扇子と手拭い

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ジムは落語の稽古場

2015-06-25 09:52:14 | 落語
落語日記のアーカイブ。ご笑覧ください。

▼名人、志ん朝の早口
 あと、いくんちかすると、落語塾が始まる。どこで稽古をしているかというと、スポーツジム。不思議に思うかも知れないが、私には、ここが一番、シックリくるのである。

 今回は志ん朝の「宿屋の富。無銭飲食を企てた男が、大店の旦那を装って大ボラを吹きまくり、宿に泊まり込んだのはいいが、ひょんなことから富札を買うハメになった。当たると思っていないので千両当たったら、宿の主人に「半分やる」といった。当たった。さあ、大変。

▼14分57秒の“完成品”
 前々からやりたかったネタ。年の瀬が近づくと年末ジャンボ宝くじを売り出す。頃合いもいいのではと挑戦した。ところが、志ん朝の噺は長い上に早口ときてる。素人に名人の真似は出来ない。まずは噺を15分に縮めよう。

 志ん朝の長い音源を聴きながら一字一句書き起こす。A4で15枚。長過ぎる。削っては読み返し、削っては読み返しを繰り返しながら、14分57秒にした。あたしの「宿屋の富」の台本が完成した。

▼落語は想像する芸
 ここからがスタート。噺を覚えなくてはならない。自分でICレコーダーに吹き込んだ“完成品”を何度も聴いて、噺を頭に叩き込む。落語の中で若い男が、抽選の前からすっかり当たった心持ちになって鼻歌を歌いだす場面がある。

 この場面は、馴染みの吉原の女を身請けに行く想定だ。鼻歌を「梅は咲いた」と入れ代えた。落語は想像芸だ、とある師匠は言った。「梅は・・・」によって、ひょうきんぶりが一層、際立つのではないか、と考えたからである。

▼乗馬マシンでピッタリ
 スポーツジムには乗馬マシンなるものがある。1回の使用時間が15分と決まっており、落語の稽古にピッタリ。スタートボタンを押すと同時に噺を始める。「東京が江戸と呼ばれたその昔、馬喰町には宿屋がたくさんありまして・・・」としゃべっていると、終わったところで隣の人が「舞台の人ですか」と質問。「落語の稽古だ」と言うとびっくり。

 いつだったか「楽しい噺を聴かせていただいて」と、脇の乗馬から礼を言われ驚いた。乗馬をトレーニングの最初と最後に利用するので、2回は確実に落語の稽古が出来るというわけだ。

▼ジムはあたしの稽古場
 若いトレーナーたちも私が落語を習っていることを知っているようで、落語のクスグリを聞かせると、「面白ろーい」と言って大喜び。

 「おや、向こうを通る姐さん、ちょいとイキ(粋)だね」「何言ってんだよ、あたしゃカエリ(帰り)だよ」―。こんな小噺を教えてやると、「落語って楽しいね」とトレーナー。スポーツジムはあたしの稽古場だ。  (2010年9月26日記) 以下次号に続く。

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