帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百六〕いひにくきもの

2011-07-02 01:01:32 | 古典

  


 

                      帯とけの枕草子〔百六〕いひにくきもの


 

 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。

清少納言 枕草子〔百六〕いひにくきもの

 

いひにくきもの

人のせうそこのなかに、よき人の仰せ事などのおほかるを、はじめよりおくまでいひにくし。

(人の消息の中に、貴い人の仰せ言などが多くあるのを、始めより最後まで、人に・言いづらい……人の手紙の中に、貴い人の仰せ言が多く有るので、始めより、奥の意までは、人に・言い難い)

はづかしき人の、物などおこせたる返事。

(恥ずかしいほど気が引ける人が、物などを寄こされた、その返事……恥ずかしいほど気が引ける人が、ものなど、痴こせたる・ばかばかしくなっている、その返事)。

おとなになりにたるこの、思はずなる事をきくに、前にてはいひにくし。

(大人になった子どもが思ってもいない事を尋ねるのに、目の前にしては言いづらい……おとなしくなった子の君が、思いを思わなくなる事を、彼に・問うときに、子の君を・前にしては言いづらい)。

 

言の戯れを知りましょう

「おく…奥…手紙などの末尾…最後…言の奥の意味…奥深く秘められた真意」「物など…贈物…言葉…歌・詩・文」「おこせたる…寄こせたる…をこせたる…痴こせたる…とぼけたる…ばかげたる」「おとな…成人…音無…おとなしい…動きなどが鈍い」「おもはず…思いもしない…思いを思わない…その気の無い」「こ…子…こども…おとこ」「前…面前…前に付いている物…おとこ」。


 

伝授 清原のおうな

聞書 かき人知らず    (2015・9月、改定しました)


 原文は「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」による