物権変動の時期 |
最判昭和33年6月20日 百選48事件
・契約成立時説。
→ 契約がいつ成立したかという問題とも密接に関連する。特に重要な財産である不動産の売買において当事者は契約を成立させる意思表示をすること自体に慎重であることに留意する。
特約によらない中間省略登記請求権 |
実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しないと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然として甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登記すべき旨を請求することは許されないというべきである。ただし、中間省略登記をするについて登記名義人および中間者の同意ある場合は別である。 |
最判昭和40年9月21日 百選49事件
・新不動産登記法は、旧法に比べると物権変動原因(過程)の公示への要請を強めている感は否めない。
・中間省力登記請求権が認められるのは、当該請求が裁判所において認められるケースである。登記実務は三者の合意があっても中間省略登記には応じていない。
177条の物権変動の範囲 |
大審院明治41年12月15日 百選50事件
・①「物権の変動及び得喪」要件と②「第三者」要件について民法は文言上特に制限をかけていない。立法担当者は「あらゆる物権変動につき、登記をしなければ、あらゆる第三者に対抗できないとすることで、登記制度の普及を意図していた。
・本判決は、①要件につき、起草者の意図通りに無制限説を採用した。②要件については大連判明治41年12月15日が制限説を採用した。結果、177条の適用範囲を画する判断要素は「第三者」該当性判断にかかることになった。
登記の要否(各論) |
大審院昭和17年9月30日 百選51事件、最判昭和35年11月29日 百選52事件、最判昭和46年11月5日 百選53事件、最判昭和38年2月22日 百選54事件、最判昭和46年1月26日 百選55事件
・法律行為の取消と登記
→ 取消後の第三者 177条で処理
取消前の第三者 第三者保護規定の有無で処理
・解除と登記
→ 解除後の第三者 177条で処理
解除前の第三者 545条1項但書で処理
→ 約定解除の場合(A→B→C売買事例)
Aは解除を原因として不動産の所有権を回復した旨の登記を解除前に得ることはできないが、約定解除権の留保をあらかじめ仮登記しておくことができる。仮登記があればこれを本登記に改めることで、解除前に現れたCに対しても優先することができる。したがって、Aは、約定解除による不動産のAからBへの所有権移転の遡及的消滅を解除後のCに対してはもちろん、解除前のCに対しても登記がなければ対抗できない、と解すべきである。
→ 合意解除の場合
判例は法定解除と同様に処理している。すなわち、遡及的に物権変動は消滅し、それを第三者に対抗するには登記が必要である。但し、合意解除前の第三者がち王毅を備えていた場合、合意解除の遡及効が解除され(545条1項但書類推適用)177条の適用が問題となることはない、という処理である。
この判例には批判が強い。合意解除は売買などと同様に新たな契約である。これにより第三者の法的地位を覆しうるということ自体、適当ではない。第三者との関係では、合意解除に遡及効は認められず、545条1項但書が類推適用されることもない。合意解除による物権変動は、登記がなければ第三者に対抗することができない、とすべきである(177条)。
・時効取得と登記
→ 時効完成後の第三者 177条で処理
時効完成前の第三者 登記なくして時効完成者は対抗できる
→ 本件では不動産二重譲渡において未登記のまま占有を継続した第1買主が時効取得を主張した事案である。そのため、162条の「他人の物を占有した者」と言えるかという論点も出てくるので注意。一般的に「自己物の時効取得の可否」と呼ばれる論点であるが、本判決は、二重譲渡における対抗要件主義により劣後する第1買主は当初から所有権を取得しなかったことになるとの理由で、「他人の物を占有した者」要件を充足すると処理した。
・共同相続と登記(A、B共同相続事例)
→ 共同相続人Aは自己の持分を登記なくして第三者に対抗できる(BはAの持分ついては無権利者であり、Bから単独所有権移転登記を受けたCは、Aの持分については無権利者からの特定承継人だから無権利者であり、177条の「第三者」にはあたらない)
・遺産分割と登記
→ 分割後の第三者との関係 177条で処理
分割前の第三者との関係 909条但書で処理(「第三者」に遺産分割を対抗できない場合、第三者との共有となり、共有物分割で処理することになる)
・相続放棄と登記
→ 登記なくして対抗できる。相続放棄の効力は絶対的。放棄者の権利を前提として権利を取得した者は常に無権利者となる。