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「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,14) Dave Clark Five『Glad All Over』(US 1st Stereo)

2025-05-31 11:27:16 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

さて、前回に引き続き、Dave Clark 5をご紹介致します。

皆さん、サーチャーズ、クリフ・リチャード、ジェリー&ペーカーズ、フレディ&ドリーマーズ等、今までいくつかの「ブリティッシュ・ビート・グループ」を紹介して参りましたが、聴いて頂けましたでしょうか?

まだまだ隠れた・・・というか「今では語られなくなった面々」がいることには驚かされます。特に、前回も書きましたがドラムとリズムを全面に押し出し、そこにサックスやオルガン、コーラスが絡み合う重厚なサウンドは他のバンドとは異彩を放っております。それこそがデイブ・クラーク・ファイブなのです!当時の・・・特に彼らのサウンドメイクがアメリカのロック少年の心を捉えた事実こそ、当時のチャートアクションを見れば明白に物語ります。

と言う事で、今回はそんなDave Clark 51stアルバム「ステレオ盤」(USオリジナル2ndカバー)をご紹介致します。

前回は同じ1stアルバム「モノラル盤」を紹介して参りましたが、1964年当時、まだ世の主流はモノラル録音だったことから、ステレオで再生できる再生機器を持っている人も少なかったのが実情。このDave Clark 51stも、そもそもモノラルで再生される事を前提として録音されていたのですが、ここで、このジャケット上部の表記に注目しましょう!「Electronically Re-channeled for STEREO」と大きく書かれているでしょう!要するに、「元々モノラルだった録音に、後から音響処理をしてステレオっぽく聴こえるようにしました」という事なのです。日本では「疑似ステレオ」と言われていますね。ステレオが当たり前の現代では「なんだそれ?」という感じですが、当時ではさほど珍しい物ではなく、多くの「疑似ステレオ盤」がモノラル盤と共に発売されていました。

ビートルズビーチ・ボーイズでお馴染み、我らが「キャピトル・レコード」ではビーチボーイズの疑似ステレオ盤には「Duophonic」と表記されておりますので、こちらの方が馴染み深い方も多いのではないでしょうか?ちなみにビートルズのキャピトル盤にはしっかりと「ステレオ」と記載されておりましたね。

それでは針を落としていきましょう!一曲目の「Glad all over」から早速、違和感が・・・・。しかしまだその違和感の正体が分からない。音の雰囲気としてはモノラル盤より迫ってくるような迫力を感じます。試しにアンプのバランスのつまみを変えて、片方ずつのスピーカーで聴いてみる。片方では高音が、もう片方では低音が目立つようなミックスになっており、どちらか片方だけだと物足りません。なるほど、これが疑似ステレオの正体かと思いながら、再びバランスのつまみを中央に戻し聴き入る。

・・・・途中、1分12秒ぐらいでしょうか。それまで迫っていたドラムとコーラスが一旦ピタッと止まる箇所で「Stay」という言葉が「すてい・・・・・えい・・・えい・・・」と深いエコーの残響音で鳴り響きます。ここで僕は確信するのです。このステレオ盤の違和感の正体を。そう、モノラル盤と比べ、ステレオ盤は全体的に明らかに深いエコーがかけられており、それが聴く人に「迫ってくる感覚」を与えるのです。曲によって多少の強弱はあるものの、そのエコーに注目して聴き進める僕。ただ、この深いエコーや迫ってくる感覚、そして「酔った時のふわふわした感覚」は初体験では無い。以前も同じような感覚に襲われた事があるなと思いながら、記憶を遡ってみる・・・

そう。66年辺りから出始める「ガレージサイケやサイケ軍団の音」そんな質感と同質だという事に気付かされました。(このあたりのお話は後日・・・)A面、B面を聴き終え、その余韻が耳に残っているうちに、今度はすぐさまモノラル盤に針を落としてみましょう。

・・・やはり前回レビューした感想と同じく、非常にタイトなリズムの骨太なロックだと再認識です。そして今一度ステレオ盤を回してみると・・・まるで当時の若手ガレージサイケバンドの隠れ名盤のようにすら感じるのです。そんな「絶妙なトリップ感」が存在するのは大発見でしょう。このような疑似ステレオ盤が、当時のアメリカのロック少年にどのような影響を与えたかは分かりませんが、この深いエコーから生じるトリップ感覚が、数年後のサイケデリックムーヴメントの一つのきっかけになったのではないだろうか?と推測せずにはいられません。この様な発見こそRock史にとって大きなものだと研究者にとっては大いに興奮いたします!

僕自身、当時の60年代ロック盤というものは『「基本モノラル」で押さえておけばOk』と思い込んでおり「疑似ステレオ盤」という物にはそこまで着目していませんでした。しかし今回『編集長』に「コイツも聴いてみるべきだ!」と渡されたステレオ盤・・・渡された意味が聴いて初めて理解できたということなのです。

レコード会社によっても、その表記から方法論までもが大いに異なる『USステレオ盤』。盤によって、レコ―ド会社によって、ミュージシャンによって「疑似ステレオ盤」の魅力は尽きない・・・そんな奥深さを感じさせる盤となりました。

まだまだアナログ盤の世界は知らない事が多すぎます!これからも「この底なしのアナログ盤の沼にどっぷりと浸かっていかなければならない」そう感じさせる出来事でありました・・・

雨の湘南からスターマンがお送り致しました。では今日はこの辺で!ありがとうございました。

《「Starman」筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,13) Dave Clark Five『Glad All Over』(US 1st)

2025-05-19 10:57:47 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

長らくクリフ・リチャードのアルバムについて紹介してきましたが、今回、また別のブリティッシュ・ビートのバンドを紹介しましょう!「Dave Clark Five」です!往年のロックファンに彼らの名を尋ねると「ビートルズの後に出てきたブリティッシュインヴェンジョンのバンドだよね?」「デイヴクラークって人がリーダーで・・・」「Glad all overの人達だよね?」といった反応が容易に想像できます。ただ残念ながらデイヴ・クラーク・ファイヴの話なんてした事がありませんが・・・。

この様に『ビートルズと同時期』に日本でも紹介されており、その頃にレコードも出ていたので、60年代当時はそれなりの知名度があったはずなのですが、フェードアウトしていったブリティッシュ・インヴェンジョンのバンドと同様、彼らも時代と共に消え去り語られなくなってしまいました。

さて、彼ら最大の特徴は、バンドのリーダーでありドラマー『デイヴ・クラーク』が、当時では珍しく自らプロデュースをしている事にあります。そして正規メンバーにサックス奏者(デニス・ペイトン)キーボーディスト(マイク・スミス)が在籍している点も特徴的です!ギター中心のサウンドが多い当時のブリティッシュ・ビートの中で、これらの楽器がアレンジに加わる事で、圧倒的な個性となっております。

ただ、その素晴らしさは「アルバムを通して聴いてこそ!」と言えるでしょう。実際、僕も彼らの音楽をそこまで真剣に聴くことは無かったクチなのですが、今回、編集長より「バカ野朗!」のお声と共に、彼らの1964年にリリースされたUSでのデビューアルバム『Glad All Over』のステレオ、モノラル両盤二枚をGETしましたので、今回はモノラル、ステレオの二枚の聴き比べ、前編・後編に分けてお届けしたいと思います!

それでは。まずはUS Original MONO盤から早速針を落としましょう!1曲目「Glad all over」。ドラマーのデイヴ・クラーク自身がプロデュースしている事もあり、ドラムのビートがかなり強調されているのはもちろんですが、そこにサックス、さらにはメンバーのコーラスが一つの音の塊として迫っています!他の曲でもそうなのですが、ジャズではリード楽器で使われるようなサックスが、伴奏の一部として用いられているアレンジは、ビートルズとも全く異なるアプローチで、当時のブリティッシュ・ビートの中でも斬新だったのではないでしょうか?

これだけバックが重厚なサウンドですと、そこらのヴォーカリストでは負けてしまいますが、そこで鍵を握るのが、リードボーカルのマイク・スミス!彼は当時のブリティッシュ・ビートの中でも、デビュー当時からかなり「完成されたシャウタ―」と言えるでしょう。黒人音楽のフィーリングがありながらも、決してエリック・バードンのように暗くならない絶妙な存在感となっており、特にジャクソン・ブラウンやホリーズもカバーしたR&B「STAY」や、「Twist and shout」とほぼ同じコード進行かと思いきや、ヴォーカルと伴奏のパワーで全く違う曲に聴かせるオリジナル曲「No Time to Lose」など、何かが憑依したようなシャウトっぷりは、ロジャー・ダルトリー(ザ・フ―)のデビュー当時を彷彿させ・・・というか65年デビューのロジャーの方がかなり影響を受けたんじゃないか?と思うほどの素晴らしいヴォーカルなのです。

早くもデイヴ・クラーク・ファイヴのオリジナル盤にノックダウン寸前の僕ですが、4曲目で一気に雰囲気が変わります。「Chaquita(チャキータ)」1962年にリリースされたシングル盤なのですが、サウンドはラテンジャズのインストといった感じで、今まで聴いていたビートサウンドとは全く異なります。彼らがデビュー当時、どのような音楽を目指していたかは分かりませんが、デビューから数枚ジャズ寄りのシングルを出している事からも、彼らが決して「ビートルズの後から出てきた二番煎じ」ではなく、「もともとジャズを演奏していた実力者たちがビートサウンドをプレイした」という考えが正しいのではないか、と思います。

B面5曲目「Time」は更にジャズの要素が強く、2分強というコンパクトな時間に余裕たっぷりと言えるジャジーな演奏を盛り込み、聴かせます。アルバム一枚を通して聴くことで、彼らの音楽の幅広さメンバーの演奏力の高さが分かりますが、残念ながら彼らの代表曲をベスト盤などで聴いただけでは、そのヒットしたメロディだけが強調されるばかり・・・。そうなると本来の魅力が伝わり難いのも事実でしょう。やはりこの際、ぜひオリジナルのアナログ盤で、彼らの重厚でパンチのあるサウンドを手に入れる事をオススメ致します!

