適用違憲の解釈指針の書き方例

2012-02-29 19:30:37 | 司法試験関連
適用違憲の際の解釈指針の書き方に悩む受験生は多いようです。一番簡単と言うか最低限の指針は,「本件で問題となっている人権は重要な人権なので,限定的に適用すべきである」でしょうが,まぁ,これだと自分が当てはめの時に困るという問題はあります(笑)。

お勧めは,問題文に記載されている,法令成立に至った背景的事情を利用する,というものです。第4回を例にとれば,学内規則が作成された経緯として,死亡事故がおきた,という事実があります。死亡事故はマズイ!ということで,一定の制約(=中止命令等)を設けたわけですから,学則に言う「重大な事態」とは,死亡事故やそれに準じるような場合に限定して適用されるべきと考える,と言う風に適用指針を出すわけです。

第3回で言えば,フィルタリングソフト法の立法経緯には,インターネットを通じて衝撃的な情報に「不意打ち」で晒されないようにする,という要素もある事が読み取れるでしょう。だとすれば,フィルタリングソフト法の適用場面は,「そのような不意打ちの危険のある場合」に限定すべきともいえそうです(適用指針)。となると,被告のサイト情報は「有害情報」であることは否定できないので,構成要件的には該当してしまうとしても,被告が自分のサイトに「警告文」をまず呈示していた,という事情は,法が危惧する「不意打ち」の防止になる,という意味を持ってきますからフィルタリングソフト法の発動場面では無いのではないか,という当てはめができそうです。

まぁ,一例ですが,解釈指針,当てはめの評価方法の例として参考にしてみて下さい。立法経緯,立法目的は法令違憲審査の場面以外でもフル活用できるんです。

ま,こんなことばかり講義では喋ってます(笑)
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大雪と盗難

2012-02-29 13:41:16 | 雑感
如月の最後に雪が放り込まれました@東京。週間天気予報で昨日,6日の最高気温が22度になっていたんだが何事(笑)

昨日ちゃりんこ盗まれました。2月の最後1週間は明らかに運勢下降気味モードなり。はよ明日来い。
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遂に「奴」がやって来た件

2012-02-28 18:03:35 | 雑感
時期柄か,それとも受験生のビリビリ感が伝染したのか分かりませんが,「例の夢」を見るようになって来ました。

いつも同じシュチュエーショんで,「講師はやっているけど,次回3回目の受験で合格しないと俺どうなっちゃうんだろう」物です(苦笑)。しかし毎回毎回同じ状況って凄い夢だなと思うんですが,最近またチラホラ見るようになってきたのです。

しかし,ここに来てまさかのニューバージョンが登場しました!!「一端合格したのだが何故か合格を取り消され,しかも次回3回目で,難問出題必至」バージョンです。ナンジャイこりゃ,と自分で突っ込みたくなるバージョンですが,こいつのお蔭でこの間飛び起きました(苦笑)。最近過去問題の話をするときに,「難化の傾向に歯止めがかからない」という話をしてきたからだと思いますが,まさかの夢への飛び火。

さて,師走は本当に忙しくて,文字通りのギリギリチョップで辛うじて乗り切りましたが,1月になれば余裕が出るだろうと思いきや,短答突破実践力の準備がエライしんどくて,余裕なんぞまるでなく,2月になれば落ち着くだろうと思いきや,2月は講義時間が実は多くて,おまけにガイダンスと出張が入り(ガイダンス等の場合毎回「新作∧自作レジュメ」でやるので,この準備にかなり時間を取られるのです),気が付いたら余裕なぞ無いまま,月末を迎えている俺が通りますよ。・・・・・・このくだり,長い!笑

明日は,珍しく講義もないので1日寝太郎のつもりでしたが,急遽4時間収録が入り我が野望は露と消えました。週末の第2次名京阪遠征を楽しみに頑張りたいと思いまふまふ。はよ2月終われー。
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平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見(公法系第1問)(補足)

