《ハウリンメガネ》
はい!「イーノで紐解くロックの歴史」!話は順調に続いております。ここ数回はサイケ方面に話が寄っていましたが、
そもそもサイケデリックムーブメントの火付け役は……
{ 編集長「MASH」}
ビートルズ!ビートルズ!
《ハウリンメガネ》
はい、編集長ニッコニコです(笑)。
{ 編集長 }
そりゃ、そーだよ!俺「ビ-トルズだけで生きている」から!
《ハウリンメガネ》
はいはい。存じてますよ。じゃあ、行きましょう。当時「ビートルズに影響されたミュージシャン」は枚挙に暇がなかったわけですが、それと同時にレコード業界自体も柳の下のドジョウ欲しさに「ビートルズみたいな奴らを売って一儲けしたい!」という欲が出たわけですよね。
{ 編集長 }
おっ、今日はキンクス?アニマルズ?それともストーンズの話か?
《ハウリンメガネ》
うっ、確かに彼らもそのような節がありましたが・・・そこは今や大御所と云うコトでロック史の中では十分に落ち着いているはずでしょ?
{ 編集長 }
ああ、まあ彼らも今やレジェンドになっちまったからなぁ。
《ハウリンメガネ》
何をがっかりしているんですか(笑)!ということで、今回は当時の「ビートル旋風の真っ只中」だったからこそリリースされた「ビートルライクな盤」の話です。
{ 編集長 }
おっ、その辺もイイゾ!もっとヤレ!ずっとヤレ!それそれ!
《ハウリンメガネ》
急に息を吹き返して馬鹿になってる・・・もう。ではさっそく行きますよ!アメリカンサイケの本堂、シスコ出身のビートルマニア!
ボー・ブラメルズ
「ザ・リッツ・コレクション」
(※2ndアルバムのタイトルを変更した西独リシュー)!
{ 編集長 }
おっ、出た!
《ハウリンメガネ》
なんと本作のプロデューサーはファミリー・ストーン結成前の「スライ(・ストーン)」です。
{ 編集長 }
そうなんだよ!スライはDJやったり、こーいうプロデュースやったり・・・後の「生涯神経衰弱人生」を考えると本来は裏方で良かった人なのかもね。
《ハウリンメガネ》
スライ自身「ビートルズに影響を受けた一人」ですよね。ラジオDJ時代にビートルズを筆頭にブリティッシュ・インベンションものをガンガンとかけまくっていたという……
{ 編集長 }
いち早くイイ音を拾った人なんだよ。後のファミリーストーンではモータウンとは角度の違う「ポップな黒さ」で人気だっただろ?
《ハウリンメガネ》
大名盤の「暴動」なんか、云うならば彼流の「サージェント」ですもんね。
{ 編集長 }
アレは強烈なアルバムだよな!ずっと聴かれるべき作品だ!
《ハウリンメガネ》
そんなスライですから、「ビートルマニア」の彼らに目をつけてプロデュースを受けたんでしょう。そんな本作ですが、確かに……ビートリーですね。
{ 編集長 }
ん?なんだよ、なんか含みのある言い方だなぁ。
《ハウリンメガネ》
いや、他意はないんです。全体的に間違いなくビートリーなんですが、同時に凄く別の影響源を感じるんですよ。
{ 編集長 }
ほほう?
《ハウリンメガネ》
ボブ。エレクトリック期初期のボブ。このアルバム、ビートルサウンドにボブ的な、というかカントリーロック的な節回しが混ざり合ってるような感じしませんか?
{ 編集長 }
ふふふっ・・・。そうなんだよ。この時期のバンドにボブの影響が無い分けがない!って話さ。
《ハウリンメガネ》
ギターの音もいい感じに乾いてて、それも相まって「バーズ」とか「フライング・ブリトゥ・ブラザーズ」なんかを思い出すんですよね。ただ、「バーズ」よりもビートル寄り。そのバランスが絶妙に気持ちいいんですよ。
{ 編集長 }
まあ、「バーズ」ってモロに「ボブとビートルズの混ぜ合わせ」でしょ?そこにクリス・ヒルマンのカントリーが入って来て・・・それが「60年代バーズ」の音さ!クロスビーが抜けるまでのね。
《ハウリンメガネ》
なるほど。わざと「バーズ」風にはせずスライが上手にプロデュースしたのかもしれませんね。それにシスコの人たちだからルーツロックは身近だっただろうし、その風土の上で「ビートルマニア」となると確かにこういうバランスを実現できるかもなぁ。
{ 編集長 }
ちなみにB1の「サッド・リトル・ガール」はこの対談でもバンバン出てくるヴェルヴェッツの「オール・トゥモローズ・パーティー」の元ネタって話なんだよ!知ってた?