さあ、次回はステレオ盤のレビューをしていきますよ!どうぞお楽しみに!

《「Starman」筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,12) Cliff Richard『Cliff's Hit Album』

2025-04-26 10:49:01 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今までクリフ・リチャードのアルバム(LP)を中心に紹介して参りましたが、1958年のデビューから始まり、クリフは定期的にシングル曲をリリースしていました。僕が10代の頃に読んでいた音楽雑誌やライナーノーツ等では、よく「ビートルズ以前のロックシーンはシングル(EP)が中心で、ビートルズがコンセプトアルバムの概念を作り上げる以前、アルバム(LP)はシングルの寄せ集めに過ぎなかった」的な文章が書かれていたのをよく覚えております。それがどこまで正確な情報かは分かりませんが、ロックミュージック創成期の当時、高価なLPよりも、より安価なEPの方が、多くの若者に浸透していったことは言うまでも無いお話です。結局のところ、圧倒的完成度と統一感において「アルバムの概念を根底から作り替えたのはビートルズである」事は間違いありません。

よく当時のミュージシャンのアルバムには、ヒットしたシングル曲を目玉として、その他の新曲を収録し、アルバムを作る戦略が多かったのですが、クリフ・リチャードの場合はどうでしょうか?実は1stシングル「Move it」から、1960年の11枚目のシングル「I Love you」まで、一切アルバムに収録されていません。アルバムとシングルが完全に分けられてリリースされていた時代がしばらく続いていたのです。

なぜそのような戦略を取ったのかは分かりませんが、当時の「チーム・クリフ・リチャード」の裏方達は、アルバムを単なるシングルの寄せ集めではなく、一つの作品として制作しようとした意図があったことは感じます。じゃあアルバムに入ってないクリフのシングル曲ってどんななのだろう?って気になりますよね。そこで!今日ご紹介するのが、1963年にリリースされたクリフの記念すべき最初のベストアルバム「Cliff's Hit Album」です。

デビュー作「Move it」から1962年の「Do You Want to Dance」までのシングル曲が収録されています。と言っても、幾つかのシングルは未収録です。以前、クリフの2ndアルバム「Cliff Sings」を紹介する記事でも、「デビューシングルから数枚シングルをリリースしたが、徐々にチャートで右肩下がり」だった事を書きましたが、その低迷期の3枚のシングルが見事にカットされています。当時のEPを買わずとも、後々リリースされた編集盤で、それらの曲も聴けるのですが、決して出来が悪いのではなく、要するに収録時間や大人の事情でカットされたのでしょう!そのため、本アルバムではデビューシングル「Move it」の次に、いきなり4作目「Living doll」へ飛ぶという現象が起きています。とりあえず、この2曲だけでも十分に聴く価値があるでしょう。

1曲目「Move it」は、イギリスにおける一番最初のオリジナルロックとして、余りに重要だと、何度も何度も書いておりますが、2曲目「Living doll」における、華やかなアメリカンポップスとは異なる、シャドウズによる抑えられた演奏とクリフの囁くようなボーカルが織り成すポップ感は何ともブリティッシュで、とにかく、ビートルズ登場以前のイギリスにおいて、これほど独自の音楽を作っていたことが驚きです!

とは言え本作は決して「Move it」のようなロックンロールだけで終わらず、フォーク、カントリー、ジャズなど様々な音楽を柔軟に取り入れていた「チーム・クリフ・リチャード」の裏方達の活躍が光ります!シングル曲を集めた編集盤ですので、一曲一曲のアレンジも練られており、聴いていて全く飽きさせません。意外とポップスやアコースティック寄りの曲が続くかと思いきや、A面最後は、「火の玉ロック」「冷たくしないで」等でお馴染みOtis blackwellが書いた「Nine Times Out of Ten」、B面にはジョン・レノンやビーチ・ボーイズのカバーで有名な「踊ろよベイビー」が収録されており「最後はしっかりロックで締める」という曲順のこだわりが感じられます。

一つ残念な点は、6thシングル「Travellin' Light 」のB面としてリリースされた「Dynamite」が未収録という点でしょうか。「Move it」と同じIan Samwellによって書かれたこの曲は、クリフ・ライブの定番であり、アメリカンロックンロールのコード進行から逸脱したアレンジや、途中のブレイクなど、「Move it」の方法論を更に発展させた、ブリティッシュビート創成期の重要曲だと思うのですが・・・。

とにかく一枚では収まり切れないほど、クリフのシングル盤も奥が深いという事を改めて痛感させられる盤でしょう。クリフの入門編としても、ぜひお勧めしたい「Cliff's Hit Album」をぜひ聴いてみてください!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,11) Cliff Richard『The Young Ones』(6th Album)

2025-04-12 11:13:01 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

多くの人が新生活をスタートさせる4月!いかがお過ごしでしょうか?不安と期待が入り混じった中、満員電車に揺られる方もいれば、自転車で颯爽と街を駆け抜ける人もいるでしょう。ニュースでは、早くもメンタル不調を訴えたり、退職代行サービスが大繁盛している・・・というニュースを聞きます。僕は割と古いタイプの人間なので、「始まったばかりで何言ってんだよ!」という感じですが、こればっかりは自分で決める事ですからねぇ。色々言いたい気持ちもございますが、ここはぐっと堪え、クリフ・リチャードが初主演した映画「Young ones」(UK Org Mono盤)のサウンドトラック盤紹介しましょう!

当時の邦題は「若さでぶつかれ!」だそうで。言葉の雰囲気で適当に付けたような邦題ですが、「若いうちはとにかく何にでもぶつかって挑戦しろ!」的な、ある意味革新を付いた邦題な気もします。まずジャケットのアートワークが素晴らしい!コーデュロイジャケットに緑のネクタイでキメたクリフは最高にお洒落だし、バックのシャドウズの楽器を抱えた佇まいもすこぶるカッコイイ!右側には、映画の印象的なシーンが立てに並んでいるのですが、それらのレイアウトやロゴのデザインを含め、60'sならではのセンスがこれまた実に良い点も挙げたい!

ではそのサウンドはいかがなものか?早速針を落としていきましょう!いきなり壮大なオーケストレーションから始まる軽快なビッグバンドジャズ風なサウンド!ちなみに今回、あくまで「盤のレビュー」に徹するので、映画の内容には一切触れません。逆に言えば「映画を見ていなくても十分に楽しめる盤」となっております。

1曲目「Friday Night」の勢いのまま、間髪いれずクリフとシャドウズによる「Got a Funny Feeling」へ突入!1曲目のビッグバンドジャズからシンプルなバンドサウンドへがらっと変わる流れが素晴らしい!非常にシンプルなアレンジとコード進行のロックなのですが、敢えてシンプルに音数を少なくした無駄のないアレンジと、クリフのリラックスしながらも味わい深いボーカルの対比が素晴らしい!クリフ&シャドウズのサウンドが、ここに来て完全に確立されている事が分かりますね!そして3曲目「Peace Pipe」はシャドウズによるアコースティックなインスト。1,2曲目のテンションから一機に変化が付き、アルバムの流れとしては完璧です。続く「Nothing's Impossible」はクリフとGrazina Frameのデュエットなのですが、こちらは完全に「ジャズボーカル」です。ここで気付くのですが、このアルバムでは、とにかくビッグバンドやジャズのアレンジが素晴らしい!改めて「ロックミュージック以前の主流な音楽ってジャズだったんだな~」と実感します。発展途上で手探りな「ロックミュージック」に比べ、演奏もアレンジも仕上がっており、そこへ乗っかるクリフやその他のシンガーのボーカルも決して浮いていない。決して「ロックミュージック」ではないかもしれませんが、ジャンルを超越したアルバムの完成度としてはクリフの中でもトップクラスでしょう!そしていよいよ主題歌にしてクリフの代名詞的名曲「Young ones」の登場です!「若さでぶつかれ」という邦題の割には、声を抑えたクルーナー系のボーカルに、アコースティックメインのシャドウズの演奏が絡まる!この曲は60年代クリフの典型的なアレンジで、この路線のシングルをいくつもUKチャートに送り込むのですが、良くも悪くもこのイメージが定着してしまい、「日に日に激しいビートのロックが盛り上がる中、特に本場アメリカでは受け入れられなかったのではないか・・・」と、僕は考えております。6曲目「All for One」はこのアルバム随一のスウィングを聴かせ、コーラスグループ「Michel Sammes Singers」との掛け合いも素晴らしく、クリフのボーカルも自信にみなぎっています。このスウィング感にぐっと来た方は、ぜひぜひここからデューク・エリントンやカウント・ベイシーへと突き進んで頂きたい!さて、圧倒的テンションで終えた後、A面の最後を飾るのは「Lesson in Love」。シンプルなアコギのイントロの時点で非常に抑揚が付いています。そう!このアルバムは映画のサントラというだけあり、シャドウズだけでなく、オーケストラやコーラスグループ等、様々なバックの面々がタッグを組み、非常に変化に富んだ素晴らしいアルバムになっており、いかにアレンジが音楽にとって大切か!ということを改めて痛感します。

