包括一罪

2014-02-28 20:16:09 | 司法試験関連

刑法の問題では,そもそも行為の個数が問題になりそうな事例が出てきます(因みに,問題となる実行行為を作為と見るか不作為と見るかも問われた事があります)。生の事実としては,行為は2個と見た上で法的な分析をしていき,最後に罪数処理のところで上手く調整,などということもあります。第5回本試験などが典型ですね。本試験では,罪数処理については意外に!?侮れない難しいことを実は聞いてきていることもあるので,油断なきようなのですが,そのような困ったときに!?頼りになるのが「包括一罪」で処理,というパターンでしょう。というわけで軽くまとめてみました。

包括一罪としての処理は,複数の法益侵害事実が惹起されたが,①主たる法益侵害事実惹起に従たる法益侵害事実惹起を含めて評価しうるか,又は,同一の法益侵害事実惹起としてまとめて評価しうる場合であって,②法益侵害事実惹起行為が1個の行為であるか,又は,1個の行為に準じる場合に認められる。すなわち,包括一罪は,①法益侵害事実惹起の一体性(法益侵害の一体性)と②法益侵害事実惹起行為の一体性(行為の一体性)を要件として認められる。

包括一罪は,法益侵害の一体性により,複数の法益侵害を個別・独立に惹起した場合に比して違法性を全体として軽く評価することが可能となる。更に行為の一体性により,複数の意思決定・行為により法益侵害を惹起した場合に比して責任を全体として軽く評価することが可能となる。

【混合的包括一罪】

数個の犯罪が成立し,異なる罪名にまたがり数個の法益侵害がある場合に,具体的妥当性の観点から一個の処罰でまかなうことが認められるようになった。それが混合的包括一罪である。

 例:詐欺又は窃盗と2項強盗,傷害罪と事後強盗罪,詐欺罪と偽造私文書行使罪など。

近時の判例では,通行中のAから手提げバッグをひったくろうとして路上に転倒させて傷害を負わせた後,Aに対し,ぺティナイフを示すなどして脅迫し,A及びその連れの女性Bからそれぞれ現金を強取したという事案に関し,Aに対する強盗致傷罪とBに対する強盗罪の混合的包括一罪が成立するとしている(東京高裁平成19年5月21日)

 

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事実関係が複雑な事例の処理例

2014-02-27 19:23:16 | 司法試験関連

受験生が苦手とする問題の特徴は,「時系列」系の問題です。要は,時の流れに応じて事情・当事者が変遷していくパターンのもの。刑法だと総論メインの問題に多いですね。第5回,第6回が特に顕著でした。いわゆる難問の部類になることも多いパターンです。

この手の問題は,事実関係を時系列に沿って的確に整理することが何よりも肝心です。民法であれば,最新の当事者関係だけを見ていては落としてしまう法的主張がたくさん出てきます。特に当事者の入れ替わりがあるケースでは,その時々の当事者間において,「どのような権利関係が生じているか」を先ず確認します。その後,「その権利関係が後続の登場人物に承継されているのか」,「承継されているとして,対抗できるものなのか」を確認します。この作業を踏むことで,論点落しをかなり減らす事ができると思います。

憲法では時々「なんだかよう分からん」という問題が出るときがあります。この「なんだかよう分からん」となる理由は色々あると思いますが,その中の一つが,「実は因果関係が鮮明ではない」という事例です。何らの不利益の発生と問題となる行政等の行為との間にちょっと開きがあるような(もしくは一見無関係)事例です。実はこのケースは「制約があるのか」という部分がハッキリしない問題でもあります。ですから,具体的な不利益と行政等の行為を「どう連関させるか」を考えると,書くべきターゲットが明確になってくると思います。

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「有益費」?「利得の押し付け」?