2012-02-28 13:34:38 | 司法試験関連
http://www.moj.go.jp/content/000095451.pdf

公法系に関して補足があるようです。内容的には,噛み砕いて真意を伝えようというもので,このブログや日ごろ講義で主張してきたことの再確認と言う内容です。一応念のためアップしておきますね。

しかし,正直日本語上手くないですね(苦笑)一般の受験生が読むと誤解や混乱を招くような表現が多かったのですが(だから採点実感等の解説を書きました),公法系は特にその傾向が強い感じがします。怒り具合だけはビシビシ伝わって来るんですけどね(笑)
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第61回NBAオールスター

2012-02-28 02:41:14 | 雑感
第61回NBAオールスター、超面白かった!!両軍合わせて301得点と言う打撃戦(延長戦なしでは史上最多得点試合)。

レブロン、カーメロ、ローズ、ハワード、ウェイド、グリフィン、デユラント、ラブ、ウエストブルックと世代交代が見事に進んでいます。これだけのスターが既に居る段階でNBAの繁栄は約束されていますね~♪

ブルズ・ファンとしては、スターターのローズが第4Qで出場しなかったのが「何でやねん」ですが、怪我上がりなので出場時間は配慮されたんでしょう。

しかし、やはりレブロンは別格ですね!!!!ちょい自慢は、レブロンの高校時代からチェックしてたことかな☆ レブロンの高校時代の試合を見てる人はバスケファンでも中々いないかと。笑
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オスカー

2012-02-28 02:39:45 | 雑感
‎4大部門の内、作品賞、主演男優賞、監督賞を制覇した『アーティスト』は、第1回アカデミー賞の受賞作品『つばさ』以来、83年ぶりに作品賞に輝いたサイレント映画となった。モノクロ作品としては1994年の『シンドラーのリスト』以来の快挙であり、フランス映画が作品賞を受賞するのは史上初めて。

やっぱりねー。内容的にアカデミー会員が好きそうなのと、俳優票が入るのでは、と予想されていました。この役柄が俳優の栄枯盛衰を様々な角度から描いているので、「どんな俳優も共感を覚える」、との評判だったんですよね。

でも前日の現地メディアの下馬評では、ジョージ・クルーニーが大本命だったんですけどねぇ。いい加減だな(苦笑)。
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初心を忘れず

2012-02-27 19:24:43 | 司法試験関連
今日は伊藤塾長の12年春開講入門講義の初回講義の日です。受講生さんはもちろんのこと,体験受講生さんの数もかなり多かったです。これは最後の旧司法試験の凄まじい合格占有率のみならず,引き続いて昨年の予備試験初年度合格者の圧倒的実績がインパクトがあるようです。まぁ,そりゃそうだよな,と普通に思いましたが(笑)。

これから伊藤塾で2年間,更にローで2年間勉強して司法試験に挑まんとする新塾生さんを見ると,やはり気分が違ってきます。つい遠い昔の自分を思い起こして気合入ります(笑)。

実は吉野は,毎春,初日は,ガイダンスから30分ほど教室にいます。この時期が来ると「新年度が本格的に始まる!」という講師としての気持ちの切り替えはもちろんのこと,個人的に「初心を確認する」という意味合いもあります。2012年,自分も頑張らなければ,という気持ちになるんですよね。改めて今年もよろしくお願い致します!!

と,いうわけで,3月3日・4日の「第二次名京阪遠征」用の「判例レジュメ」を作成しております。
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憲法答案の書き方 検察官の主張部分

2012-02-27 17:20:37 | 司法試験関連
憲法の答案の書き方と言うか,「書き分け」に悩んでいる受験生は多いかと思います。

要は,原告の主張とあなたの見解の書き分けと言う問題と,検察官の主張をどう書くかと言う問題ということです。今回は,後者の問題について説明します。

検察官の主張に関しては,「確かに~,しかし~,したがって~」と言う従来の思考法で言うと,「確かに」に当たる部分だと考えれば思考がスッキリすると思います。

もちろん,論証パターンの「確かに」部分を丸々書けば良いわけではないです。書くべき内容は,色々考えられます。例えば,「そもそも権利として保障されていない,権利として保障されるにしても本件では制約とは言えない,特殊な制約原理がある(パターナリズム,公務員の人権における「職務の公共性,職務の中立性」等),判例の定義によれば本件では検閲は問題にならない」等です。