B面1曲目「No One for Me But Nicky」では、初めて「Grazina Frame」がリードを歌います。ニッキーは、映画におけるクリフの役名なので「私にはニッキーだけ!」という映画の1シーンが浮かびます。2曲目はメドレーになっており、落ち着いたジャズアレンジで始まります。このアルバムにおけるクリフのボーカルは、どこか「明るいチェット・ベイカー」という感じで彼自身が誰を意識していたかはわかりませんが、初期のプレスリーの真似をしていた時期を考えると、いかに短い期間で自分のスタイルを確立していったかが分かります。3曲目「When the Girl in Your Arms Is the Girl in Your Heart」はベスト盤に必ず入る程の初期クリフを代表するバラードで、シンプルなアレンジだからこそボーカリストの技量が問われる曲なのですが、クリフは堂々と歌い切ります。続く「Mambo: a) Just Dance」では堂々とラテンを取り入れており、特に中盤のパーカッションソロは、UKオリジナル盤で聴くと、まるで目の前で叩いているようなダイレクト感です。5曲目「The Savage」は久々にシャドウズのアップテンポなインスト。ハンク・マーヴィンのギターはもちろん、「Tony Meehan」のドラムが特に素晴らしい!このアルバムにおけるビッグバンドの流れで聴くと、彼のドラム・ルーツがジャズである事がよくわかります。そして最後「We Say Yeah」のシンプルで短いロックンロールで畳みかけるように終焉を迎えるのです。

このアルバムはジャズからロック、ラテン等、とにかく変化に富んでおり、色んな音楽の要素が絶妙に絡みあっています。ここから、今まで聴いていなかったジャンルへ進むきっかけになるのではないでしょうか?冒頭で少し触れましたが、「新生活」に中々馴染めず悩みが絶えない人もいると思います。「若さでぶつかる」勇気を持てない人もいると思いますが、じゃあ家に帰ってちょっとレコードに針を落としてクールダウン、なんてのもいいのではないでしょうか?新たな盤に針を落とせば、いつでも「新生活」。音楽が、皆さんの肩の重みを、少しでも取り去ってくれると良い」と心から願っています。長くなりましたが今日はこの辺で!「アナログ盤にぶつかれ!」

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,10) Cliff Richard『21 today』(5th Album)

2025-03-22 10:12:23 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

挨拶も省き早速ですが、今回もクリフ・リチャードの素晴らしいアルバムをご紹介いたします!

『1961年の10月14日』クリフ21歳の誕生日にリリースされたのが、こちら『21 today』(UK Org MONO)!

自身の誕生日にリリースというのが、いかにもティーンアイドルらしい売り方なのですが実際、1曲目にはご家庭でもお馴染み「ハッピーバースデイ」をシャドウズが演奏する1分30秒程のインストが収録されています。とはいえ、決して企画物のアルバムではなく、2曲目以降は非常にクオリティの高い曲が続いていきます。

実はこのアルバムの半年前に4thアルバム『Listen to Cliff』がリリースされたのですが、こちらはカバー曲が中心で、どこか軽く作られた印象でした。僕の推測ですが『そもそも61年のクリフの誕生日に記念アルバムを出す事が先に決まっており、ただ、それだと余りに前作から間が空きすぎてしまう為、「穴埋め的」に出したのが「Listen to Cliff」だった』のではないでしょうか。いくら欧州で大ヒットを飛ばしている当時のクリフとは言え、その人気がいつまで続くか読めないのも事実。「人気があるうちに出来るだけ売ろう」というのがレコード会社の本音でしょう。今となっては真実は分かりませんが、逆に本作『21 today』「チーム・クリフ・リチャード」が一丸となり、気合を入れて制作したのが良くわかるのです。下の自信みなぎるクリフの写真がソレを表しているところでしょう!

では早速針を落としてみましょう!1曲目が前述の「Happy Birthday to You」。一瞬で終わるインストですが、ハンク・マーヴィンのギターの音色が実に美しい!続く「Forty days」チャック・ベリーのカバー曲となりますが、いきなりノックダウンされます!原曲はスタンダードな早めのブギーですが、シャドウズのメンバーはそれを全く別のアレンジで演奏しており、特にドラムのトニー・ミーハンによるフロアタムを中心に低音を生かしたジャングルビートに近い躍動感のあるリズムは出色!もう、これだけで十分「ロック」しているのです!本作以前の彼はどちらかというと、ボーカルやギターを生かすような、抑え気味のプレイが多く、フィルインもジャズに近い物でしたが、今作では随所でロックなドラムを披露しています。当時のリンゴ・スターも、もしかして彼のプレイを参考にしたのかな・・・と思うと、わくわくしちゃいますね(笑)。そして間奏でのハンク・マーヴィンのギターソロも素晴らしい!ジョージ・ハリスンキース・リチャーズエリック・クラプトンも世に出てない1961年当時「一体誰を意識したらこんなプレイができるんだ!」というぐらい、「かっこいい」ギターソロです。

この1曲を聴いても分かるとおりシャドウズ各メンバーによる演奏やアレンジの飛躍を感じる点が本作の大きな特徴でしょうが、もちろんクリフのヴォーカルも負けてはおりません。3rdアルバム以降、少しずつ自身のヴォーカルスタイルを確立していったクリフですが、スローバラードでは、声に抑揚が無く単調に聴こえていたのも事実。しかし、本作ではヴィブラートを多用する等、表現力が格段に上がっているのです。収録曲的にはロックな曲とスローなバラードが半々ぐらいですので、ちょうど2ndの『Cliff sings』に近い肌触りなのですが、完成度が格段に違います!僅か2年でここまで成長するとは!」とついつい声が出ます。改めてこの様に時系列でアルバムを聴くからこそよく分かることでしょう。

さて!ここからは個人的に重要な曲を簡単にレビューしていこうと思います。A面8曲目『Poor Boy』はこの後の彼のヒット曲の中心となる「アコースティックなポップス」の典型とも言える曲で、肩の力を抜いたスウィートな唱法は「これぞクリフ・リチャード」と言った感じでGoodです。

B面1曲目はシャドウズのメンバーによるオリジナルですが、アレンジはラテンミュージックです。特にB面はアレンジ面でもバラエティに富んでおり、聴いていて本当に楽しい内容です。3曲目の『二人でお茶を(Tea for two)』は、ビング・クロスビーデューク・エリントンなどなど・・・、もう数え挙げたら切りが無いほどのジャズ、ポピュラー音楽におけるスタンダード曲なのですが、ここではジャズの要素を取り入れ、非常に雰囲気のあるアレンジを施しています。前回の記事でも書きましたが、アメリカ人がこういう曲を演奏するとなると、先人へのリスペクトが強すぎて「しっかりジャズをやろう」となりがちですが、それを「何となくジャズっぽく」演奏できる感じが当時のイギリス人ミュージシャンの強みだったのではないでしょうか?

このアルバムで、クリフは初のUKチャート1位を獲得!時はビートルズがデビューする1年前!このアルバムの後、「自身が主演する映画」の主題歌を歌い、そして「サントラを出す」というプレスリー路線で更に勢いづくクリフですが、それはまた後々書いていこう思います。ブリティッシュ・ビートの原点であり、84歳となった現在も活躍を続けているイギリスのスーパースター「クリフ・リチャード」。ぜひこの機会に聴いて頂ければ嬉しいです。

と言うことで、まだまだ次回も続きます!お楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『スターマン☆アルチ』所有『僕のRockアイテム』(その2) 1973年製 MORRIS 「MJ-200」

2025-03-08 12:01:28 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回のクリフ・リチャード3rdアルバム記事(お読みで無い方はコチラ→https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/599a42eb24ee3dadfb5329496b69628d)が好評だったとの事。本当にありがとうございます!これからもクリフはもちろん、僕が愛して止まないブリティッシュ・ビートの魅力をどんどん紹介していきたいと思います!

・・・ですが、今日はギターについて書きたいと思います。最近、編集長の記事でもモーリスについての研究が進んでいる事が紹介されており、僕自身も前回、「森平社長ラベル」のモーリス12弦ギターについて書いたところです。(コチラも是非お読み下さい→https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/8d77394570ef2893f7220eef48ffce04

この様に「コンディションの良い、大当たりのMorrisの素晴らしさ」を12弦にて感じていた頃、本紙編集会議要請にて編集長に呼び出された僕、いそいそと編集部でもある「ジェリーズギター」へ繰り出して行き、そこで発見したのがこちら!Morris製「MJ-200」です。

その特徴的なジャンボサイズのボディとピックガードの美しい模様から、完全にあのGibsonの名器「J-200」のコピーモデルということが分かります。「おお~まさかMorris、こんな物まで作っていたとは!」と思わぬ不意打ちによろめく僕。「Gibson J200」言わずと知れたGibsonアコギにおける最上位モデルであり、ボブ・ディランジョージ・ハリスン、ニール・ヤング等、数々のロックレジェンド達が愛用していたモデルなのです。個人的にはボブの「ナッシュビル・スカイライン」のジャケットが一番印象強いですね!

こうなると、もちろん僕にとっても憧れのモデルなのですが、当時のビンテージは3桁はくだらない中々の価格・・・すぐ手が出る代物ではありません。そんな「J-200のコピーモデル」なので興味は増すばかり。ラベルを覗いてみると、やはりここにも、燦然と輝く「森平社長」のサインが!