2014-02-26 16:42:18 | 司法試験関連

佐久間先生の見解をまとめてみました。

「利得の押し付け」は避けなければならない。

「196条2項の趣旨は,償還義務の対象を有益性が認められる増加に限った点にある。物をどのような状態にしておくかは所有者が決めるべきであり,物の価値が増加さえすれば,「有益費」にあたるとすると,所有者にとって大きな負担となるからである。したがって,単に物の価値が増加したと言うだけでは十分ではなく,それが行われなければその物の社会状況に応じた通常の利用にも支障を来たしかねないと認められることを要すると解する。具体的には,物の通常の利用に関係の無い価値増加や,通常の利用に役立つにしても,あれば便利だという程度の改良等のための費用は有益費に含まれない。物が通常の利用のために備えているべき状態を欠くに至った場合において,その状態を確保するために物の原状維持・回復に留まらない措置が講じられたときにその費用が「有益費」となる」。

 → 占有者が勝手にした改良等によって物の価値が増加したとしても,その増加は所有者にとって「押し付けられた利得」になるため,所有者保護の必要があるという考慮に基づく。

*「具体的には」以下は,時間的・スペース的に余裕がないときはカットして,当てはめの指針として頭の中で使えば良い。

【派生論点】

占有者が投下した費用によって占有物の価格が返還時に増加しているような場合には,703条・704条の要件も充足される。そこで,占有者がこれらの規定によって利得の返還を回復者に請求できるのかが問題になるが,否定すべきである。回復者の償還義務を有益性の認められる場合に限定した196条2項の趣旨が没却されてしまうからである。

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無料体験受講のお知らせ

2014-02-25 19:21:28 | 司法試験関連

開講日である3月3日は,無料体験受講もできる日になっています。まずは講義を聴いてから決めたいという方は,無料体験を是非ご利用下さい。14時から開始です。事前の予約は不要ですので,10分前くらいに東京校の窓口で問い合わせて見てください。http://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/event/muryotaiken/DOC_039038.html

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連絡事項

2014-02-25 17:04:58 | 司法試験関連

2013年度版の短答突破実践力完成講義ですが,1時間補講をしています。そのため全25時間となります。刑事訴訟法の条文チェックの続きをしていますので,宜しくお願い致します。

4年目となる「2014年吉野クラス」の開講日は3月3日月曜日です。1週間を切りました。今年も受講生さんと一緒に1年間頑張って行きたいと思います!

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悪しき決め打ち

2014-02-24 13:58:49 | 司法試験関連

「Xの場合,又はYの場合 → Zという効果が発生する」というとき,「Zは認められるか」という問題があったとします。

要件がX,Yの部分で,効果がZの部分と言うのは分かるかと思います。このとき,比較的ありがちなミスが,「Y要件該当は明々白々で,よってZ請求は認められる。したがって,X要件充足についてはわざわざ検討しなくて良い」というもの。

合格する人達はしないミスだとは思うのですが,伸び悩んでいる人達では,この手のミスは見かけます。「何で書かなかったの?」という質問に対して以上のような「抗弁」を聞くことが多いのです。これは,「問題文の読み方」スキルの観点から見ても,問題文に当てはめ事情があがっているのにも係らず,答案上何も触れないでいることについて特に違和感を持たないというのはまずいですね。

この手のミスをやりがちな人は,他にも,「これは当然だな」,「要件充たすのは当たり前だな」的な「決め打ち」をして,それを前提に答案を書き出すようなことも往々にしてやりがちです。特に解釈部分ではあるのだけれど,本件では結論として認められるのは当たり前のような事例で,このようなボンミスを犯します。つまり,「解釈+あてはめの結果」,初めて認められるようなことをさも「当たり前」だと思い込んでいるのです。特に民法の答案でよく見かけます。気をつけてくださいね。

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粘る力をつける

2014-02-24 11:17:14 | 司法試験関連

気が付けば如月も最後の1週間です。来週からは弥生突入です。中間目標たる模試まで1ヶ月切ってきますね。

「演習編」の生クラスは第2タームがいよいよ始まりました。以前から言っていますが,ここは「点を取りにいく」ところです。毎回毎回本番のつもりで最後まで諦めずに取り組んで下さい。「粘り」というのはメンタル面の影響が大きいので,最後まで諦めずに喰らい付く癖を「脳に」覚えさせましょう。本番まで心身ともにシンドイ日々が続きますが,あと少しだけ頑張りましょうね。その先には良い事が必ず待っているはず!

