帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百六十七〕檜扇は

2011-12-31 00:02:39 | 古典

  



                      帯とけの枕草子〔二百六十七〕檜扇は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十七〕ひあふきは


 文の清げな姿

 檜扇は、無紋、唐絵。


 原文

 ひあふぎは、むもん、からゑ。


 心におかしきところ

 非合う木は、無文。空枝。


 言の戯れと言の心

  「ひあふき…檜扇…桧の薄板を綴った扇…非合う木…合う木ではない…拒否すべき木」「ひ…非…否…卑」「木…男…おとこ」「むもん…無紋…無地のまま…無文…文よこさない男…無学」「からゑ…唐絵…唐風の絵が描いてある…空枝…空洞の身の枝」「から…殻…空…中身がない…むなしい」。

 
枕草子は、おとなの女たちの同感できることが書いてある。「をかし」と笑えればよし。それ以上のものではない。それ以下の無味な文でもない。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。


帯とけの枕草子〔二百六十六〕扇の骨は 

2011-12-30 00:12:26 | 古典

  



                      帯とけの枕草子〔二百六十六〕扇の骨は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



清少納言枕草子〔二百六十六〕あふきのほねは


 文の清げな姿

 扇の骨は朴。紙の・色は、赤い、紫、緑。


 原文

 あふぎのほねは、ほお。いろは、あかき、むらさき、みどり。


 心におかしきところ

 合う木のほ根は、おおしい。色情は、元気な、群咲き、若々しい。

 
 言の戯れと言の心

 「あふき…合う木…男…合う気」「ほね…骨…ほ根…お根…おとこ」「ほお…朴…細工物に用いられる木…堅く柔らかい…男…おとこ」「ほ…お…おとこ」「いろ…色彩…色気…気色…色情」「赤…元気色」「むらさき…紫…群咲き…一輪咲きではない」「みどり…若葉…若々しい」。



 枕草子は、おとなの女たちの読物。宮の最盛期には女房車十台即ち四十人とその従者の女たちがいた。それに、主上付きの女房たち、斎宮女房たち、女官たちがいた。その大人の女たちが主な読者。みな言の心と言の戯れを心得ていた。
 
 枕草子は、研究対象物件でも、高校生のテスト用素材でもないので、そのつもりでお読みください。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。


帯とけの枕草子〔二百六十五〕下かさねは

2011-12-29 00:13:32 | 古典

  


                                               帯とけの枕草子〔二百六十五〕下かさねは


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。


 清少納言枕草子〔二百六十五〕下かさねは

 文の清げな姿
 下襲は、冬は、つつじ、桜、掻練襲、蘇枋襲。夏は、二藍、白襲。

 原文
 したがさねは、冬はつゝじ、さくら、かいねりがさね、すわうがさね。夏はふたあゐ、しらがさね。

 心におかしきところ
 下重ねは、冬は、筒子咲くら、貝ねり重ね、すほう重ね。夏は、二合い、白ら重ね。

 言の戯れと言の心
 「したがさね…下襲(内衣のかさね着)又はその色の組み合わせ…下重ね…まぐあい」「下…身の下」「冬は…夫ゆは…夫弓は…ものの弓張りは」「つつじ…躑躅…表白裏紅色…つつし…筒子…おとこ」「筒…おとこのべつ称」「さくら…桜色…桜木…男木…咲くら」「ら…状態を表す」「かいねり…艶のある紅色…暮れない色…はてしない…貝練り…ゆっくり女のあゆみ」「貝…女」「すわう…すはう…蘇芳…暗い紅色…貝の色は蘇芳(土佐日記、二月一日)…女の色」「夏は…暑いのでこれくらいでね」「ふたあゐ…二藍…青紫色…二合…二回の和合」「白…男の色…もののはて…しらじらし」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。
   


帯とけの枕草子〔二百六十四〕単衣は白き

2011-12-28 00:08:17 | 古典

  



                                            帯とけの枕草子〔二百六十四〕おとこはなにの色の



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十四〕おとこはなにのいろの


 文の清げな姿

 男は何の色の衣をも着ている。単衣は白・がいい。昼の装束の紅の単衣の袙(内着)など、仮に着ているのは良い、だけど、やはり白いのよ。黄ばんだ単衣など着ている人は、まったく気にいらない。練り色(薄黄色)の衣を着ていても、やはり単衣は白いのこそよ。


 原文

 おとこはなにいろのきぬをもきたれ、ひとへはしろき。ひのさうぞくの、くれなゐのひとへのあこめなど、かりそめにきたるはよし。されど、なをしろきを。きばみたるひとへなどきたる人は、いみじう心づきなし。ねり色のきぬどもきたれど、猶ひとへはしろうてこそ。