《ハウリンメガネ》
へぇー!そうなんですか!確かに曲の作りは似てるなぁ……でもなんかB面全体の空気が「ヴェルヴェッツ」に影響してそうな気がするな。シャーマニックというか土着的なドロっとした感じというか……こういう感じが「サイケの勃興」にもつながっていくんですよね。
{ 編集長 }
ひとつひとつ、パズルのピースみたいにさ。この頃のミュージシャンたちは貪欲に「発売される音、レコードになっている音」を色々聴いていたって事なんだよね。
《ハウリンメガネ》
「初期ビートルズとルーツ・ミュージックの邂逅」が、この盤のような「プリ・アメリカン・サイケ」を芽吹かせていた頃、ビートルズは既に「サイケの大傑作」を作ってた、ワケでしょ。やっぱりこの時代って「ロックの進歩する速度」が無茶苦茶速いですね。
{ 編集長 }
「リボルバー」ね!
《ハウリンメガネ》
やっぱりこの時代って「ロックの進歩する速度」が無茶苦茶速いですね。
{ 編集長 }
って云うか、「ビートルズが早い」んだよ!「ラバーソウル」の後に「リボルバー」なんだからさ(笑)。
《ハウリンメガネ》
着いて行ける訳ないです・・・んじゃ、ところ変わって、こちらへ参りましょう。ジャーン!
{ 編集長 }
お!出た!
《ハウリンメガネ》
はい!一見、ビートルズの作品かな?と見間違えそうなこちらはザ・バッグスの「ビートル・ビート」!ジャケットに記載されている通り「オリジナル・リバプール・サウンド」「レコーデッド・イン・イングランド」ビートルズ同様リバプールから出てきたブリティッシュ・ビートバンドです!
{ 編集長 }
……ププッ(笑)
《ハウリンメガネ》
……嘘です!
{ 編集長 }
アレ?引っかかったと思ったのにぃ・・・。
《ハウリンメガネ》
何をガッカリしているんですか(笑)。
{ 編集長 }
だって、引っかかると思ったんだもん。
《ハウリンメガネ》
何をスネているんですか(苦笑)!こちらは「当時のビートル旋風」に便乗しようとしたマイナー会社「コロネット・レコード」が、「ビートルズ関連作品」と勘違いさせる作戦で・・・
{ 編集長 }
あの「Vee Jayレコード」の「手を変え品を変え作戦」だって同じようキワドイ手口だったけれどコイツは全くの偽物だからなぁ(苦笑)。
《ハウリンメガネ》
そんな「ビートルマニア」に狙いを付けて買うのを確信し売り出した・・・ホントに「ワル~いアルバム」なんです(笑)。
{ 編集長 }
手強いよ(笑)。
《ハウリンメガネ》
この「ビートルズ関係と勘違いさせること」に注力したジャケット、実にヒドいですよね(笑)。バンド名を曲名みたいに記載してたり、「間違い探し」みたいだもの(笑)。
{ 編集長 }
しかし、まあ実に興味深い1枚なんだよ!
《ハウリンメガネ》
このバンドはリバプールどころかアメリカはニュージャージー州出身で実際は「ザ・バッグス」という名前ですらないんですよね。しかもこのジャケットに写ってる4人はメンバーでも何でもない「それらしい誰かさん」!
{ 編集長 }
いかにこの時代「ビートルズが強力なアイコン」となっていたか?が分かるだろ?
《ハウリンメガネ》
しかし、この発売された本アルバムを見て、初めて自分たちと全く関係ない名前で、しかも「詐欺紛いのジャケットでリリースされている」ことを知ったメンバーは大きく落胆したという……
{ 編集長 }
いやぁ、ビートルズのカバー曲も無理矢理やらされたようだしな。
《ハウリンメガネ》
ビートル・ブームに便乗しようとし「レコード会社に作られたバンド」という意味では「モンキーズ」もいますが、彼らの場合は少なくとも「モンキーズ」としてちゃんと売り出されてヒットしていますからね。
{ 編集長 }
「モンキーズ」の場合は「ライブを辞めたビートルズの後釜」の為にわざわざグレッチやTVと組んでまで慎重に練られたアイドルグループだったからね!
《ハウリンメガネ》
一方この「バッグス」の場合は「タチの悪い業界人にダマされてしまった・・・」ということですかね。まあ業界の悪いところを煮詰めたような話ですな。ショウビズの世界はおっかないなぁ。
{ 編集長 }
でも、ダマサレタお陰で音は残っているわけ!