それから,何となくソワソワして落ち着きがなくなる人も出てくると思うのですが,この時期こそ慌てず騒がず,従来どおりの勉強を続けましょう。思いつきに近い場当たり的な勉強をしたり,ヤマを当てに行ったり,急に目新しいことに目を奪われないよう,地に足をつけた勉強をしてください。もちろん,弱点補強のために急遽策を講じなければいけない場合は別ですが。

あと体調管理です。ちょっと人のこと言えた義理じゃないんですが,体調管理は本当に大切です。生活のリズムを整える事がまずは肝要なのかな,と思います。

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ターゲットは個別に!群馬中央バス事件を例に

2014-02-21 17:41:02 | 司法試験関連

ターゲットは個別に!

群馬中央バス事件(最判昭50.5.29)百選Ⅰ(第5版)[123]

【事案】Xが、運輸大臣(現国土交通大臣)Yに対し、路線延長を目的とした一般乗合旅客自動車運送事業の免許を申請したところ、Yは東京陸運局長に指示して聴聞を行わせ、その後に運輸審議会に諮問した。同審議会は、公聴会を開催して審理したうえ、右申請を却下することが適当である旨の答申をした。Yはこの答申に基づき、Xの申請を却下する処分をした。そこで、Xはかかる却下処分の取消を求める訴えを提起した。

【判旨】「処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は極めて重大な意義を有するものというべく、したがって、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどによりその決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。」

公聴会の審理を要求する趣旨が、……免許の許否に関する運輸審議会の客観性のある適正かつ公正な決定(答申)を保障するにあることにかんがみると、……運輸審議会の公聴会における審理手続もまた、右の趣旨に沿い、その内容において、これらの関係者に対し、決定の基礎となる諸事項に関する諸般の証拠その他の資料と意見を十分に提出してこれを審議会の決定(答申)に反映させることを実質的に可能ならしめるようなものでなければならないと解すべきである。特に免許申請者に対する関係においては、……申請者に意見と証拠を十分に提出させることを可能ならしめるような形で手続を実施することが、公聴会審理を要求する法の趣旨とするところであると解さなければならない。」

「本件公聴会審理がXに主張立証の機会を与えるにつき必ずしも十分でないところがあったことは、これを否定することができない。しかしながら、……仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的にXの申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、Xにおいて、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出する可能性があったとは認め難いのである。」本件不備は、「結局において前記公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、右審理の結果に基づく運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできないから、右諮問を経てなされた運輸大臣の本件処分を違法として取り消す理由とはならないものといわなければならない。」      

ターゲットは,「免許申請却下処分」である。取消違法は,「処分」そのものについて要求される。

しかし,公聴会→審議会→国土交通大臣の処分という入れ子構造になっている点に注意!

「瑕疵」があるのは,「公聴会」における「手続」である。処分そのものとは距離がある。

   公聴会における手続の瑕疵が重大

 → 重大な瑕疵ある公聴会に基づく審議会の答申にも瑕疵がある

 → 審議会の答申の本件処分にとっての重大性

 → 処分は取り消されるべきである。

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言語化作業

2014-02-20 16:45:38 | 司法試験関連

本番に向けて,基本事項の総まくり状態だと思いますが,その際有益な方法が「声に出す」というものです。

自説・規範・制度趣旨・問題提起などを,「何も見ないで口に出して言う」,というだけです。大事なことは,「言語化する」という作業です。頭の中で「ああ,分かる分かる」というのは,気をつけないと色んな勘違いを惹き起こしやすいのです。読みながら「分かる分かる」,「そうそう」,なんていうのはこの時期むしろ当たり前で,一読して分からないこと,つっかかるところがあるようでは困ります。

上記の作業の際,実は「単にテキスト読んで確認しているだけ」で終わっていると,「記憶できない」という例の悩みの元になります。しかし実情は「記憶できない」んじゃなくて,そもそも「記憶していない」だけです。やっているのはテキストを「読む」ことであって,「覚える」ことではないからです。「中々覚えられない」という悩みを持つ人は,この「勘違い」をしている人が大半です。これは本当に危険な勘違いです。

また,実際に記憶はしていても,いざ答案に,と言うときにスラスラ出てこない,書けない,ということがあります。それは頭の中で「何となく」わかっている状態止まりなので,まだ言語化されていないのです。「答案を書く」という作業は,「思考を言語化する」という作業に他なりません。ですので,この言語化のプロセスが普段の勉強の中に組み込まれていないといけません。冒頭の「口に出してみる」というのは正にこの言語化のプロセスの実践と言うことになるのです。日常生活でも,自分の考えを上手く伝えられない人は,考えそのものがまとまっていない(自分でも良く分かっていないということ)か,思考を言語化する作業ができていないかだと思います。但し,この口に出して言う作業,人がいないところでやりましょう。

