湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

追加自由題作品

2017-02-11 11:26:11 | オリジナル
Kの新作(自由題)2編を投稿します。明後日の臨時合評会で、定例合評やり残しと共に取り上げます。

ならべる

怒濤のことばをならべてやる
腹の底に張り付いていた下卑た言葉さえ
はがし 君の体に押し付ける
戻らぬようにと 呪ってやる

水の張ってないプールの淵
アタリマエと手をつなぎ立っていた
不自由な己を嘘の水面に写して
笑みさえこぼし 息までしていた

背中から疑いもせずたおれる
なみなみとあふれる深層の愛がある
即座に守られ やがて浮上できる
それを信じることが私自身でもある

信じ切ることが私自身でもあった
疑わない正義に酔いしれていた

何もない
私の腹の中はことばすらない 
消化することを失った空洞なのだ
この先何かを食らうことができるのか 
まるでわからない
空腹に気が付くことがあるのだろうか
なにか はじまることがあるのだろうか


作ること

理想のキャベツを見つけた
しっかりとした大きな葉で包むロールキャベツを作る

ステンレスのさびないボールの中
あん となるものを入れ混ぜる
力を入れて混ぜすぎたのか…
食材は こなごなになり
ねっとりと熱をおびた塊になった
作り方に間違いはない
冷たい場所にあたりまえのように移した
時とともに熱を失った塊
大きな脈のある葉で包む
ちゃんとわかっている
簡単だと思っていた
理想どおりにできるはず
後は木綿のひもで縛り上げ
大きな鍋にほうりこむ
波打つスープに彼らを放り投げた

あの時有限だった熱のことを
おぼえているだろうか
刻んだ野菜の愛も
夢のつなぎの卵も
ただの肉の塊ではないことも
いつのまにか
鍋は大海に代わり
沸き立つのは人の波となる

時の流れは遅くてそして速く
静かなゆうげ
老いた二つの口でロールキャベツを食する

コメント
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