確かに全体的に作りもしっかりしており、状態も良く、木目も美しい・・・・思わず手に取り弾いてみる僕。なんとも澄んだ美しい音が鳴ってくるではありませんか。すぐ「当たりのMorris」である事を直感したのです。

ただ、まだ弦を張り替えてまもないことや、僕自身、このギターの個性(どんなプレイスタイルに向いているか)を十分に捉え切れていない事もあり、完全にボディが鳴っていない印象でした・・・が、音の雰囲気から、今後どんな風に鳴っていくかは何となく分かりましたし、何より、あの憧れの「J-200」と同じ形をしているのです。「これは誰にも渡すわけにはいかない!」と意気揚々と家まで抱えて帰り、その日からジャンジャカポロポロと奏でていたわけです。

「弾いていればどんどん鳴ってくるよ!」と編集長も言っていた通り、弦も馴染み、僕自身もどう弾けば、良い音がするかを少しずつ分かってきた事もあり、毎日少しずつ音にツヤと深みが出てきている印象です。僕は本家J-200を所有していないので、レコーディングや試奏なんかの印象でしか語れませんが、ジャンボサイズの割には音量は大きくなく、どちらかというと繊細な美しい音のする本家J-200。こちらのMorrisもその音に似せようとしているのか、どちらかというと繊細な響きです。ストロークで激しくかき鳴らしても、低音も丸く深みがあり、逆に高音の部分の音量が抑えめの調整なのか、ストロークの際、激しくストロークをしても、音がまとまり、とても上品に美しく聴こえます。これこそが、当時のMorrisが目指した音なのでしょう!そしてどれだけ本家J-200に近づけようとしているかという、努力と苦悩が分かります。

ライブで使うとなると環境を選ぶかもしれませんが、家で一人奏でるには最高の一本と言えます。とは言え、まだまだ僕自身には扱いきれていない・・・というか「もっと良い音が出るだろう」というのが現時点での結論です。繊細な音だからこそ、プレイヤーのタッチがそのまま出るので、ある意味では難しいギターですが、だからこそ、毎日弾いていると新たな発見があり楽しくなります。

今日も一人、この「MJ-200」をつま弾きながら、もうすぐ遠くへ旅立ってゆく「あの子」を思い浮かべ、曲を書く・・・。そんな最近のスターマン★アルチでした!さあみんなもLet's Play Guitar!

今日はこの辺で!ありがとうございました!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,9) Cliff Richard『Me and my shadows』(3rd Album)

2025-02-23 10:59:30 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回、クリフ・リチャードの2ndアルバムを紹介する際、「まだまだ成長段階の記録」と書きました。(お読みで無い読者様は以下をどうぞ!)

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/1dc372021a75436d40f0e38460259559

じゃあそもそも「これこそがクリフだ!」みたいな決定的な盤があるのか?という話になるのですが、なにしろ1958年デビューから2025年現在67年ものキャリアを誇る彼。スタジオアルバム(LP)だけでも50枚近くをリリースしているのですから、当然「決定的で良い盤」がいくつもあります!ただ、本コーナーはあくまでも、後のビートルズ等へ続く「ブリティッシュ・ビートの元祖」としての視点でクリフを紹介していますので、その時代の音楽の流れを時系列を踏まえて書いております。その上で言っても、確実に「クリフ・リチャードの決定版」と言えるのが、今日紹介する「Me and my shadows」です。「Me and my shadows」(UK Org MONO)

さてさて、1959年にヨーロッパ全土で記録的大ヒットとなったシングル「Living doll」により、超売れっ子シンガーとなったクリフですが、その後出したシングルもすべてイギリスで3位以上!相変わらず、向かうところ敵なしの絶頂期の中リリースされ、イギリスのチャートで2位を記録した盤が本作なのです。

その内容ですが、まずはタイトルに注目!「Me and my shadows」バックバンドのシャドウズの名前を敢えてタイトルに入れている!なぜだろう?レコードに針を落とし、ハンク・マーヴィンのジャックナイフのような鋭い切れ味のリードギターと共に始まるサウンドに酔いしれながら、裏ジャケットの各曲のクレジットに目を通すと、そこにはシャドウズのメンバーの名前が記載されているではありませんか!そう!このアルバムでは計6曲でシャドウズのメンバーがオリジナル曲を書いているのです!そして、「イギリス人最初のロックンロールソング」としてお馴染みクリフのデビューシングル「Move it」の作者であるイアン・サミュエルが4曲を提供!

つまり、この時点で非常にオリジナリティ溢れるアルバムに仕上がっているのです。これは僕の持論ですが、カントリーやブルースといったルーツミュージックが根付いたアメリカにおいては、その音楽をそのままプレイし、受け継いでいく土壌があるのだと思います。ですが、イギリス人からしたらそれは「海外の音楽」です。そこで、そのエッセンスを吸収しながら、「どうやってそこに変化をつけていくか」という事を。クリフやシャドウズ、裏方は意識していたのではないでしょうか。そのまま演奏したのではただのコピーになってしまいますからね。

たとえば、ブルースの基本的なコード進行(E-A-E-B7-A-E的なやつ)の中に、「ちょっと違うコードを入れてみよう」とか「進行を逆にしてみよう」とか「一回途中でブレイクしてギターリフを入れてみよう」そうやって、いかに「アメリカのルーツミュージックから変化を付けるか」というアイディアが、この時期のイギリスにおけるロックミュージックのポイントなのだと思います。ブルースやジャズ、カントリーへのリスペクトがあるからこそ、その路線から「抜け出せなかったアメリカ人」と、それらをすべてフラットに見て、純粋に「良い音楽を作り出そうとしたイギリス人」。1960年代初頭においては、その図式を強く感じさせます。

その最たる例が「ビートルズ」であることは言うまでも無いでしょう。その革新的サウンドがアメリカへと渡り、その後のアメリカのロックミュージックが盛り上がっていくわけですが、今回のアルバムがリリースされたのは1960年の10月ビートルズがデビューする2年も前のお話しなのです。そんな早い段階で、イギリスにおけるロックミュージックの礎が作られていたわけです。

クリフは1stアルバムでプレスリーやカール・パーキンスらの王道ロックンロールを演り、2ndアルバムでは、ちょっとカントリーに寄せながらシナトラ的ポピュラーミュージックに接近してみた・・・コレは裏方も含めた「チーム・クリフ・リチャード」の意向なのですが、それらを踏まえて、このアルバムでは、「自分達が出来る最善の音楽」に落ち着いた感じがあります。

クリフのボーカルも、誰かを真似ることはなく、いたってリラックスして歌っています。このアルバムにおける、彼の「敢えて声を張らない唱法」が、後のボーカルスタイルへと繋がっていきます。16曲と非常にボリュームのある曲数ですが、エレキギター主体の曲と、アコースティック主体の曲が入り交じっており、特にB面ではそれが顕著です。とにかくアコギのサウンドが美しい本アルバムですが、そこから徐々にベース、ドラム、エレキギタが加わりサウンドに変化をつけるアレンジは、小学生の時、初めて「ラバーソウル」を聴いた時の感覚を思い出しました。

後のブリティッシュビート勢は、デビュー前、間違いなくこのアルバムを聴いたことでしょう。後へ続くイギリスのロックミュージックの原点として、個人的にはこのアルバムを重要盤だと位置付けます!そして、純粋にシンプルな「グッドミュージック」として、このアルバムを皆さんにレコメンドしたい!そう強く思うスターマンであります!次回も続きますよ!お楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,8) Cliff Richard『Cliff Sings』(2nd Album)

2025-02-09 10:29:28 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

久しぶりに再開するRock盤コーナー、引き続き今回はクリフ・リチャードの2ndアルバム「Cliff Sings」(UK Org MONO)をご紹介します。

このアルバムがリリースされたのは、今から66年前の11月。レコードに針を落とす前に、まずは当時の彼の状況について軽く触れておきましょう。1958年にシングル「Move it」で鮮烈なデビューを飾ったクリフ。この曲は2位まで上昇し、前回紹介した1stアルバム「Cliff」も4位まで上昇しました。この勢いで快進撃を続けると思いきや、その後、何枚かのシングルを出しますが、その度にチャートの順位は下がっていきます。

「次こそヒット曲を出さねば」という状況の中、クリフは「Serious Charge」という映画に脇役として出演し、そのテーマソングを歌う事になります。それがあの「Living doll」す。この曲は1959年にイギリスではもちろん、多くのヨーロッパ圏で1位を獲得する超大ヒットとなり、彼の人気を確実な物とします。ただその曲調自体、ロックンロールのワイルドさは無く、アコギメインの非常にシンプルなポップソングとなっており、当時のクリフは、ミュージシャンというよりは「いわゆるティーンアイドル」的な位置づけに定着してしまいます。

これは本人の音楽的思考と言うより、レコード会社、プロデューサーの戦略が強く反映されていたのでしょう。バックにシャドウズという圧倒的な「本物のロックバンド」がいたからこそ、今でもブリティッシュロックの元祖として名前は残っているものの、もしシャドウズの存在が無ければ、単なるティーンアイドルとして短命に終わっていたのかもしれません。さて、続くシングル「Travellin' Light/Dynamite」も1位を獲得し、向かうところ敵なしの状況でリリースされたのが、今日紹介する「Cliff sings」なのです。

では、針を落としてみましょう!いきなり「Blue Suede Shoes」そう!カール・パーキンスの代表曲からスタート!シャドウズの非常に抑えの効いた演奏にのってクリフは歌いますが、この曲における彼の歌い方は完全にプレスリーを意識しております。続く「The Snake and the Bookworm」「I Gotta Know」では、「ロックンロール」というより「カントリー」に近いアレンジが続きます。早くも前作から方向性を変えてきたか!と思った矢先、突然ストリングスの音が聞こえてくるではありませんか!そう!5曲目「I'll String Along With You」では、シャドウズではなく、プロデューサーである「Norrie Paramor」のオーケストラをバックに歌っているのです!そこにはロックンロールの面影はなく、パット・ブーンやアンディ・ウィリアムス等のポピュラーシンガーを意識していることがが分かります。

