民法判例まとめ11

2016-04-17 16:09:20 | 司法試験関連

他人の権利の処分と追認

ある物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する116条の類推適用により、処分の時に遡って効力を生ずるものと解するのを相当

最判昭和37年8月10日 百選37事件

・116条と119条

  → 116条は、本人が無権代理契約を追認して契約当事者となる場合の規定である。本件は、契約当事者ではない権利者からの直接の権利の移転や設定が認められるかが問題となっており、116条を直接適用できない。

  → 119条は、無効な行為の有効化に関する規定である。本件は、非権利者による権利の移転や設定を生じるべき契約自体の有効性が前提とされているので、119条を直接適用できない。

・119条ではなく、116条を類推適用するということは、処分の効力を原則として処分行為時まで遡らせて有効にするということを意味する。もっとも116条の遡及効の理由は、通常それが当事者の意思に沿うからである。そのため解釈上、遡及効のない追認も認められている。だとすると、非権利者の処分が権利者の承認により有効となる根拠を権利者の意思に求めるのであれば、権利者の事後的承認の場合に処分が有効となる時期についても、権利者の意思が尊重されることになろう(有効となる時期を選べるということ)。

  → 他人物売買の場合、560条が「権利者→売主→買主」という権利の順次移転を原則にしている。そのため、買主が権利を取得する時期は、早くとも売主が権利を取得した時となる。だとすれば、権利者の事後的な承認による買主への権利の直接移転の場合も、契約時からの権利取得に関する買主の期待は、無権代理行為の相手方が持つ遡及効への期待ほど保護に値しないと言えよう。そのため、無権代理行為の場合に遡及効のない追認をするには相手方の同意が必要とされるのに対して、非権利者の処分については権利取得者の同意がなくても遡及効のない追認ができる、とする余地があろう。

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