湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

声の詩パート2

2017-02-20 18:49:21 | オリジナル
共通テーマ「声」でTが書いた詩を投稿します。

静かな午後

晩夏の昼下がり
屋敷街のゆるやかな坂を二人で上っている
乾いた陽が二人の濃い影を作り
坂の途中できつくなる
「少し休もうか?」
ななめうしろの夫に言葉をかける
反応がない
ふり返ると埴輪がポトポトと歩いている
目と口はほっかり開いて
暗い空洞がのぞいている
声はそこへ吸い込まれていく
「坂の上の木陰で休もう」
埴輪は黙ってうしろをついてくる
動く人影はなく 声も聞こえず
住人達は死んでしまったのだ
やっと坂を上りきり おおきなけやきの木陰に座り込む
「疲れたね」
そう声をかけられて 見ると
埴輪が夫に戻っている
坂の下には海が広がっている
「海まで行こう」
木陰を出ると 夫はまた埴輪になり
私の横をポトポトと歩いて行く
浜辺に着くと
目と口から風が入って
私も中身が空洞になっている

マグリットの空の下
二つの埴輪が並んで海を見ている
波は静かだ
コメント
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