ただ,これらは実際には自説(=あなたの見解)への「前振り」になる部分です。「確かに~」部分も,要は自説への「前振り」です。なので思考方法としては同様の位置づけで書けば良いということがいいたいのです。そうすれば試験委員が以下のように指摘する,各主張が「噛み合ってない」という弊害も排除できます。

試験委員も,『「被告側の反論」の想定を求めると,判で押したように,独立の項目として「反論」を羅列する傾向が見られる。むしろ「あなた自身の見解」の中で,自らの議論を展開するに当たって,当然予想される被告側からの反論を想定してほしいのにもかかわらずばらばらな書き方をするために,かえって論理的な記述ができなくなっている(あるいは,非常に論旨が分かりづらくなっている)という傾向が顕著になっている。」と述べており,正にこのような書き方こそが求められているということです。

もっとも,検察官の主張に全て反対するのが自説,というのも極論でしょう(例えば第3回の問題で「検閲である」,と言うのは無理があるので,書くとしても「検閲には当たらない」,で終わりでしょう)。原告の主張が無理筋だったりすることも論点によってはありえます。このような場合は,「○○については検察官に同意」,で十分です。この場合は,検察官主張の部分を厚く書くのも良いですが,「同意である」と述べた上で,自説のところである程度書く,という方が形式的には良いかもしれません。
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登頂アタック開始!

2012-02-27 13:54:58 | 雑感
東京は,なんかちょっと春めいてきましたよ。今週弥生突入ですからね~。でも寒の戻りとか三寒四温とかあるので,体調管理は万全に!!いよいよ八合目から頂を目指す時期です。最終アタック開始です。
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ビリビリ感

2012-02-25 14:49:11 | 司法試験関連
如月ももうすぐ終わりだ。本試験まで81日!ビリビリしてきますね。最後の心臓破りの坂だと思いますが,焦らず,でも危機感・緊張感はもって邁進しましょう!!怒涛の勢いで合格の女神を惹きつけてやりましょう。

予備試験受験の方も短答試験が迫ってきました。ロー在学中の人も,そうじゃない人も,5月までは本試験の短答対策をも兼ねていますので,ここで基礎固めをガッチリしておきましょう。「記憶するためだけの時間」を意識的に取る事が重要です。あと条文を愛しましょう(笑)科目間特性にも注意ですよ!
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砂川政教分離訴訟 藤田補足意見

