湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

習慣の詩パート2

2020-09-20 20:35:51 | オリジナル
共通テーマ「習慣」でEが書いた詩を投稿します。

習慣

人類は誕生以来
地上に生きてきた
地面に拘束され
拘束が習慣となり
自由を意識できない

慣性 それは
習慣から脱出した世界
有史以来はじめて気づいた
ガリレオの異才

日々習慣に埋没する
やみをえない だがときに
慣性のさわやかな風に
吹かれてみる
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添うの詩パート4

2020-09-18 22:26:22 | オリジナル
共通テーマ「添う」でEが書いた詩を投稿します。

つれ添う

二人が時間を共有する
まさつが生じる
いさかいが潜在する
一夫多妻 一妻多夫
必ずしも理想ではない
それはいっときの回避
新たな紛争の種をまくようなもの

いさかいをこやしに
育てる なにかを育てる

なんでもいい
三味線でもピアノでも
画を描いても文字を習っても
句をひねってもいいし
詩を書いてもいい

ねらいなど気にしない
一瞬でも時間の存在を
実感できればそれでいい
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習慣の詩パート1

2020-09-17 12:57:35 | オリジナル
逗子で唯一の水田で、稲穂生長中。

では、共通テーマ「習慣」でEが書いた詩を投稿します。
身についた習い

とある峠の茶屋
武家が食事を終えそうろうと立ち去る
店主がふと気づく
おかれた箸は
先がわずかにぬれているだけ
おやじ慨嘆する
 お気のどくになあ
 よいところのお出だったはずなのに

貧家にはうわずみとして
残せるものはあるか
少なくとも何が美しいかを
日に一度考える
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添うの詩パート3

2020-09-16 09:23:13 | オリジナル
共通テーマ「添う」でTが書いた詩を投稿します。

森の中

黄葉のブナの森は意外に明るい
降り積もった枯葉の上を歩くと
私の中の水分も吸い取られていく
干上がったダムの湖底から
消えた村の痕跡が現れるように
忘れてしまったはずの たくさんのことが
私の内側に張り付いている
木漏れ日がそれらを照らし出す
どの場面も鮮明で
ただ色だけが抜けている
今 私が崩れれば
これらすべても塵になって消えていく

もうしばらく
ブナの森の湧き水から水分を補給し
柔らかく穏やかな森の中を歩いていこう
私の記憶に寄り添って
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なにごとも無く

2020-09-14 18:47:01 | 
柴田秀子さんから新刊詩集「遠くへ行くものになる」が送られてきました。
静穏な雰囲気に微かな不穏や小さな不思議が漂う39編の詩の中から1編ご紹介します。

なにごとも無く

こんや 草の籠にねむる
つめも
かみも
まつげも 折りたたんで
ちっちゃく ねむる

マテバシイの実が
草葺きの屋根に 落ちる

間違い音を 数えつつ
ねむるスペースが 泥のように広がる
ドスッ
大きな実が落ちたのでは あるまいか
たまゆらのゆたかな刻が
また一つ 遠くへ走った
不測なことではない
こんやも
草の籠にねむるだけ
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添うの詩パート2

2020-09-12 18:24:56 | オリジナル
共通テーマ「添う」でAが書いた詩を投稿します。

霧雨

夕焼雲の下を雨雲が走っていく
バルコニーに出てみると微かな雨
太い電線に鳩が一羽
わたしの姿を認めたのか
小さな頭を振りはじめる

流れ去った雲
飛んでいった鳩
下がっていく室温
過去でも未来でもない
自分自身の一角に
留まっているわたしたち

わたしたちは立ち止まり
東京どころか横浜へすら出かけずに
心の迷路の壁を眺めている
今までの歩みに添って
わたしたちの影は付いてきていたか
この先どこかへ旅をして
わたしたちの影は付いてくるのか
自問自答している
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茸句・女郎花句

2020-09-10 21:00:37 | 文学
今日は小笠原学園の俳句クラスに出席。
緊急事態宣言中の休校が明けてからは教室の扉と窓を開け、講師席とすべての生徒席の間にパーテーションを立ててやっています。

Aの句が講師特選に。
一群(ひとむれ)の女郎花日本画家の庭
本選に入ったのは、兼題「茸」の句。特選候補でした。
火葬場のボイラー響く茸山
同じく本選に入ったSの「女郎花」句。
男郎花の籠に摘まるる女郎花
同じく本選に入ったTの「茸」句。
遠き日の原木シイタケ匂ひたる
湘南句会メンバー、今回は小笠原学園で気を吐きました!
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自由題「包丁とディナーベル」

2020-09-08 17:55:01 | オリジナル
自由題でAが書いた詩を投稿します。

包丁とディナーベル

炭を熾し香ばしいチップを散りばめる
網に載せる肉は
六日間塩漬し一晩塩抜し半日間乾かしたもの
桜、楢、林檎、胡桃、椈、ヒッコリーの薫りがまわるように
通気孔を少し開けてきっちり蓋をする
詩の煙に包まれ待つ
熾火がおさまってから
小説の煙にまかれて眠る

次の朝あなたを呼んだ
――燻製好きだったでしょ
  食べにきて――
返事はない

食卓に置いたままだったディナーベルを
朝から晩まで鳴らす
隣のクレーマー爺が腕を振り上げているのが
キッチンの小窓から見える
右手に包丁、左手にベル
肉には桜、楢、林檎、胡桃、椈、ヒッコリーの薫り
九月の明るい闇のなか
ずっとあなたを呼んでいる
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添うの詩パート1

2020-09-07 18:42:48 | オリジナル
波打ち際でSUPサーフィン。普段の穏やかな逗子湾では見られない光景です。

では、共通テーマ「添う」でAが書いた詩を投稿します。
君に添う

ようやくつながった電話
悪口を漏らすと君は笑う
ビデオ通話に切り替えて
控えめな君の笑顔を確認する
君が口にする否定的感情も
控えめで哀しそう
画面に伸ばした手の先は
フレームアウトする
いつか会って君の指三本握るから

神の内から脱すれば人はたちまち病み
理性も時間もどうにもできない
気持ちを抱えて私を悩ませる
目下の困った奴のことを
ここぞとばかり相談する

私のストレス解消の愚痴に
君の過去の出来事が共鳴し
いつになく「思い出し怒り」を始め
最後に一緒に笑ったこと
通話が終わってから思い出す
あの時君が握って振り下ろしていた手
会ったらぎゅっと包んであげるよ
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概念と実体

2020-09-05 20:17:22 | 
前回アップした鹿島建設葉山研修センター(旧小田良治別荘)を反対側の表門の方から。

では、8月の合評会で次のEの詩について話し合ったことを投稿します。
バラ

石ころがひとつ
リンゴがいっこ
あなたは この世にただ一人

ところが一(いち)はどこにもない
が どこにでもある
すべてのひとつを一身に秘めて

美しいバラをひとかかえ
花束にして持参しよう
ゆたかで美しい人に

バラはくちるが
思いはバラを秘めて
香りつづける

:作者の弁 :評者の弁
1~2連は数詞を、3~4連はバラを主題にしていますね。
そして1連目と3連目は実体を、2連目と4連目は概念を述べています。
 つまりたった一つの具体的存在と抽象概念、バラを贈りたい絶対的存在とバラに投影された感情という順で書かれているんですね。
「一」についてずっと思っていることから書き出したらこうなりました。
いつものEの詩は概念が勝っているけれど、それだけに終始せずこのように具象・実体を美しく描写する連を加えた方がより深くなっていいと思います。
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