575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

アカシアの雨が止む時        草女

2007年05月15日 | Weblog
 西田幸子の物悲しいような気だるいような歌を記憶している。このアカシアの花は? もちろん白い藤のように房になって咲くあの花だ。
 林業関係者はこの樹を偽アカシアといい、植物学者は針槐(ハリエンジュ)という。マメ科ハリエンジュ属の落葉高木で学名をブセウドアカシアという。プセウドは似て非なる・・つまり偽という意味からニセアカシアになった。そして一方のハリエンジュは、エンジュに似ていて針(刺)があるのでハリエンジュになつたとややこしい。
 このニシアカシアは、北アメリカ原産で日本には明治時代の初めに渡来した。強健で成長力が旺盛であり、水分や肥料分の乏しい土地でもよく成長する。だから、砂の害に悩まされる海岸、山を切り開いた道路などの法面などによく植えられている。また、マメ科特有の根にある根瘤菌で空気中の窒素を固定し地味を肥やすので、銅鉱山の煙害地の復活にも活躍している。
 おまけに、芳香のある花と蕾は食べることができる。生のものは天麩羅、バター炒め、油煮、澄し汁、に好く。茹でたものはマヨネーズ和え、煮びたし、サラダなどにするとおいしい。
 そして、花の蜜は良質で養蜂家はニセアカシアの開花期を求めて南から北へと日本を移動する。
 さて次に葉であるが、乳牛、馬、羊などの飼料になり、これらの家畜は乾燥した葉を他の飼料に混ぜると喜んで食べると言う。
 もうひとつ木材としても堅硬で重く、緻密で耐朽力が強く利用価値が高い。

 これだけ役立てば、根が浅く、成長は良いが早熟・早死で、萌芽力が強く駆除に苦労するという欠点を補って余りある。
 本家アカシアがミモザの名に甘んじ、偽アカシアがアカシアになりつつあるのも仕方ないことだろう。
 そうそう、流行歌の背景樹としても抜群だ。

   アカシアの花降る中に兵の墓      門前ふみ

(投稿にあたり、八坂書房・有岡利幸著・日本植物文化誌を参照)
コメント (4)
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