2012-02-24 19:47:17 | 司法試験関連
というわけで,参考までにどーぞ。

裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。
 私は,多数意見に賛成するが,本件利用提供行為が政教分離原則に違反すると考えられることにつき,以下若干の補足をしておくこととしたい。
1 国又は公共団体が宗教に関係する何らかの活動(不作為をも含む。)をする場合に,それが日本国憲法の定める政教分離原則に違反しないかどうかを判断するに際しての審査基準として,過去の当審判例が採用してきたのは,いわゆる目的効果基準であって,本件においてもこの事実を無視するわけには行かない。ただ,この基準の採用の是非及びその適用の仕方については,当審の従来の判例に反対する見解も学説中にはかなり根強く存在し,また,過去の当審判決においても一度ならず反対意見が述べられてきたところでもあるから,このことを踏まえた上で,現在の時点でこの問題をどう考えるかについては,改めて慎重な検討をしておかなければならない。
 この基準を採用することへの批判としては,周知のように,当審においてこの基準が最初に採用された「津地鎮祭訴訟判決」(最高裁昭和46年(行ツ)第69号同52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁)における5裁判官の反対意見と並び,「愛媛玉串料訴訟判決」(最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁)における高橋,尾崎両裁判官の意見がある。とりわけ,尾崎意見における指摘,すなわち,日本国憲法の政教分離規定の趣旨につき津地鎮祭訴訟判決において多数意見が出発点とした「憲法は,信教の自由を無条件に保障し,更にその保障を一層確実なものとするため,政教分離規定を設けたものであり,これを設けるに当たっては,国家と宗教との完全な分離を理想とし,国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものである」という考え方を前提とすれば,「国家と宗教との完全分離を原則とし,完全分離が不可能であり,かつ,分離に固執すると不合理な結果を招く場合に限って,例外的に国家と宗教とのかかわり合いが憲法上許容されるとすべきもの」と考えられる,という指摘については,私もまた,これが本来筋の通った理論的帰結であると考える。これに対して,これまでの当審判例の多数意見が採用してきた上記の目的効果基準によれば,憲法上の政教分離原則は「国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許さないとするものではなく,宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み,そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える場合に(初めて)これを許さないとするもの」であるということになるが(括弧内は藤田による補足),このように,いわば原則と例外を逆転させたかにも見える結論を導くについて,従来の多数意見は必ずしも充分な説明をしておらず,そこには論理の飛躍がある,という上記の尾崎意見の指摘には,首肯できるものがあるように思われる。
 ただ,目的効果基準の採用に対するこのような反対意見にあっても,国家と宗教の完全な分離に対する例外が許容されること自体が全く否定されるものではないのであり,また,これらの見解において例外が認められる「完全分離が不可能であり,かつ分離に固執すると不合理な結果を招く場合」に当たるか否かを検討するに際して,目的・効果についての考慮を全くせずして最終的判断を下せるともいい切れないように思われるのであって,問題は結局のところ,「そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」か否かの判断に際しての「国家の宗教的中立性」の評価に関する基本的姿勢ないし出発点の如何に懸ることになるともいうことができよう。このように考えるならば,仮に,理論的には上記意見に理由があると考えるとしても,本件において,敢えて目的効果基準の採用それ自体に対しこれを全面的に否定するまでの必要は無いものと考える。但し,ここにいう目的効果基準の具体的な内容あるいはその適用の在り方については,慎重な配慮が必要なのであって,当該事案の内容を十分比較検討することなく,過去における当審判例上の文言を金科玉条として引用し,機械的に結論を導くようなことをしてはならない。こういった見地から,本件において注意しなければならないのは,例えば以下のような点である。
2 本件において合憲性が問われているのは,多数意見にも述べられているように,取り立てて宗教外の意義を持つものではない純粋の神道施設につき,地方公共団体が公有地を単純にその敷地として提供しているという事実である。私の見るところ,過去の当審判例上,目的効果基準が機能せしめられてきたのは,問題となる行為等においていわば「宗教性」と「世俗性」とが同居しておりその優劣が微妙であるときに,そのどちらを重視するかの決定に際してであって(例えば,津地鎮祭訴訟,箕面忠魂碑訴訟等は,少なくとも多数意見の判断によれば,正にこのようなケースであった。),明確に宗教性のみを持った行為につき,更に,それが如何なる目的をもって行われたかが問われる場面においてではなかったということができる(例えば,公的な立場で寺社に参拝あるいは寄進をしながら,それは,専ら国家公安・国民の安全を願う目的によるものであって,当該宗教を特に優遇しようという趣旨からではないから,憲法にいう「宗教的活動」ではない,というような弁明を行うことは,上記目的効果基準の下においても到底許されるものとはいえない。例えば愛媛玉串料訴訟判決は,このことを示すものであるともいえよう。)。