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行政の作為義務を如何に導くか

2014-02-19 18:14:28 | 司法試験関連

第2回本試験に関して「行政が当事者に丸投げしているのがおかしい」という話をしました。何でそのような事が言えるのかと言うと,まず問題文に「市が市民との間を取り持って欲しい」,「いや,それは自分の問題でしょ。自分で何とかしなさい」的なやり取りが問題分上で目立つというのが一つ。「問題文の読み方」スキルと言う観点からは,これらの事情を法的に評価しなおしたいわけです。

そこで参考になるのが,エホバの証人剣道履修事件のロジックです。あの事件は,信教の自由が問題になる以上,校長は裁量権行使の際に慎重な配慮をすべきだ,というハードルを与えました。その結果,代替措置の可能性の検討や,本当に信仰の核心部分に触れる問題なのかどうかは調査すべきだった(のにしなかった),などの否定的な評価をしたのです。要するに,「形式的に処理するケースではなかった」ということを言ったわけです。本来,校長の広い裁量権行使の場面であり,しかも下手に動くと政教分離違反になる恐れもあったので,実際問題でとして今回の校長の判断が「まずいのかどうか」といわれれば,形式的には「まぁ,ありかな」と言えなくもないのです。しかし,それでは駄目だと,もっと「手を尽くせ」という評価をしたわけです。

正に第2回本試験もそうで,行政側の言う「当事者間で解決すべき問題でしょう,我々は関知しません」というのは,条例の運用として形式的にはその通りなんですね。ただ,そのように形式的に処理すると,市民側の警戒心や反対が非常に強いので,宗教団体側としては打つ手がないわけです。そこで今回は,信教の自由にかかわる問題である以上,少なくとも行政も何か手を差し伸べろ,その上で許可・不許可を決めるべきでしょ,という評価が可能となるわけです。このあたりを論証例では入れてみました。

参考にすべき「問題文の事情」

B教団: 周辺住民は,我々の教団とA教団との関係を疑い,A教団当時の事件と同じようなことが起きるのではないかと思っているようである。それは,根拠のない憶測である。根拠のない憶測によって,住民は我々を危険視し,敵視している。そのような状況で,周辺住民の過半数から同意を取りつけることは,極めて困難である

C 市: C市では,古くから,宅地乱開発問題やマンション建設問題等から住民による景観論争や環境保全のための開発反対運動が展開されてきた。そのような住民による運動から,良好な住環境を守ろうとする住民の高い意識が醸成されてきたし,行政もそれに積極的に対応してきた。安心して暮らせる,良好な住環境を守ろうとする市民のコンセンサスが「まちづくり条例」を制定させた。そのような歴史から,C市は住民の意向を尊重している周辺住民が抱く不安は,あなた方自らが払拭すべき問題であって,市が周辺住民を説得する問題ではない。条例の要求する条件を満たすことは,あなた方の主体的な努力にかかっている

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商法は何故難しく感じるのか

2014-02-19 17:27:17 | 司法試験関連

私は,ここ2,3年は商法が最難関(災難関!?)科目になっているという風に言っています。特に刑事訴訟法,民事訴訟法が2年続けて大人しくなったので(以前までのような破壊力抜群の問題ではなくなったと言う意味ですが),尚更商法の手強さぶりが際立っています。試験場での試験直後の感想も,「商法がきつかった」という声が目立つようになっています。

商法がやっかいな理由は,・妙に実務色が全面に出てくること,・条文検索能力が問われていること,・受験生が事例慣れしていないこと,・誘導がまるでないこと,などだと思います。

受験生的にも,条文を引きたがらない人が多いので,商法における「条文問題」は短答のみならず論文でも深刻化してきています。商法は,「対応する規定がないからどうしましょう」,とか「規則に書いてあるよね?」とか,条文直球問題が多いので,条文検索能力がないと本番で文字通り立ち往生しかねません(特に「条文がないから問題になる」系は,無い条文を探し続けるということになるので深刻です)。