《ハウリンメガネ》
そう!その「肝心の音」なんですが、こんな悪徳商法みたいなことしてるんだから音もプレイも酷いのかなって思うじゃないですか。
{ 編集長 }
一見、胡散臭いからね。
《ハウリンメガネ》
それが、演奏も上手いんですよ(笑)……
{ 編集長 }
と言うよりも、今やガレージのお手本的アルバム(笑)!
《ハウリンメガネ》
レコード会社の「ビートルズっぽく演奏しろ!」ってディレクションもあったんだろうけど、ここでカバーされてるビートルズの2曲「抱きしめたい」も「シー・ラブズ・ユー」もちゃんとビートルズっぽくやれているし、他の曲も「あー、ビートルズっぽいわ」と思えるレベルで悪くないんですよ。
{ 編集長 }
ニュージャージーとは言えニューヨークの隣でしょ?日本で言うと埼玉県みたいなイメージ(笑)。すぐ横は都内じゃない!で、コレは「ニューヨークの田舎ガレージ」と捉えてもイイよね。
《ハウリンメガネ》
このバンドに参加している「ゲイリー・ライト」は後々ジョージやリンゴとも関係するし、多分メンバー自体は「ビートリーなバンドをやりたいって方向性」で、そこはレコード会社とも一致してたんでしょうね。
{ 編集長 }
本作の重要性はさっきも言ったとおり、ビートルズがアメリカへもたらした「バンドブーム」の中で「ガレージで黙々と演奏していたバンド」がたくさん居たわけ。で、その一部がマイナーレコードで出されたのよ。多くは45回転でさ・・・、
そうそう今や「ガレージコンピ」として出されているアレね。で、これこそ「ガレージロックの起源」なんだよ!本作はLPで「その起源を聴ける」そんな重要盤なんだよ!
《ハウリンメガネ》
私、文句があるとしたら「シー・ラブズ・ユー」に入ってるハンドクラップ!あれ、リズムがズレてんですよ(笑)!聴いててズッコケちゃったもん!
{ 編集長 }
ソレもガレージ感が有っていいけれどね。
《ハウリンメガネ》
でもあれオーバーダブかなぁ?プレイを聴いてるとあそこだけおかしいんだよな。あれもレコード会社が変なディレクション入れたのかな?
{ 編集長 }
いやぁ、素人かその辺の人を集めて手拍子させただけでしょ(笑)!1発録音だろうから、ズレていてもリテイクは許されなかったんだろうな。金と時間の無駄ってことで(笑)。
《ハウリンメガネ》
多分まともなレコード会社と付き合えてたら「ボー・ブラメルズ」と同じように「ブリティッシュ・ビートへのアメリカからの回答!」みたいに売り出せたんだろうけど……勿体ないですねぇ。
{ 編集長 }
それこそ西海岸と東海岸の違いなんだよ。同じアメリカでも全く違う風土でビジネスだから。
《ハウリンメガネ》
そういう意味で云ったら「ビートル・ブーム」ってのは功罪半ばするところがあったんですかね。多くのミュージシャンの扉を開くと同時に、悪い業界人の欲に火をつけたことで良いセンスの持ち主を潰した・・・そんな側面もあったんだなぁと感じますよ。こうして「ブラメルズ」と「バッグス」を並べると「ビートル・ブームが生み出した光と影」が見えますなぁ。
{ 編集長 }
まあ本作や、当事発売された「ビートルカツラ」「ビートルギター」なんてもんはまだ、可愛いもんだよ!「ビートルズが寝たホテルのシーツ、その切れ端」まで売られたわけだからさ・・・もうそーなるとスゴイでしょ?
《ハウリンメガネ》
(笑)ま、悪いのはあくまでも「ビートル・ブームを悪用した連中」ですからね。それに「バッグス」も本位ではなかったとしても、こうやってアルバム1枚シッカリ残ってるわけですから。
{ 編集長 }
そして、ちゃ~んと「日本のコアな音楽ファン」にまで知られている(笑)!メンバーのゲイリーライトなんかはこの後「スプーキートゥース」や「ソロ」でもしっかりと売れて、生き残っているからスタートと考えれば上出来でしょ。
《ハウリンメガネ》
いやぁ、こうして紐解いていくと「音楽業界の暗黒面も」見えてきたりと、益々話は広がっていく一方ですな。
{ 編集長 }
ビートルズのお陰で多くの人が「人生を良くも悪くも狂わされた」のさ!俺もその一人だけれどね(笑)。
《ハウリンメガネ》
ううっ!話し足りない!次回もまだまだ続きますよ!「イーノで紐解くロックの歴史」!というわけでまた次回!
{ 編集長 }
おう!臨むところだ!
<続>
《編集長& Jerry's Guitarオーナー「Mash」筆》
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