 本件の場合,原審判決及び多数意見が指摘するとおり,本件における神社施設は,これといった文化財や史跡等としての世俗的意義を有するものではなく,一義的に宗教施設(神道施設)であって,そこで行われる行事もまた宗教的な行事であることは明らかである(五穀豊穣等を祈るというのは,正に神事の目的それ自体であって,これをもって「世俗的目的」とすることは,すなわち「神道は宗教に非ず」というに等しい。)。従って,本件利用提供行為が専ら特定の純粋な宗教施設及び行事(要するに「神社」)を利する結果をもたらしていること自体は,これを否定することができないのであって,地鎮祭における起工式(津地鎮祭訴訟),忠魂碑の移設のための代替地貸与並びに慰霊祭への出席行為(箕面忠魂碑訴訟),さらには地蔵像の移設のための市有地提供行為等(大阪地蔵像訴訟)とは,状況が明らかに異なるといわなければならない(これらのケースにおいては,少なくとも多数説は,地鎮祭,忠魂碑,地蔵像等の純粋な宗教性を否定し,何らかの意味での世俗性を認めることから,それぞれ合憲判断をしたものである。)。その意味においては,本件における憲法問題は,本来,目的効果基準の適用の可否が問われる以前の問題であるというべきである。
3 もっとも,原審認定事実等によれば,本件神社は,それ自体としては明らかに純粋な神道施設であると認められるものの,他方において,その外観,日々の宗教的活動の態様等からして,さほど宗教施設としての存在感の大きいものであるわけではなく,それゆえにこそ,市においてもまた,さして憲法上の疑義を抱くこともなく本件利用提供行為を続けてきたのであるし,また,被上告人らが問題提起をするまでは,他の市民の間において殊更にその違憲性が問題視されることも無かった,というのが実態であったようにもうかがわれる。従って,仮にこの点を重視するならば,少なくとも,本件利用提供行為が,直ちに他の宗教あるいはその信者らに対する圧迫ないし脅威となるとまではいえず(現に,例えば,本件氏子集団の役員らはいずれも仏教徒であることが認定されている。),これをもって敢えて憲法違反を問うまでのことはないのではないかという疑問も抱かれ得るところであろう。そして,全国において少なからず存在すると考えられる公有地上の神社施設につき,かなりの数のものは,正にこれと類似した状況にあるのではないか,とも推測されるのである。このように,本件における固有の問題は,一義的に特定の宗教のための施設であれば(すなわち問題とすべき「世俗性」が認められない以上)地域におけるその存在感がさして大きなものではない(あるいはむしろ希薄ですらある)ような場合であっても,そのような施設に対して行われる地方公共団体の土地利用提供行為をもって,当然に憲法89条違反といい得るか,という点にあるというべきであろう。
 ところで,上記のような状況は,その教義上排他性の比較的希薄な伝統的神道の特色及び宗教意識の比較的薄い国民性等によってもたらされている面が強いように思われるが,いうまでもなく,政教分離の問題は,対象となる宗教の教義の内容如何とは明確に区別されるべき問題であるし,また,ある宗教を信じあるいは受容している国民の数ないし割合が多いか否かが政教分離の問題と結び付けられるべきものではないことも,明らかであるといわなければならない。憲法89条が,過去の我が国における国家神道下で他宗教が弾圧された現実の体験に鑑み,個々人の信教の自由の保障を全うするため政教分離を制度的に(制度として)保障したとされる趣旨及び経緯を考えるとき,同条の定める政教分離原則に違反するか否かの問題は,必ずしも,問題とされている行為によって個々人の信教の自由が現実に侵害されているか否かの事実によってのみ判断されるべきものではないのであって,多数意見が本件利用提供行為につき「一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものである」と述べるのは,このような意味において正当というべきである。
4 なお,本件において違憲性が問われているのは,直接には,市が公有地上にある本件神社施設を撤去しないという不作為についてである(当初市が神社施設の存する本件土地を取得したこと自体が違憲であるというならば,その行為自体が無効であって,そもそも本件土地は公有地とは認められないということにもなりかねないが,被上告人(原告)らはこのような主張をするものではない。)。この場合,その不作為を直ちに解消することが期待し得ないような特別の事情(例えば,施設の撤去自体が他方で信教の自由に極めて重大な打撃を与える結果となることが見込まれるとか,敷地の民有化に向け可能な限りの努力をしてきたものの,歴史的経緯等種々の原因から未だ成功していない等々の事情が考えられようか。)がある場合に,現に公有地上に神社施設が存在するという事実が残っていること自体をもって直ちに違憲というべきか否かは,なお検討の余地がある問題であるといえなくはなかろう。しかし,本件において,上告人(被告)はこのような特別の事情の存在については一切主張・立証するところがなく,むしろ,そういった事情の存在の有無を問うまでもなく本件利用提供行為は合憲であるとの前提に立っていることは明らかであるから,この点については,原審の釈明義務違反を問うまでもなく,多数意見のように,本件利用提供行為が憲法89条に違反すると判断されるのもやむを得ないところといわなければならない。
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南の風,吹く