また,事例慣れしていないと言うのは最近私が注意を喚起していることです。商法は,判例を読む際に,あまり事実関係を読み込んでいない人が多いと思います。民法も似ているところがあると思いますが,百選を読むにしても商法の場合は,論点名と結論が分かればとりあえず良し,的なところがあり,いわゆる「本件事案の特殊性」なり「事実の評価」なりはあまり気にしていない人が多いのではないかと思うのです。そのため,判例学習において「生の事実関係に触れる機会」が他の科目にくらべて少ないのです。更に短答の問題も,民法や刑法などは,事例にして聞いてくることが多いですが,商法は,抽象的に条文内容の正誤を聞いてくる○×問題パターンが圧倒的なので,ここでも事例に触れる機会がありません。これは結構な盲点です。おまけに旧司法試験の論文問題は商法は抽象度が高いものが多く(事実上の1行問題的なものが大半),ここでも細かい事実関係に触れる機会が少ないのです。

以上のことから,実は商法は他の科目以上に事例なれしていない可能性が高いので,事実関係から「あれが問題になるんじゃなかろうか」という部分で苦労しているのではと思います。受験生からも「何が問題になるのか検討がつかない」,「答えを聞いても,ああそれが問題になるんだという感じがする」という類の感想をよく聞くのが商法なのです。つまり,「論点抽出能力」レベルで苦戦していると思われます。

以上の点を踏まえ,意識的に商法は長めの事例問題を量的にこなすようにすべきだと思います。

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法令違憲アプローチで信教の自由を引っ張り出せるか

2014-02-18 19:38:01 | 司法試験関連

第2回本試験憲法において,「本件条例が実質的に制約している権利は信教の自由である」というアプローチが妥当するのは,あくまでも「適用違憲」の場合であって,「法令違憲」には妥当しないことに注意したい。

適用違憲の場面は,要は「Xとの関係においては」というように,個別具体的な事情をねじ込む事が可能なのである。したがって,本件建築物の「当該団体における本質的な意義」という点にスポットを当てる事ができ,そこから本件における条例の「適用の結果」,「本件宗教団体の」信教の自由を制約しているという評価が可能となるのである。

ところが法令違憲は,「一般的に見てどのような規制になっているのかどうか」,というレベルの話である。もし本件条例が実は信教の自由を制約する法令である,というのであれば,本件条例が適用されるような建築物は,すべてその用法として宗教的な意義を伴う建築物になっている,という事実関係の論証が必要となるが,そんなわけないのは自明である。本件条例が対象とする大規模建築物のすべてが,信仰の本質的部分に密接に関連するような形での利用が想定されているわけではないからである。したがって,本件条例は,一般的には財産権を制約しているだけにすぎず,適用が想定される事例すべてにおいて同時に信教の自由が制約されているという関係を導くことはできないのである。

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第2回本試験憲法 適用違憲論証例

2014-02-18 17:22:10 | 司法試験関連

条例第17条第2項に基づいて開発事業の中止を勧告した。しかし,B教団は,これに従わず,計画を実施する構えを見せた。そこで,市長は,条例第18条に基づいて,C市まちづくり審議会の意見を聴いた上で,B教団の開発事業計画を不許可とする処分を行った。

 (開発事業許可の基準)

第18条

1 市長は,次項の規定により許可しない場合を除き,第15条の許可をしなければならない。

2 市長は,第16条の開発事業協定が締結されていない場合,又は事業者が前条第2項の勧告   に従わない場合において,当該開発事業が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは,当該開発事業を許可しないことができる。

一 本条例に基づくまちづくり基本計画に適合しない場合

二 災害防止に対する支障等,市民生活の安全に支障が生ずるおそれがある場合

信教の自由の問題であることの指摘(問題文から導く)。住民自治の要請もあることの指摘(街の沿革等から導く)。地方自治も統治機構の一部であることに鑑み,信教の自由に可能な限り配慮した条例の適用が望ましい。

本件では,行政は当事者間での解決に丸投げしている。実質的には信教の自由の制約の問題であることに鑑みれば,行政が何も手助けしないで,条例を形式的に適用するのは違憲と考える。形式的に適用したことが適用違憲,との結論。