 心におかしきところ

 男は何色の色情でも来る。一重は白らじらしく・わるい。昼のあいさつで、暮れない間に、一重の吾こめなどに、かりそめに来たのは良い。だけど、やはり白きお、黄ばんだお疲れ色で来ている男は、まったく気にいらない。お疲れ色で・ゆっくり模様で来ても、汝お・やはり、ひとかさねでは、白らじらしいよ。


 言の戯れと言の心

 「男はなにのいろのきぬをもきたれ…男は色々な色情と身の状態でも来る…黒は強い色、赤は元気色、青は若い色、黄はお疲れ色、白は尽き果ての色」「きぬ…衣…心身を包む物…心身の換喩」「ひとへ…単衣(裏のないもの)…ひとかさなりだけの薄い心身…七重、八重は無理でも三重なる山ばが望ましい」「さうぞく…装束…せうそく…消息…挨拶」「猶…やはり…汝お…君のこの君」「あこめ…袙…内着…吾こめ」「ねり色…薄黄色…練り色…ゆっくり進む色模様」「練る…布を柔らかくする…ゆっくり進む」。



 古今和歌集の、「白(しら)」と「重(へ)」の出てくる歌を聞きましょう。

 巻第十七 雑歌上 ありはらのむねやな(在原棟梁、業平の子)

 しら雪のやへにふりしけるかへる山 かへるかへるもおひにける哉

  (白雪の八重に降り敷いた、かへる山、返す返すも老いたなあ・すっかり白髪だなあ……おとこ白ゆきの、八重に降り頻った、かえる山ば、返す返すも感極まったなあ)。


 「白…おとこの果ての色」「ゆき…雪…逝き」「やへ…八重…多く重ねて」「ふりしく…降り敷く…振り頻く」「かえる山…山の名、名は戯れる…帰る山…返る山…繰り返す山ば」「山…山ば…感情のやまば」「かへすがへす…反す反す…そりかえす…返す返す…繰り返し…すっかり…まったく」「おひ…おい…老い…極まり…感の極まり」「ける哉…詠嘆、感動を込めて今気付いた意を表す…たことよなあ」。


 「心におかしきところ」が聞こえなくなり、「清げな姿」しか見えないならば、『古今和歌集』の歌は、「くだらない」「駄歌」でしょう。そのような歌を、在原棟梁が詠むでしょうか。歌には「心におかしきところ」がある。
 『枕草子』の文にも「心におかしきところ」がある。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
  
  原文は「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」による。


帯とけの枕草子〔二百六十三〕狩衣は

2011-12-27 00:06:30 | 古典

  



                               帯とけの枕草子〔二百六十三〕狩衣は


 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十三〕かりきぬは

 
 文の清げな姿

 狩衣は、香染の薄い。白いふくさ。赤色。松の葉色。青葉。桜。柳。また、青い藤。


 原文

 かりぎぬは、かうぞめのうすき、しろきふくさ、あかいろ、まつのはいろ、あをば、さくら、やなぎ、又あおきふぢ。


 心におかしきところ

 かりする心と身は、お疲れ初めの薄い色、白々しくやわらか。元気色、待つ女の端の色。吾お端、咲くら、しだれぎ。また再び若々しい不二。


 言の戯れと言の心

 「かり…狩…刈…採…あさる…ひく…つむ…めとる…まぐあう」「きぬ…衣…ころも…身と心を包も物…心身の換喩…来ぬ…来寝…来て寝る」「かうそめ…香染…黄色味おびた薄い赤色」「黄色…お疲れ色」「赤…元気色」「白…おとこの色…はての色」「ふくさ…柔らかい絹…やわらかい」「色…色彩…顔色…気色…色好みの色」「松…待つ…女」「は…葉…端…身の端」「青葉…若い身の端」「桜…おとこ花…咲くら」「柳…しだれ木…し垂れき」「また青きふぢ…また青い男木…再び若々しいおとこ」「藤…不二…二つはない…おとこは一過性である」



 古今和歌集の「狩衣」の歌を聞きましょう。

 巻第十二 恋歌二 とものり (大内記 紀友則)

 夜ゐ夜ゐにぬぎてわがぬるかり衣 かけておもはぬ時のまもなし

 (宵々に脱いで我が寝る、狩衣、かけて、貴女を・思わぬ時の間はない……好い好いに、貫きて我がぬる、かりする身と心、神かけて、貴女を・思わない一瞬の間もない)。


 「夜ゐ…宵…好い」「ぬぎて…脱ぎて…ぬきて…貫きて…貫き通して」「かり衣…狩衣…かりする男の心身」「かり…めとり…まぐあい」「かけて…衣を掛けて…神懸けて…神に誓って…決して」「時のま…時間…片時の間…一瞬の間」「おもはぬ時のまもなし…常に思っている…思い続けている」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。