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*165*の日々です

クリスマスの思いつき

2014-12-23 23:08:53 | 学・楽・感
男1人、女2人の3人グループがショッピングモールにある大型書店の入り口にいた。マフラーをほどき、コートのボタンをはずす。かなり寒い日だったが建物の中は暑いくらいだ。
「さあ、行こうか。」
誰がというわけでもないが声をかけて、3人は店内に進んだ。そして、お互いに顔を見合わせるでもなく三方に散った。
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3日前のことだった。3人は、仕事などで休日が合わず、丸一日一緒にすごすということが最近はほとんどなかったのだが、どういうわけか、クリスマスイブはみな休日で、しかも他に予定がないことがわかった。考えようによっては寂しい面子だ。昔はクリスマスと言えば特別な楽しみ方を計画したものだったが、いつ頃からだろうか、そんなこともなくなっていた。そこで、昼間から一緒に出かけようという話がまとまった。
普通、そういう場合の目的地はテーマパークなどを選択するのが手っ取り早いのだろうが、誰もそんなことは口にしない。頭にない。翌日が仕事だというのもあるが、そういったアミューズメントに興味のない、やっぱり寂しい人種とも言える。
ならばどうするか。まずは食事だ!食事をどうする?ここは昼食に力を入れるべきだと1人が主張した。理由は、夜は店が混む、たぶん昼より。
「おしゃれなレストラン?たとえばイタリアンとか?」
「うーん、昼だけど鍋でもいいんじゃない?」
「いいね!でも、もし、ものすごく待ち時間長そうだったら、その時は臨機応変に、てことで。」
12月24日クリスマスイブ昼鍋!と決まった。3人だし、昼だし、予約はなしで、当日ターミナル駅周辺で店を探すことにした。
話が一段落ついたとき、見て!と、1人がスマホに画像を表示した。覗き込むと、そこに映っていたのはケーキだった。もちろんクリスマス仕様、しかも見たことのない真っ赤のブッシュ・ド・ノエルだ。
「ケーキだけは予約してたんだ。24日の夕方受け取りで。」
つまり、夜に鍋を食べに行くことはもともと無理だったのだ。
「夕方って、時間は決まってるの?」
「4時から7時。」
3人はしばし沈黙した。
「時間、空くよね。」
仮に時間をずらして1時から食べ始めたとしても、そこは昼食だ、1時間もあれば堪能するだろう。少々のアルコールが入ったとしてもだ。ウインドウショッピングの後、お茶?しかし、ケーキを持って帰るのだから、その場合もドリンクのみなわけだ。 
「イルミネーションだって暗くならないと点灯しないしね。」
「光っていないワイヤーを見て回ってもね…」
自分たちの泥縄を実感して苦笑いする3人だった。
「プレゼント交換しない?空き時間に選びに行って。」
提案者以外が小さな驚きの声(?付き)を上げた。
「うん、だって、イブだよ。なんかクリスマス要素入れたいと思わない?」
「まあ…」
「鍋って、忘年会要素だしね。」
3人でプレゼント交換なんて、したことあっただろうか。そんな3人なので提案者も含めてイメージははっきりしなかったが、プレゼントという言葉の響きがほんの少しわくわくを誘った。
「でも、お金ないな。」
温度が下がった。給料日前日だ。それもしかたない。わずかなボーナスは、もう予め決められた位置に収まっていた。
「上限決めようよ。千円とか。」
「千円か…何買えるかな?」
「そうだね。気の利いた物を買おうとすれば、足が出るよね。」
気の利いた物…クリスマスに限らず、プレゼント御用達店のLoftとか東急ハンズの商品でも千円で買える物はもちろんあるが、地味なステーショナリーでは盛り上がらない。
「千円以下で個性が光るプレゼントって、ないかな…?」
「…文庫本…どうかな?千円以下で結構あるよね。」
「何にしようかな?」
賛成反対もなく、すでに3人の気持ちは次のステップに移っていた。
本を選ぶ。この行為は、かなり自分自身を試される。どの本に決めたかはもちろんのこと、選択の過程にもおいてもだ。
読む側に立って好みを考える。これは贈り物の基本だ。しかし、自分が読みたい本でもよいわけだ。自分のお薦め本がどう評価されるか見るのも面白いだろう。そして、あとで読ませてもらうことだってできるからだ。
こういうとき、女の中に1人だけ混じった男というのは必要以上に気を遣う。彼の思考回路は、当日までほとんど本棚状態だった。それに対して女はどうか。1人はアマゾンで予習し、もう1人は当日の気分で決めるつもりで何の準備もしなかった。
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3人が囲んだ丸いテーブルの真ん中には、3人にちょうどよい大きさのクリスマスケーキが乗っていた。それぞれの前には、ケーキを取り分ける皿とコーヒーカップ、そして、ほぼ同じ大きさの四角い塊が置かれていた。選ばれた3冊の本がクリスマスらしい色違いの衣装に身を包まれて。あみだくじを作ろうか、紐をつけて引こうか、交換の方法を考えてみたが面倒になったので、ケーキの入っていた紙袋に本を入れ、2、3度シェイク。目を瞑って3人一緒に手を突っ込んだ。自分のが当たったときは隣に一つずらすということで。
さて…
娘は父が選んだ笑える話題の書を手にした。母には娘が読んでみようと思っていたコミックが当たった。妻から夫へはちょっとしたHow to本が渡った。
プレゼントされた本は必ず読むこと。そして、一言感想を。
メリークリスマス!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ショートストーリー風にしてみました。
我が家の本当の出来事と違っているところは、
1.それが12月23日だったこと
2.昼ご飯が鍋でなかったこと
3.クリスマスケーキが注文されていたことは全員が知っていたこと
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