あっという間に3月!出会いと別れが訪れる春の季節ですね。
就職や進学のため、住み慣れた場所を離れ、
新たな環境へと足を踏み出す人もいれば
大切な人との別れを迎える人もいるでしょう。
僕はと言いますと、来月引っ越しをすることになりまして、
日々部屋の片付けやら荷造りに勤しんでおりますが、
ついつい貴重な盤(レコードです)を見つけ、
ジャケットを眺めたり、針を落として感動に頭を抱える日々です。
新たなステージに挑戦する人にとって
大いなる期待と不安が入り混じっていると思います。
そんな方々にぜひ聴いて頂きたいのが、本日ご紹介する曲です。
ボブ・マーリー「Redemption song」
まずは何の予備知識も無しに聴いてみてください
Youtubeのボブ・マーリー公式チャンネルでも聴く事が出来ます。
レゲエという音楽の先駆者である彼。
この人は存在自体が神格化されており、
その生き様や音楽すべてがメッセージと言えるのですが、
彼の功績を伝えるにはどうしてもラスタファリズムや
当時の時代背景を絡めてしまいがちです。
「ラスタファリズムって何?」
「レゲエって何?」
と思う方もいるかもしれませんが、
この記事では、そういった情報はなるべく排除して、
純粋に「歌の詩」にのみスポットライトを当て、
ご紹介したいと思います。
その上で、もし興味を持ってくれたら、
ぜひご地震でボブ・マーリーについて調べて頂ければ幸いです。
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Old pirates, yes, they rob I
昔、略奪者どもは俺を捕え
Sold I to the merchant ships
奴隷商人の船に売った
Minutes after they took I
そのすぐ後、奴らは
From the bottomless pit
地獄の底から俺を買い取った
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最初の歌詞では、奴隷商人に捕らえられ
売り払われてきた黒人の歴史が歌われています。
ここでの「I」はボブ・マーリー自身でもあり、
自分と同じく迫害されてきた「黒人全員」を表しています。
奴隷貿易が行われていた時代、
捕らえられた黒人たちは奴隷船内の、ほとんど
身動きの取れないスペースで、すし詰めにされた為、
1~2カ月の長い船旅の中で死んでしまう事もあったそうです。
ここの歌詞だけでも、そういった
残酷な当時の時代背景が思い浮かびます。
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But my hand was made strong
しかし、俺の手は強く作られている
By the hand of the Almighty
全知全能の神によってね
We forward in this generation Triumphantly
この時代を、胸を張って生きていく
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ここでは、そんな地獄の環境の中でも
「強く生きていくぞ!」
というメッセージが込められています。
恵まれた僕らとは比べ物にならないくらい差別や迫害を受けていたにも関わらず、
こんな力強いメッセージを歌えるなんて・・・・
当時のボブ・マーリーがいかに強い支持を集めていたかが
良くわかります。
僕は特定の宗教を信じているわけではありませんが、
「俺の手は神によって強く作られている」というフレーズは
純粋に格好良いし、勇気付けられます。「自分は一人じゃない」と思わせてくれます。
「Triumphantly」は、「誇らしげに」とか「得意気に」といった意味がありますが、
ここでは前後の歌詞の流れから「胸を張って」と訳しました。
さて、ここでサビに入ります。
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Won't you help to sing
一緒に歌ってくれないか?
These songs of freedom?
この自由の歌を
'Cause all I ever have
Redemption songs
Redemption songs
なぜなら、俺が今まで歌ってきたのはすべて
救済の歌だから
救済の歌だから
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ここで「These songs」「Redemption songs」と
単数形ではなく複数形になっている事に気付きます。
この「Redemption song」が収録されているのは、
ボブ・マーリー生前最後に発表された「UPRISING」です。
既に病魔におかされ、死期が迫っている事を知っていた彼は、
今までの自分の音楽すべてを総括する意味で、
この曲を作ったのではないでしょうか?
僕の解釈ですが、
「今まで自分が作った歌はすべて自由の歌、救済の歌なんだ。
だから、俺が死んだ後でも俺の意志を継いで頑張ってくれ!」
という、彼からの最後のメッセージのように思います。
さて、次の歌詞では、彼の一貫した思想、熱いメッセージが込められています。
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Emancipate yourselves from mental slavery
精神的な奴隷の状態から 自分自身を解放するんだ
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精神的な奴隷の状態(mental slavery)とは、
聞いただけではあまりピンと来ないかもしれませんが、
社会に生きる中で、特定のルールや制度に縛られたり、
「こう思われたらどうしよう?」「どうせ自分には出来ない」
といったネガティブな感情によって、
「精神を拘束されている状態」と解釈するのはどうでしょう?
