湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

自由題「包丁とディナーベル」

2020-09-08 17:55:01 | オリジナル
自由題でAが書いた詩を投稿します。

包丁とディナーベル

炭を熾し香ばしいチップを散りばめる
網に載せる肉は
六日間塩漬し一晩塩抜し半日間乾かしたもの
桜、楢、林檎、胡桃、椈、ヒッコリーの薫りがまわるように
通気孔を少し開けてきっちり蓋をする
詩の煙に包まれ待つ
熾火がおさまってから
小説の煙にまかれて眠る

次の朝あなたを呼んだ
――燻製好きだったでしょ
  食べにきて――
返事はない

食卓に置いたままだったディナーベルを
朝から晩まで鳴らす
隣のクレーマー爺が腕を振り上げているのが
キッチンの小窓から見える
右手に包丁、左手にベル
肉には桜、楢、林檎、胡桃、椈、ヒッコリーの薫り
九月の明るい闇のなか
ずっとあなたを呼んでいる
コメント
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