が咲く…やまばで噴出する」「ね…楽器などの音色…声…根…おとこ」。


 藤原公任撰「和漢朗詠集」の「暁」にある貫之の歌を聞きましょう。

 あかつきのなからましかばしらつゆの おきてわびしきわかれせましや
 (暁がもしも無かったならば、白露が降り、起きて、わびしい別れをするだろうか……あか尽きがもしも無かったならば、白つゆ贈り置いて、わびしい別れをするだろうか)。

 「あかつき…暁…あか尽き」「しらつゆ…白露…白つゆ」「白…おとこのはて」「おきて…起きて…降りて…贈り置きて」。朝帰り来て女のもとに遣った歌。


 貫之、公任と同じ「言の心」で歌を聞けている人は、歌の「心におかしきところ」がわかり、歌が「をかし」と思え、恋しくなるでしょう。

 枕草子は、このような歌と同じ文脈にある。


 伝授 清原のおうな

 鶴の齢を賜ったという媼の秘儀伝授を書き記している。
 
聞書 かき人しらず

  
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。