これは僕の推測なのですが、当時のレコード会社の戦略として「ロックミュージック」はこれ以上流行らないと判断したのではないでしょうか。と言うのも当時、ロックの本場アメリカでは、「リトル・リチャードが牧師になるため引退」「バディ・ホリーの死」「プレスリーの徴兵」等により、少しずつ勢いが失われており、よりポップなティーン向けのサウンドが少しずつ台頭し始めます。そこに目を付けたレコード会社が、早い段階で、クリフにロックのイメージを脱却させ、カントリーやフォーク、ポップス等様々なジャンルを取り入れていたのではないかと思います。

確かにその後数年、ポップス路線によって何曲ものシングルで1位を獲得した彼なので、ある意味では、その裏方による読みは正解だったのかもしれません。しかしこの流れは、ご存知1962年にビートルズがデビューした事で一気に流れが変わってしまいます。ここを話し出すともっと長くなるので、それはまた別の機会にお話ししましょう。

さて、盤の話に戻しますが、オーケストラを従え、アメリカのポピュラーソングを歌うには、当時のクリフでは明らかに技量不足というか「歌わされている感」が否めません。後々の彼の活躍を考えれば、このアルバムにおける「新たな試み」は必要だったのかもしれませんが、聴き終えた感想としては、「もっとロックが聴きたい!」という気持ちになることでしょう。僕のようなクリフ・リチャード好きからすれば、「まだまだ成長段階の記録」として「持っていても良い」とは思いますが。「これから初めてクリフを聴いてみよう」という読者の方には、別のアルバムをおすすめします。ちなみにこのアルバムも、当時イギリスで2位まで上昇しているので、いかに当時の彼が人気者だったのか!が良くわかります。ここから、クリフ・リチャードの音楽はどのようになっていくのでしょう!

では、次回もお楽しみに!

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『スターマン☆アルチ』所有『僕のRockアイテム』(その1) 1973年製 MORRIS B-20ー12弦ギター

2025-01-19 12:07:06 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

12弦ギターが好きだ!

唐突にすみません。今年からはギターなどのMYコレクションなどもドンドンと書いていこうと思う『スターマン☆アルチ』です。今年もご愛読よろしくお願い致します。ということで「良いんですよね~。12弦ギター。」と、ついつい呟く僕なのですが、皆さんはいかがご想像しますでしょうか?あまり馴染みのない方もいると思いますので、簡単に説明するとしましょう。要するに通常の倍!12本の弦が張られているギターなのです。

1弦と2弦には同じ弦が張られますが3~6弦には1オクターブ上の弦が張られています。「なんでそんなことするの?」と言われますと、「とにかく音の広がり方が欲しい!」という場合に多用することが多く、ロッド・スチュアート1971年の大ヒット作『Every picture tells a story』のイントロを聴いて頂ければ一目瞭然なのです。この曲でこそ「最も分かりやすく12弦ギターの持つ甘美な音を味わう事が出来るはず」なのです。

とは言え、多くのロックファンにとって、12弦ギターを知るきっかけとなったのはジョージ・ハリスンビートルズ第一弾映画『A Hard Days Night』で演奏していた『リッケンバッカー360』である事は間違いないでしょう。あの映画を見たロジャー・マッギンが、その影響で同じギターをすぐさま手に入れ、バーズを結成したのはあまりにも有名なお話です。

他にもレッド・ツェッペリンジミー・ペイジが持つダブルネック『GIBSON EDS-1275』も片方が12弦ですし、ビーチ・ボーイズカール・ウィルソン『エピフォンのリヴィエラ12弦』を愛用していました。ただこれらは全てエレキギターでして、それに対し、あまり語られる事が少ないのがアコギの12弦と言えるでしょう。では「なぜなのか?」

そもそも現在では、圧倒的にプレイヤーが少ないコイツ!その一番の原因として、コンディションの維持の難しさがあるのではないでしょうか。僕自身かつて『SUZUKI VIOLIN』『エピフォン』のアコギ12弦を所有しておりましたが、当時から弦高が高く、弾きづらかった記憶があります。当たり前なのですが通常の2倍の弦が張られているので、当然ネックに張力が加わり反りやすくなります。しかも大きな調整が必要になるとギターは手放され残りにくい・・・その結果、弾きやすい弦高で、ある程度鳴る物が少ないという結果となるわけです。コンディション維持こそ12弦アコギの一番難しいところでしょう。

ただ、長い音楽の歴史を振り返ってみれば、意外と使用しているミュージシャン、曲が多い事に気付きます。前述の通り、初期のロッド・スチュアートのアルバムで多く使われ、フレッド・ニールピートシーガ―などのアメリカンフォークの方々も愛用しています。その性質上、ソロが弾きにくくストロークがメインのアコギ12弦ですが、ブラインド・ウィリー・マクテルのようなギターソロとヴォーカルを同時にやってしまうような別格な黒人ブルースマンも存在します(オールマンブラザーズのステイツボロ・ブルースの作者としてもお馴染みですね)

ただ僕個人がこのアコースティック12弦にこだわる理由は、何を隠そうデヴィッド・ボウイに他なりません。『スターマン』という名を借りているように、僕の中では圧倒的な存在のデヴィッド・ボウイなのですが、初期から近年のライヴやレコーディングまで、彼自身一貫してアコースティック12弦を奏でているのです。初期の曲『Quicksand』や1999年の『Seven』でも分かるように、ボウイは12弦の研ぎ澄まされた美しさを上手く取り入れております。あまり語られませんが、実はボウイはかなり12弦の音を好んでいた事が分かります。

さて、そんなわけで愛すべきアコースティック12弦なのですが、弦高の高さから、所有していた物はすべて手放し、何年も経っていました。「なかなか良い状態の12弦ってないですよね~」と随分前から編集長に話していたのですが、ある日、編集会議のためジェリーズギターを訪れたところ、こちらの『Morrisの12弦ギター』に出会ったのです。弾いてみると、とにかく弾きやすい!そして音の広がりも素晴らしい!「長年僕が求めていた音だ!」と、ようやく出会えたようなギターにワクワクし、すぐさま手に入れた次第です(当ギターについては後日編集長に細かく解説していただく予定です)。

何でも12弦ギターを愛用するミュージシャンが実際に使用していたとの事で、調整も行き届いており、長年弾かれているだけあり、ボディ全体で音が鳴っているのが良くわかります。まだまだ腕のおぼつかない僕には扱いきれない代物ですが、これからもこちらのギターで精進し、名手を目指したいと思います。「いや~、12弦ギターって本当に良いですね~。」と大御所映画評論家風に書かせて頂き、今回はペンを置きます。

「皆さんもぜひ一度コイツを手にして頂けると嬉しい限りです。」

では次回もお楽しみに!

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,7) Cliff Richard『Cliff』(1st Album)

2024-12-28 10:41:28 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

クリフ・リチャードは60年以上のキャリアを誇り、84歳の今でもバリバリ現役で活動を続けるイギリスの大御所シンガーです。そんな彼の伝説の始まりとも言える1stアルバム「Cliff」をご紹介しましょう。

無地の背景にリーゼントヘアで決めたクリフ・リチャードが写った非常にシンプルなジャケット。コレが登場した1959年というと、まだまだエルヴィスエディ・コクランと言った50年代ロックンロールの影響が強い時期!ジャケットからもそれをヒシヒシと感じますよね。先の通り1959年「クリフ・リチャード&ザ・ドリフターズ」名義でリリースされた本作。「えっドリフターズ?」と、ついつい違うグループを思い浮かべてしまう方もおられると思いますが、実はこちら、後に「シャドウズ」と改名され、クリフのバックバンドとしてはもちろん、後に単独でもヒットさせる名うてのインストバンドなのです。

前置きはコレくらいにして、さあ針を落としてみましょう!最初に聞こえてくるのは歓声。そう!この「Cliff」はデビュー作にして、いきなりのライヴレコーディング!レコード会社の力の入れようを強く感じますね!シャドウズの抑えられた演奏のイントロから若きクリフの、少々荒々しくも勢いのあるボーカルが飛び出して来ます。曲自体は、エルヴィスやリトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイス等の定番曲のカバー曲ばかりですので、初めて聞く方でも馴染みのある曲が多く楽しめるはず。そこに、1958年にリリースされたクリフの1stシングルであり、恐らくイギリス初のオリジナル・ロックンロール・ソング「Move it」そして、シャドウズによるインストが2曲収録されており、アルバムに変化を付けています。

驚かされるのは、とにかく僕が持つこのUKオリジナル盤(マザー1、スタンパー両面1桁盤!)「音が良い!」。録音はもちろん、バンドの各楽器の音が、65年前とは思えない程クリアですぐそこで演奏している様な身近さに感じられます。特にハンク・マーヴィンのリードギターはどうでしょう!エフェクターを使わないクリーンな音の美しさはもちろん、曲の合間で飛び出すジャックナイフのような切れ味は、クリフのヴォーカルと並び、このアルバムのもう一つの主役と言っても良いでしょう!もちろんベースやドラムも一味違います。

一見、アメリカのロックンロールをそのままコピーしているのかと思いきや、ベースは時々ルート音から外れた異なるフレーズを奏でていますし、ドラムのフィルインなんて、ロックンロールと言うよりはジャズの影響を強く感じます。様々な音楽の素養が彼らの中で上手くミックスされており、アメリカのロックンロールから逸脱したサウンドに目を見張ります。図式としては、「19歳のクリフ・リチャードを支えるベテランバンド・シャドウズ」かと思いきや、改めて調べてみたらみんな同年代という事実・・・19~20歳ぐらいの当時のイギリスの若者が、ここまで完成された独自の演奏をするとは・・・・頭を抱えざるを得ない僕であります。

