大審院昭12年11月19日 百選46事件
・土地所有権に基づく危険防止請求について、その内容は相手方に対して積極的な妨害排除または防止義務を課すものであること、土地に対する妨害が不可抗力に起因する場合のほかは、相手方は自己の行為によると否と、及び故意過失の有無を問わず除去・防止義務を負うこと、及び、除去・防止費用は相手方が負担すべきであり、これが公序良俗に反するとはいえないこと、という判断を示した。
・本判決は、不可抗力により妨害が生じた場合について除外していることから、自然力・不可抗力によって妨害の危機が生じたとき相手方は責任を負わないとしているようにも読めるが、①物権的請求権を認めない趣旨なのか、②請求者費用負担の消極的行為しか請求できないのか、または③積極亭行為の請求は認められるが費用負担について考慮の余地を認めるのか、その内容は判然としない。
・費用分担の可能性について
→ 判例が「公平の原則」を重視していることから(本判決も公序良俗の話を¥持ち出している)、費用分担を全く否定する趣旨ではないと解する余地はある
→ 学説も、公平の原則、相隣関係規定の趣旨から費用の共同負担を認めたり、過失相殺的な視点から執行費用の分担という形で処理をすべきなどの見解がある。
*Aが所有する甲土地上にB所有の自動車乙が洪水により流されてきて放置されていたとする。Bは自動車の物的支配をAの甲土地所有権により侵害されちているとして返還請求権を行使できるか。
→ Aは自動車乙を「占有」していると言えるか。
事実上の「所持」はしているが、「占有」はしていない。自己のためにする意思で所持しているかどうかは、所持が生じた原因によると言わざるを得ない。土地は即時的にその場に存在するものであり、その中に外部から入ってきた物を土地所有者が自己のためにする意思を持って当然に支配する、という性質は認められないからである(洪水により流されてきたに過ぎないので、Aには占有意思がないので、自動車乙を占有しているとは言えない)。