社会やネガティブなマインドこそが奴隷主であり、
それによって奴隷となっている状態から、自分を自由にするんだ、
と歌っています。
そして、そこに更に追い打ちをかける強烈なメッセージがやって来る!
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None but ourselves can free our minds
自分自身にしか、マインドを自由にすることはできない
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「free our minds」というフレーズは、同じような言葉が日本でも頻繁に使われますよね。
「マインドフリー」とか「人の顔を気にしない」とか
「魂を解き放つ」とか自分が一番納得できる言葉に置き換えてほしいです。
Emancipate yourselves from mental slavery
None but ourselves can free our minds
(精神的な奴隷の状態から 自分自身を解放するんだ)
(自分自身にしか、マインドを自由にすることはできない)
この2節こそ、彼が常に歌っていたメッセージなのだと思います。
それにしても「精神的奴隷」とは・・・。
なんてパンチのある言葉なんでしょう!
この言葉により、なぜ彼が最初のフレーズとして、
自分の経験と異なる、過去の黒人奴隷の話を用いたが分かりますね。
僕がこの曲を初めて聴いたのは中学生の時。
初めて聴き、訳詞を読んだ時の感動と震えをまだ覚えています。
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Have no fear for atomic energy
原子力など恐れるな
'Cause none of them can stop the time
奴らに時間まで止めることはできない
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原子力という強大なエネルギーに対し、
不気味さや恐れを感じる人は多いと思います。
特に広島出身の僕としては原子爆弾(atomic bomb)のイメージもあり、
この一節はとても印象に残っています。
未知の強大なエネルギーに屈服してはいけない、といった所でしょうか。
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How long shall they kill our prophets
While we stand aside and look? Ooh
いつまで奴らが預言者を殺し続けるのを傍観しているんだ?
Some say it's just a part of it
それはほんの一部分だという奴もいるが
We've got to fullfil the book
俺たちはこの聖書を完成させなければならない
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この部分を訳すのは難しい部分です。
彼自身の真の意図がどこにあるのか・・・という話にもなるのですが、
僕なりに解釈してみました。
「見ているだけで行動しようとしない人」
「いつも他人のせいにしている人」
「何かに依存しないと生きられない人」
はいつの時代にも存在していると思いますが、そういった人たちに
「そんな生き方じゃダメだぜ!」と突き付けているように感じます。
一節目で「our prophets(僕たちの預言者)」という言葉が使われているので、
四節目の「book」を「聖書」と訳しました。「予言の書」でも良いかもしれませんね。
聖書には様々な教えが書かれていますが、
最終的に行動するのは自分自身なんだから
誰かに依存せず自分で考えろ!的な強烈なメッセージが読み取れます。
ただ「book」には色んな意味があるので、
それを、自分の人生が書かれた「台本」や「小説」「日記」
と考えても面白いですね。
いずれにしても「自分自身で自分の人生を完成させる」
という事ですね。
いかがでしたでしょうか?
この「Redemption song」は、彼の作品の中でも珍しく、
バンドサウンドではなく、アコースティックギター1本で歌われます。
だからこそ、彼の作品の中でも異彩を放ち、メッセージがダイレクトに伝わります。
そこには何のギミックもテクノロジーもなく、
純粋な「音楽」があります。
ちなみに、あのスティーヴィー・ワンダーも
この曲をカバーしております。こちらは打って変わって
力強いギターソロから始まり、スティーヴィ―の歌い上げも素晴らしいので、
こちらもぜひ聴いてみてください。
長い人生の中で、職場や学校、人間関係などで、
気付かないうちに委縮してしまう事もあると思います。
そんな「精神的な奴隷状態」から抜け出そう、と、
ボブ・マーリーは自分の人生の最後に歌ったのです。
失敗する事も、悩む事も、落ち込む事もあると思います。
そんな時、この「Redemption song」を聴いて、
少しでも気持ちが前に進む事を心から願っております。
《スターマン★アルチ筆》
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