ちなみに本アルバムはイギリスのチャートで2位まで上昇していますし、その後も同じ名義で数枚のベスト10ヒットを放っています。ビートルズを始めとする後のデビュー組も、当時彼らの演奏を相当参考にしたことでしょう。正直なところ、クリフのヴォーカルは、19歳という若さもあり、後のような深い表現力は見られず「エルヴィスの影響を受けたちょっと歌の上手い若者」といった感じです。ライヴ・レコーディングなので、より声の細さが際立ちますが、それでも「自分の好きな音楽を思いっきり歌う」という勢いや、音楽としての純度の高さは猛烈に感じさせます。

彼のキャリアの前半は「シャドウズ」に支えられている部分が大きく、シャドウズに関してはエリック・クラプトンジョン・レノンも影響を口にしているように、イギリス初の本格的ロック・バンドとして高い評価を得ています。しかし、この盤の主役である「クリフ・リチャード」の名がロック史で語られる事はほとんどありません。それは、彼が純粋なシンガーであり、ほとんど作曲をしない事(ライヴではギターは弾きます)、後の音楽性がロックからポップス寄りになった事、アメリカで全くと言って良いほどヒット曲が出なかった事・・・などが挙げられます。

とは言え1958年に、アメリカのカバーではない純粋なイギリス人によるオリジナル・ロックンロールソング「Move it」を歌い、シャドウズと共にブリティッシュ・ビートの礎を気付いた功績はあまりにも大きい!と僕は考えます。そして「もっと評価されても良いのにな~」と、もどかしさを感じつつも「だからこそ今!」という熱い思いでいっぱいです。「さあ、今こそこのクリフ・リチャードを聴いておくんなましぃ!」

と少々取り乱した僕ですが、本紙連載では来年もクリフ特集を大いに続けさせて頂きます。実は昔から彼の事が大好きで、長いキャリアの彼だけにアルバムの数も膨大。その音楽も幅広くバラエティ豊かなのですが、まずはロックな連載だからこそ初期盤に焦点を絞り、順を追いながらレビューして行こうと思います。英国ロック創世記にはクリフがいた!皆様もこの1stアルバムからどうぞ!勿論CDも出ていますが余裕のある方は「UKオリジナル盤」をぜひ!

と言うことで、僕の原稿も今日で本年度はラストとなります!ご愛読に感謝の上、良いお年をお迎え下さいませ。そして、次回からも何卒お楽しみになさって下さい!

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『Starman』が選ぶ『Rock今夜の1枚!』(Vol,6) Gerry&The Pacemakers『Second Album』(US)&『Ferry Cross the Mersey』(カナダ)

2024-12-14 10:58:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回も引き続きジェリー&ザ・ペースメイカーズの盤をご紹介します!ビートルズ同様リヴァプールの出身であり、ビートルズと同じマネージャー、プロデューサーによって見出され、ファーストシングルの「How do you do it」いきなり全英1位と華々しくデビューした彼ら。今回はそんな彼らのアメリカでの2ndアルバム、タイトルはそのまま「Gerry and the Pacemakers' Second Album」(US Org MONO)になります。

それでは早速、針を落としてみましょう!1曲目の「I Like it」イギリスでの2ndシングルで、なんと、こちらも全英1位に輝いております。「How do you do it」と同じく、作者はミッチ・マーレイ。1stシングルの勢いをそのまま、同じ路線のポップロックに仕上げており好感が持てます。ちなみにこのミッチ・マーレイと言う人は、当時の様々なビートグループに曲を提供しており、オリジナル曲を書ける人が少なかった当時のブリティッシュビート界においては貴重な存在だった裏方のひとりです。2曲目以降はアメリカのR&Bのカバーを中心に収録されているのですが、基本的にUKデビューアルバムからの未収録曲が収録されています。それ自体は当時としては珍しい話ではないのですが、たとえば前作のようなジョージ・マーティンによるオーケストラのような革新性はなく、カントリーやR&B等、アメリカのルーツ色の濃い選曲となっております。USオリジナル盤の音の良さとダイレクト感は十分に感じられるのですが、前作が素晴らしかった分、若干パワーダウンした気はいなめません。

ただ、その中でボーカル&ギターのジェリー・マースデン「It's happend to me」「It's all right」と2曲のオリジナル曲を書き、バンドとしての進化を見せます。ちなみにB面のラスト2曲は「Slow down」「jambalaya」と、それぞれ後にビートルズやカーペンターズも取り上げた曲。あれ?これ聴いたことあるぞ!と突然の「デジャ・ヴ」に襲われ、思わず前作のUSファーストアルバムを見ると、なんと全く同じ曲が収録されているではありませんか。いくら短い期間でリリースされたとは言え、前作と2曲も曲が被ると、さすがに当時のファンも黙ってなかったんじゃないのかな~。その心配は的中し、なんとこちらのアルバムはアメリカのチャートで129位までしか上昇せず・・・早くも苦境に立たされたジェリー&ザ・ペースメイカーズ。「このまま消えてしまうのか!」と頭を抱える僕。ここで次のアルバムを紹介しましょう!こちらは翌年1965年にリリースされた「Ferry Cross the Mersey」で、USのUAレコード盤とは違いジャケがカッコイイ!そんなカナダ・キャピトルから出されたオリジナル盤からのレビューです。曲含め内容はUS盤と同じなのですが、マニアックな僕はついついコレを推してしまうのです。

こちらはメンバー達が主演を務める同名映画のサウンドトラック盤なのですが、12曲中9曲がジェリー&ザ・ペースメイカーズ(しかも全てオリジナル曲)、そしてもう1曲はプロデューサーのジョージ・マーティンのオーケストラによる作品なので、実質彼らのオリジナルアルバムと言えるでしょう。針を落とした瞬間、「It's Gonna Be Alright」のアコースティックギターによるフォーキーながらもテンションの高いマイナー調のイントロで、明らかに「違い」を感じる僕。まず違いの一つはジェリーのヴォーカル。今までの明るく楽観的な雰囲気はなく、終始、緊張感の高い演奏となっております。バンドの演奏もアコースティックギターの比率が増えています。しかし、アメリカのカントリーミュージックとは異なる、イギリスならではの何処か湿った感じが何とも切なく心地よいのです。映画のコンセプトによる部分もあったのかもしれませんが、あえてアメリカ的な部分を排除し、ブリティッシュトラッド的なアプローチがふんだんに取り入れることで、結果的に彼らの新しいスタイルを開拓する形となっております。

B面はさらにその傾向が高くなり、予想外の「美しい音楽」にため息がでる僕。4曲目のみイギリスのシンガー「シラ・ブラック」が歌っているのですが、こちらも同じくアコースティック路線の美しいバラードで、とにかくアルバムとしての統一感が素晴らしい。最後の曲は、映画のタイトルと同じ「Ferry Cross the Mersey」。アコースティックギターと微かなパーカッション、そしてジョージ・マーティンによる美しいオーケストラが織りなすこの曲はアルバムのベストトラックと言えるでしょう。

ここで僕は、ボブ・ディラン2020年にリリースした17分にも渡る「最も卑劣な殺人(Murder Most Foul )」という曲を思い出さずにはいられないのです。ケネディ大統領暗殺事件を主軸に、ビートルズビーチボーイズを始め黒人音楽Jazz、クラシックにいたるまで、様々なミュージシャンや曲名が歌詞に登場する大名曲です!その中でボブは「マージ―河のフェリーボートに乗って、みんなを虜にするよ」と歌っているのです。2020年のボブあえてジェリー&ザ・ペースメーカーズの曲名を歌詞に入れるぐらい、当時は印象的な存在だったのだと改めて実感した次第です。

さて、オリジナル9曲という圧倒的な存在感を見せつけた彼ら。チャートでも、イギリスで19位、アメリカで13位とかなりのヒットとなりました。よく考えてみたら、USのセカンドアルバムの多くは既にレコーディングされた曲を集めた「編集盤」と言える内容なので、このサントラまでの合間を埋める「繋ぎ」だったのかもしれません。残念ながら、このサントラ盤は彼らにとって「最後の輝き」となってしまいます。その後、数枚のアルバムを出しながらも人気も音楽もフェードアウトしていきます。いつの時代でも、「長く成功し続けるというのは本当に難しいもんだなぁ~」とひとり口にする僕。

しかし皆さん!サッカー・イングランドプレミアリーグの名門「リヴァプールFC」の試合では、すべてのサポーターにより今でも彼らの「You'll never walk alone」がスタジアムで大合唱されている事実をご存知か?!そう!「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」の音楽は今でも確実にその姿を残しており、イギリスだけでなく世界中の多くのサッカーファンの耳にも自然にすり込まれているわけです。ぜひ皆さんも今こそ「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」の音楽に、針を落としてみてはいかがでしょうか?特にサッカーファンの君やサッカー少年・少女たち、そしてその親御さんにこそ入り易い!(笑)

と言うことで、今日はこの辺で失礼いたしましょう。次回もお楽しみに!

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『Starman今夜の1枚!』(Vol,5) Gerry&The Pacemakers「How do you like it?」&「Dont let the sun catch you crying」

2024-11-24 11:55:07 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回ご紹介するのは「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」です!この名前に「聞き覚えがある」と言うあなた!そして「無い!」とキッパリと言い切るあなた!どちらにも分かりやすくお伝えしますので、どうぞ引き続きお読み下さい!