②本件では条例18条第2項第2号の「おそれ」があるとは言えないとの主張。

「おそれ」に程度は,本件では実質的に信教の自由が問題となる以上,「明白かつ現在の危険」レベルを要求すべきで,本件はそこまで至らない,との主張。具体的に,「どのように」安全が害されそうなのか,その蓋然性も含めて,本件ではそのような「危険」はまだ生じていない,という主張をする。

【論証例】

確かに,本件不許可処分により制限される権利は,財産権にすぎず,財産権が広範な規制に服しうる権利であること,街づくり条例は,地方自治の本旨たる住民自治を具現化したものであることに鑑みれば,市長の権限行使には広い裁量が認められ,本件不許可処分につき違憲の問題は生じないようにも思える。

しかし,実質的に制約されている権利は信教の自由である。教団本部施設は,教団教義の中核部分を実践する為に必要不可欠なものであり,本件不許可処分により,教団の信教の自由が制約される関係にあると言える。

だとすると,市長は形式的に本条例を適用すべきではなく,①信教の自由と住民自治の調和を実現すべく,仲介等相互の理解が深まるよう尽力すべきであり,安易に不許可処分をすべきではなく,また②条例18条2項2号に言う「安全に支障が生ずるおそれ」とは,客観的に見て,市民の生命身体財産につき差し迫った危険が具体的に想定される場合を言うと解すべきであって,そのレベルに達しない単なる不安感に留まる場合は該当しない,という解釈適用をすべきと考える。

→ エホバの証人アプローチである。

Comments (3)
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百選マーキング刑法編開始

2014-02-17 19:18:27 | 司法試験関連

百選刑法マーキング講義の収録を始めました。刑法は,憲法・行政法に比べると解説部分が学説チックなので,端折りやすい感じがしました。それでも事例や判例を類型化している部分や,処理手順部分になりそうなところは指摘するようにしています。今回は過失犯,不作為犯,因果関係のところで有用な部分がありましたね。しかし刑法は行政法なんかと比べると事実の概要の説明に時間がかからないのが良いです(笑)

ここ3日ほど風邪が悪化しないよう初期段階で抑え込んでいます。喉が弱いので喉が炎症を起こしやすく,必死の対応です(笑)。熱出したりするとスケジュール面で遅れが出るので避けないといけません。受験生のみなさんは寝込むと更に深刻ですから,これからの季節,花粉症・インフル対策も含め体調管理が肝心です。

金曜は講座説明会,土曜日は仙台出張講演(11時~13時と14時~16時の二本)なので今週は何かと楽しみです。

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Derek Jeter’s 10 greatest moments

2014-02-17 01:30:27 | 雑感
http://sports.yahoo.com/blogs/mlb-big-league-stew/derek-jeter-10-greatest-moments-011446478--mlb.html

キャプテンの名場面Best10だよ!ワールド・シリーズやポスト・シーズンのシーンが多いのは、さすが現役唯一のレジェンド・プレイヤー。名場面に「The~」と付くものが多いのが本当のレジェンド。マイケル・ジョーダンのThe shot、The move、ジョー・モンタナのThe drive、The cachtなどなど。我らがデレク・ジーターは間違いなく、未来の野球ファンに「Mr.November」って言われるんだろうなぁ♬ 

「The Jeffrey Maier home run」は全米規模で話題になったニュースで、しかもこれがきっかけでヤンキース王朝が18年ぶりに復活したという、もうオスカーで脚本賞が取れるような出来すぎたエピソードだったよね!「The flip」、「The dive」はMLBファンなら知らぬ人はいないThe Greatest Moments!本当に凄い人だ。95年のデビュー・イヤーからリアルタイムでずっと見られたことに感謝したい。

しかし昔の映像を見ていると涙が出そうになるよ。世紀末3連覇の頃の帝国軍は文字通り史上最強の誉れ高いチームだった(特に1998年。この年は野球史研究家も1927年のヤンキースに並ぶ「MLB史上最強チーム」と言う人が多いんだ)。今シーズン終盤は「ジーターさよならツアー」化して、マイケル・ジョーダンの1998年シーズンの再現となるだろうな。今後暫く出てこないレベルのプレイヤーだよ。
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