2012-02-24 18:39:50 | 雑感
今日は5時間半の枠の中で,講義5時間分を収録する,という素敵な1日です(笑)。

あ,よく考えたら来週末は第2次名京阪遠征です。判例判例!

今日の関東は,うって変わって南方の空気が流れ込んでいます。暖かい南の風が強く吹いています。「よろしく春一番」ではないんかなぁ(笑)春よ来い,早く来い。
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講義情報

2012-02-24 17:18:43 | 司法試験関連
今日の憲法では,平成22年1月20日と平成22年7月22日について補助レジュメその2を出し,詳しく説明いたしました。1月20日の砂川の方は,藤田補足意見にも言及しています。2011年版の論文突破では扱っていないのでお知らせです。平成22年重要判例集の4事件と5事件です。

講義の方は,19条と20条という「大ヤマ」が連続だったので,補助レジュメを中心に詳細な内容になっています。それぞれかなりな時間をかけましたので,驚かんといて下さい(笑)。

あと今年はどこでどの立場を書くか,という点も意識してコメントしていますので,その辺も上手く利用してください。
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嬉しい誤算

2012-02-23 17:39:12 | 予備試験関連
最近,名京阪遠征やカウンセリングやらであることに気が付いた。「論文突破シリーズ」は,未修生・既修生・既卒生を想定していたのですが,「予備試験受験予定者」の方の相談や講座受講が想定外に多かったのです。

具体的には,旧司法試験の受験をしていたが,予備試験制度が出来たので再度,というタイプの方です。なので,ある程度勉強はした,基礎マスター等を数年前に受講済みだ,という方達です。

確かに,ブランク等により少し基礎力に不安がある,でも入門講義を再受講は重たい,何より予備試験合格が最終目的ではなく,半年後の本試験合格が目的である,ということを考えると,「予備対策+本試験対策を一気にやってしまいたい!」と言う願望は当然出てきます。その要望に論文突破シリーズはどんぴしゃだ,ということみたいです。

言われてみればそうだな,と思いました(笑)。確かに,「ベーシック+アドバンス=L1L3同時達成」というコンセプトはピッタリです。そもそも,予備試験も本試験も「司法試験」なんです。司法試験が,予備試験と本試験の2部構成になっているだけで,「予備試験の先を見越して受験対策をする」という発想は極めて重要です。

初学者の方は,入門講義から始め,順にL1L2L3と段階を踏んでいくべきですが,ある程度の実力がある人の講座としては本シリーズは結果論ですが最適と言えそうです。
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究極のチキンレース

2012-02-22 18:27:51 | 雑感
イスラエルがウラン濃縮設備爆撃という単独軍事行動に言及し,イランはイランの国益が脅かされる事態となれば、「相手の国の行動を待たずに、こちらから行動を起こす」と「先制攻撃」に言及している。いよいよ両国の「チキンレース」は許容できない危険水域に入ってきた。

信仰的信条が全てに優先するイランと言うお国柄と,世界中を敵に回してもユダヤの利益は守るというイスラエルのお国柄を考えると,いつ不測の事態(いや「不測」では無いかもしれない)が起きても不思議ではない。イラクから米軍が撤収したため,イランはイラクを支配下に置こうとしている。「イラクのイラン化」はアメリカにとっては悪夢以外の何物でもない。ヴェトナム戦争以上のダメージを受けることになる。

中東エリアはかつてないほど危険な状況になっている。アメリカの支配力が相対的に衰えているため(史上空前の財政赤字による国防費の削減と外交軍事音痴オバマの対内志向のため),世界の安全保障が一気に流動化してきている。イランとイスラエルの危険すぎるレースは,一体どこへ行くのだろうか。
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