まず彼らは、あの「ビートルズ」や、前回紹介した「サーチャーズ」と並び、リヴァプール出身であり、彼らと同様にデビュー前にドイツのハンブルグで数多くのギグをこなした修行バンド軍団の1つなのです。残念ながら当時活躍した数多くの「ブリティッシュ・インヴェンジョン」バンドと同じく短命で終わってしまいましたが、あえて今こそ!彼らの魅力について語りたいと思います。

「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」は、リードヴォーカル&リードギターの「ジェリー・マースデン」と二歳上の兄でドラムの「フレディ・マースデン」を中心に結成されました。重要な点は、なんと!マネージャーがビートルズと同じ「ブライアン・エプスタイン」という点!そしてプロデューサーも、これまたビートルズと同じ「ジョージ・マーティン」!と言う事で、今ではビートルズと比較され「二番煎じ」と結論付けられている彼らなのですが、決してそんな事はありません!今回はUKデビューアルバム「How do you like it?」

そして、USデビューアルバム「Dont let the sun catch you crying」

両盤を聴きながら、彼らのオリジナリティ溢れるサウンドについて解説したいと思います。

彼らの特徴の一つは、当時のロックバンドでは珍しく「正規メンバーにピアニストがいる」という点ではないでしょうか。たとえば初期のビートルズではピアノの音が入る際は、プロデューサーのジョージ・マーティンが弾いていますし、その曲数も限られています。アニマルズデイヴ・クラークファイブでは、ピアノではなく、電子オルガンが取り入れられており、その音色はピアノよりも上で鳴っているフワフワしている印象です。他のバンドでは、リズムギターがビートを刻むのに対し、「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」では、鍵盤弾きの「レス・マクワイア」がその役を務めています。ほぼ全曲で「ピアノ」が演奏されるそのサウンドは、演奏だけを聴くと、例えばビッグ・ジョーターナーマディ・ウォーターズのような感じにも取れ、非常に興味深いです。ピアノの特性上、左手で低音(ベース音)を弾き、右手でメロディを奏でる事が出来ますので、そのピアノと、エレクトリックベースでのダブルの「ベース音」を奏でることで音に厚みが増しています。それにより、ジェリーがバッキングからリードギターに切り替わっても、音がすかすかに鳴らず、終始素晴らしいグルーヴで演奏されているのです。

聴けば聴くほど、非常に計算されたアレンジである事が分かります。1963年に発表されたこのUK盤デビューアルバムは他のバンド同様、やはりカバー曲が中心なのですが、イングランドの名門サッカーチームである「リヴァプールFC」の応援歌「You never walk alone」は現在でも歌い継がれる余りにも有名な名曲ですし、他にもジャニス・ジョプリンもカバーしたジョージ・ガーシュインの「Summertime」等、R&Bやブルースとは異なるジャンルを取り入れております。しかも当時のロックバンドでは珍しくストリングス(弦楽器隊)が加わっている点も見逃せません。これはジョージ・マーティンの手腕によるところが大きく、彼の仕事の深さを感じ取れる良い仕事と言えるでしょう。他にも黒人音楽のジャンプ・ブルース的なアプロ―チと、白人のミュージカルポップス的なアプローチが絶妙に混ざり合っており、アルバム全体として変化に富んだサウンドとなっております。

とは言え、やはり「ストリングス」についてもう少し掘り下げて行くべきでしょう。ビートルズが初めてストリングスを取り入れた曲が1965年の名曲「Yesterday」となることを考えると、前述プロデューサーのジョージ・マーティンが、実は1963年時点で、既にロックとストリングスの融合を色々と試していた・・・という事実、これこそが後のビートルズ・サウンドを見る上でも実に興味深い仕事であり、重要盤と言えるでしょう!ちなみにこの2曲におけるレス・マグワイアピアノプレイは本当に素晴らしく、いかに彼がアメリカのジャズブルース・ピアノを聴きこんでいたかが手に取るように分かります!そんなピアノ・プレイもピアノ弾きには注目して聴いて欲しいです。

さて、このアルバムの翌年、1964年に発売されたアメリカでのデビューアルバム「Dont let the sun catch you crying」となります。UK盤と重複する曲が多いものの、UK盤では1曲しか存在しなかったオリジナル曲が5曲にまで増え、彼らの才能の開花を感じさせる盤に仕上がっています。特にタイトル曲であり、当時の大人気番組「エド・サリヴァン・ショー」でも披露されたオリジナル曲「Dont let the sun catch you crying」や、ジョージ・マーティンの勧めでビートルズがレコーディングし、リリースする予定だったものの、ビートルズが『Please Please Me』を仕上げて来た結果「ペースメーカーズ」に渡され、その結果イギリスで1位を獲得した「How do you do it」など「名曲ぞろい」の盤なのです

その他にもB面後半の「Slow Down」では、ピアノとギターが凄まじい音圧で迫って来て仰天!さらにその後「Show me that you care」ではブギウギピアノのフレーズに全く新しいリズムを載せた斬新なオリジナル曲収録しており、最後まで飽きさせず、油断のできない名盤に仕上がっています。デビューアルバムとしての完成度や満足感を言えは、個人的にはコチラのUS盤に軍配を上げたいと思います

カントリーからR&B、ミュージカルなど様々な音楽を取り入れ、しかもレス・マグワイアの素晴らしいピアノ・プレイによって、当時の他のバンドとの差別化が出来たバンド「ジェリー&ザ・ペースメーカーズ」。彼らもまた60年代初期の「ブリティッシュビート」における「語り継がなければいけないバンド」だと言えるでしょう。

それでは次回もお楽しみに!

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,4) The Searchers『Sugar & Spice』(UK) &『Meet The Searchers』(US ver)

2024-11-10 12:32:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回に引き続き、60年代ブリティッシュビートのいぶし銀的バンド「サーチャーズ」をご紹介します!まずは1963年にパイレコードからリリースされたイギリスでの2ndアルバム「Sugar & Spice」(UKオリジナルMONO盤)です。

前回紹介した1stアルバム同様、60年代特有のレトロな雰囲気のバンドロゴに、収録曲が散りばめられ、中央には同じポーズで佇む4人組というカバーデザインが実にPopですね。サウンド面でも1stアルバム同様「ポップで親しみやすい曲たち」が並びます。このアルバムの一カ月後には、ビートルズの2ndアルバム「With the beatles」がリリースされるのですが、こちらのジャケットは有名な「ハーフシャドウ」と呼ばれる顔の片方にのみ光を当てたクールで渋い印象の白黒写真となっており、レコード会社の違いはあるものの両バンドの売り出し方というか戦略も随分と分かれてきていたように感じます。

さて、では針を落としてみましょう。1曲目は1963年にイギリスで3位まで上昇した3rdシングルでありタイトル曲「Sugar & Spice」です。ベース&ヴォーカルの「トニー・ジャクソン」のハイトーンの甘いヴォーカルに、サーチャーズの抑えられた演奏が響きます。1stアルバムから4カ月後という、今では考えられないハイペースで録音、リリースされたものですが、当時の他のロックバンドの流れと同様全体的によりラウドになって来たように感じます。その後も彼らお得意のR&Bカバーが続きますが、聴いていくうちにある変化に気付きます。「あれ?1stアルバムとボーカルが全然違うぞ!」そうなんです!1stアルバムでは12曲10曲でトニー・ジャクソンがリードヴォーカルを取っていたに対し、この2ndアルバムでは、リードギターの「マイク・ペンダー」が8曲でリードボーカルなのですよ(ダブルボーカルを含む)彼のハスキーで低めのボーカルこそが、この2ndアルバムでの最大の変化であり、彼らの新たな魅力となっているのです。トニーのボーカルは、その声質通り、R&Bの激しい演奏に対し甘くポップになり過ぎる部分があるのですが、ここにマイク・ペンダーという全く声質の異なるボーカルが混ざり合う事で、非常に美しいハーモニーとなっています。その部分に注目すると、よりこのアルバムを楽しめるでしょう!そして、今も当時も珍しい「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」がリードを取る「Ain't That Just Like Me」こそ、個人的に言えばこのアルバムのベストトラックでありましょう!最初からゴスペルのように3人のボーカルが掛け合い、そこにラウドな演奏が絡み合います。特にトニーによる高音部のコーラスが素晴らしい!彼のハイトーンボーカルの魅力がコーラスでこそ発揮される事がよくわかります。途中で少しテンションを落としてから再び盛り上がる演奏等、いかに彼らが数々のギグをこなし、鍛えられて来たか・・・を物語っています。

さて、このアルバムの4カ月後、ついにアメリカでのデビューアルバム「Meet The Searchers / Needles And Pins」Kappレコードからリリースされます。(写真はUSオリジナルMONO盤)

まずはジャケットに注目でしょう!スーツ姿で微笑む4人組の姿は、明らかにビートルズを意識させますが、イギリス盤と比べて、スタイリッシュでクールな印象を受けます。裏ジャケットには各メンバーの年齢や身長、体重、目や髪の色なんかも紹介されており、彼らがアメリカにおいて「どのような売られ方をされていたか」が分かり興味深いでしょう。

それでは針を落としてみましょう。まず注目は、当時の最新シングルであり、タイトル曲の「Needles & pins」です。シェールとのデュオでお馴染み「ソニー・ボノ」が書き、フォークシンガーの「ジャッキー・デシャノン」が録音したフォーク・ソングですが、サーチャーズはこれを見事にロック・サウンドにアレンジしているのです!ドラムのリズムやギターのフレーズ。そして抑えられた演奏等「ビートグループの一つの典型」とも言えるアレンジでしょう。フォーク・ロックの先駆けとも言える演奏で、アメリカでシングル発売され13位まで上昇したヒット曲でもあり、当時最大の人気番組である「エド・サリヴァン・ショウ」でも演奏されています。80年代以降のアメリカンRockをリードした「トム・ペティ&ハートブレイカーズ」も、後にこの曲を取り上げていますが、明らかにサーチャーズのアレンジを参考にしており、サーチャーズのサウンドが後のロックに少なからず影響を与えている事が分かります。アルバム自体も全米で22位まで上昇しており、決して長くは続きませんでしたが、アメリカでもイギリスでもサーチャーズの人気のピークだったのがこの時期と言えるでしょう。

ちなみにこちらのアメリカ盤1st。ジャケットはもちろん収録曲もイギリスとは全く異なっており、イギリス盤の1st、2ndからアメリカで受けそうな曲をチョイスし、さらに1曲目に「まだアルバム未収録だったシングルを追加した内容」となっている独自盤です。その為、全体的にアップテンポでロックな曲が多く、さらにUS盤特有の音圧の高さやラウドさが加わり、非常に魅力的な盤に仕上がっております。バンド自体のオリジナリティという点では「いかがなものか?」と言うマニアも居るようですが、一つのパッケージとして考えればこのアメリカ盤1stにサーチャーズの魅力が詰まっており、軍配が上がるでしょう!

