民法判例まとめ

2016-04-05 23:39:38 | 司法試験関連

信義則 賃貸借契約の終了と転借人への対抗

被上告人X(賃貸人)は,建物の建築,賃貸,管理に必要な知識,経験,資力を有する訴外会社A(賃借人・転貸人)と共同して事業用ビルの賃貸による収益を得る目的の下に,訴外会社Aから建設協力金の拠出を得て本件ビルを建築し,その全体を一括して訴外会社Aに貸し渡したものであって,本件賃貸借は,訴外会社Aが被上告人Xの承諾を得て本件ビルの各室を第三者に店舗又は事務所として転貸することを当初から予定して締結されたものであり,被上告人Xによる転貸の承諾は,賃借人においてすることを予定された賃貸物件の使用を転借人が賃借人に代わってすることを容認するというものではなく,自らは使用することを予定していない訴外会社Aにその知識,経験等を活用して本件ビルを第三者に転貸し収益を上げさせるとともに,被上告人Xも,各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れ,かつ,訴外会社Aから安定的に賃料収入を得るためにされたものというべきである。他方,C(再転借人)も,訴外会社の業種,本件ビルの種類や構造などから,上記のような趣旨,目的の下に本件賃貸借が締結され,被上告人による転貸の承諾並びに被上告人及び訴外会社による再転貸の承諾がされることを前提として本件再転貸借を締結したものと解される。そして,Cは現に本件転貸部分二を占有している。このような事実関係の下においては,本件再転貸借は,本件賃貸借の存在を前提とするものであるが,本件賃貸借に際し予定され,前記のような趣旨,目的を達成するために行われたものであって,被上告人Xは,本件再転貸借を承諾したにとどまらず,本件再転貸借の締結に加功し,Cによる本件転貸部分二の占有の原因を作出したものというべきであるから,訴外会社Aが更新拒絶の通知をして本件賃貸借が期間満了により終了しても,被上告人Xは,信義則上,本件賃貸借の終了をもってCに対抗することはできず,Cは,本件再転貸借に基づく本件転貸部分二の使用収益を継続することができると解すべきである。

最判平成14年3月28日 百選2事件

・事実関係を単純化すると、被上告人X(賃貸人)→訴外会社A(賃借人・転貸人)→B(転借人)→C(再転借人)という形で3重の賃貸借契約が締結されたものである。その後Aは、転貸方式による本件ビルの経営が採算に合わないと判断し、Xに対し本件賃貸借を更新しない旨を伝えた。XはB、Cらに本件賃貸借が期間満了により終了するので立ち退いて欲しいと述べた、という事例である。

・本判決は、基本賃貸借契約が、「賃借人の」更新拒絶によって終了する場合について、転借人を保護する可能性を開くものである。

<基本賃貸借契約の終了原因ごとの転借人の保護のあり方>

合意解約によって終了する場合

賃貸人は合意解約の効果を転借人に対抗できない(最判昭和37年2月1日)

賃借人の賃借権放棄によって終了する場合

賃借権放棄の効果は転借人に対抗できない。

賃借人の債務不履行に基づき解除により終了する場合

転借人の保護に格別の配慮はない(最判昭和37年3月29日)

学説は、賃貸契約の解除に際して、転借人に対しても催告ないし通知を行わせ、転借人が自己の転借権を存続させるための手立てを講じる機会を付与すべきとする。

賃貸人の更新拒絶または解約申入れにより終了する場合

この場合は、正当事由が必要とされ、その判断において転借人が土地建物の使用を必要とする事情が賃借人の事情と合わせて考慮されるので、転借人の利用の継続が保護される仕組みになっている。

賃借人の更新拒絶により終了する場合

借地借家法6条・28条の適用がなく、転借人は

正当事由の判断において自己の事情を反映させる機会がない。この点を踏まえ、本判決が信義則で保護を図ろうとしたのである。

・本判決は、信義則違反を検討する際に、賃貸人Xが本件再賃借を承諾したにとどまらず、再転貸借の締結に加巧し、再転借人Cによる転貸部分占有の原因を作出したことに着目している。

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