当時のレコーディングはほぼ一発録りでライブ録音に近く、彼らの演奏力の高さや、エレキギターのクリーンな音の美しさがよくわかります。今聴いても、純粋に「かっこいい!」と思わせるサウンドに心躍ります。現在では時代に流され、マニア以外ではまったく語られなくなったバンド「サーチャーズ」。私は推さずにはいられないのです!ぜひとも「オリジナル・アナログ盤」で聴いて頂き、あなたの音楽ライフを豊かに過ごして頂ければ嬉しく思います!次回もお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,3) The Searchers『Meet the Searchers』(UK Ver) &『Hear Hear』(US)

2024-10-27 12:55:12 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回も、時代の波に流され、忘れ去られてしまった「ブリティッシュ・ビート」のバンドをご紹介致しましょう!その名は「サーチャーズ」! 今では、というより随分前から全く語られることがなかったバンドなのですが、僕は彼らの事が昔から大好きです!とは言え、今まで生きて来て「サーチャーズイイですよね!」といった様な会話をした事は一度もなく今回は良い機会ですので、この場をお借りして、彼らの基本情報オススメの盤をご紹介していこうとうと思います。

ザ・サーチャーズリヴァプール出身の4人組です。出身地と言い「ベース、ギター2本、ドラム」という4人編成と言い「メンバー全員が歌える」点、そして、デビュー前にハンブルグのスタークラブにて修行巡業ライブを行っている点などなど、何かと「ビートルズ」との共通点が多い彼ら1963年にUKパイレコードから1stシングル「Sweets for my sweet」にてデビューしております。パイレコードと言えば「キンクス」となるでしょうが、彼らキンクスは1964年デビューですので、当時のブリティッシュビートグループの中でも、実はこのサーチャーズ、かなり早いデビューと言えるでしょう。それでは1963年の記念すべき1stアルバム「Meet The Searchers」(UKオリジナルMONO盤)に針を落としてみましょう。

前述のドリフターズのカバーであり1stシングルの「Sweets for my sweet」から始まります。多くの曲でリードヴォーカルをとる「トニー・ジャクソン」は、その高く甘い歌声が特徴なのですが、もう一つ注目なのは、彼の奏でるEpiphoneのRivoliベース(セミアコベース)のサウンドなのです。これはUKオリジナル盤で聴いたからこそ気づく音なのですが、ソリッドボディのベースとは異なる少しこもった音色が、少ない音数でも抜群の存在感を放っており、サーチャーズ・サウンドひとつの特徴となっております。そこにリードギターの「マイク・ペンダー」、リズムギターの「ジョン・マクナリー」という2本のギタリスト、最後は「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」のシンプルでありながらここぞのフィルインで存在感を放つドラム、そこに乗っかってくる全員が歌える強みを生かしたコーラス!さらに付け加えて言うならば、やはりUKオリジナル盤だからこその「ダイレクトな音圧」が素晴らしい!

ビートルズと同じくハンブルグ修業をしていただけのことはあり、1stアルバムからコーラスも演奏も圧倒的に完成されている事が分かります。選曲も「Money」「Stand by me」「Twist and shout」など定番のR&Bから、サザンオールスターズもカバーした「恋の特効薬(Love Potion No. 9)」など、当時のアメリカのヒット曲を忠実にカバーしており、なおかつ日本でも有名なピート・シーガ―のフォークソング「花はどこへ行った」もプレイされているところも注目のポイントでしょう!ザ・バーズより早い段階で、フォークソングをバンドで演奏する「フォークロック」的なアプローチを1963年時点で行っている点はロックの歴史上でも非常に興味深いですね。

このアルバムは当時イギリスでは2位まで上がる大ヒットを記録し、その後も数枚のアルバムをリリースしておりますが、残念ながら徐々にチャートの順位は下がり人気もフェードアウトしてしまいます。改めて彼らのアルバムを聴いてみると、たとえばエリック・バードン(アニマルズ)のような黒いボーカリストがいるわけでも、前回ご紹介したフレディ&ドリーマーズのような強烈なコミカルさもありません。ピーター・ヌーン(ハーマンズハ―ミッツ)のようなアイドル的なキュートなルックスもなく、アラン・プライス(アニマルズ)イアン・マクレガン(スモールフェイセズ)の様な意表を付いた変化を付けられるような鍵盤弾きもバンドにはおりません。黒人R&Bを中心に演奏していながら、どこか英国的で抑えられた演奏に終始するのが魅力なのですが・・・。しかし彼ら最大の弱点は楽曲がカバーのみで構成されており、オリジナル曲を書けなかったという事実でしょう。それこそがグループを短命に終わらせてしまった理由の一つだと思います(一応ドラムのクリスが1965年のアルバムで数曲オリジナルを書いていますが、そこまでのヒットはしませんでした)。そう書きながらも、今回はもう一枚「Hear Hear」(USオリジナルMONO盤)も併せてご紹介したいのです!

こちらは前述して来たとおりデビュー前の1963年に行われたハンブルグ「スタークラブ」での修行公演をレコーディングしたライブ盤なのですが、後のガレージロックに通じる、ロックのダイナミックさや熱気が込められており「エフェクターも使っていないのに4人だけでここまでのグルーヴが出せるのか!」と彼らの演奏力の高さを痛感します。音楽ですらテクノロジーに依存し過ぎている・・・そう思われる読者様には新鮮に響く盤と言えるでしょう。こちらのライブ盤「UKオリジナル盤(フィリップス)」は19曲入りの2枚組みで、既にレア盤となっており、見かけなくなって参りました。今回のUS盤はそこからセレクトし1枚にまとめた盤(残りの音源はラットルズとのカップリングで後発されています)となりますが、内容的にもプライス的にもコレで十分!と言えるでしょう。お聴きになる読者は本盤を見つけて、ぜひ聴いて欲しいところです。

ちなみに余談ですが、後のロックシーンにはほとんど爪痕を残すことが出来なかったサーチャーズなのですが、実はドラムの「クリス・カーティス」は、サーチャーズ脱退後の1967年「ラウンドアバウト」というバンドを結成しております。このバンド、後にジョン・ロードとリッチー・ブラックモアが加入し、「ディープ・パープル」としてデビューする事になるのですが、クリス自身はデビューを待たずして失踪し、音楽業界から引退したそうです・・・サーチャーズや彼が居なければパープルも誕生していなかった!コレちょっとしたポイントですよね(笑)

そんなわけで素晴らしい演奏力とグルーヴを持ちながらも、同年代に活躍したバンドと比べ、いまいち個性もカリスマ性もなく、オリジナル曲を書けない弱点のため65年を最後に消えてしまったサーチャーズ。ここまで書くと全く良い印象を持たれないかもしれませんが、ビートサウンドの典型とも言うべき、バランスの取れた演奏とコーラスワークこそは一種の「職人芸」とも呼べる魅力があり、バンドマンや僕のように「刺さる」人も多く存在しているのも事実!かなり玄人的なバンドですが、ぜひこの機会に聴いてみて頂ければと思います。今夜はコレら2枚を聴いてグッスリ眠らせて頂きましょう!ではまた次回をお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,2)『Freddie & The Dreamers』1st LP(CANADA Ver)

2024-10-13 11:46:12 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

本日ご紹介するLPは、前回に続き『フレディ&ザ・ドリーマーズ』です。今回は1965年にリリースされたカナダ盤の『1st』です!

リード・ヴォーカルの『フレディ・ギャリティ』をセンターにバックを取り囲む4人の寝巻姿の男達。『ドリーマーズ』とは文字通り『夢見人』なので、その名の通りの何とも強烈なジャケットです。

さて、このジャケットでピンと来た方、そう!1963年に本国イギリスにて『コロンビア(EMI系列で米コロンビアとは別レーベル)』からリリースされたデビューアルバムと同じものです。じゃあ、それをそのまま『カナダ・キャピトル』(アメリカでのEMI系列と言えば大手レコード会社である『キャピトル』である)から出したのかと思いきや、大幅に収録曲が変更されて出されており、驚かされます。

まあ、これに関しては、あのビートルズストーンズですら、アメリカで独自に曲を変更して発売されていたので、当時のイギリス勢ミュージシャンが、いかにアメリカで切り売りされていたのか・・・を表すエピソードでしょう。しかもこの時期のアメリカではLPは『基本的に12曲入り』とされていたので、12曲で1枚を作り、アルバム数が増える傾向にあり、このカナダ盤もそこを踏襲しているのです。

しかし『フレディ&ザ・ドリーマーズ』はさらに不遇な扱いでして、1965年に『カナダ・キャピトル』からこのアルバムが出た同年、今度はアメリカで『マーキュリー』という『キャピトル』とは全く違う非EMI系列のレコード会社からリリースされており(前回紹介した盤です↓)

https://blog.goo.ne.jp/12mash/c/aee0236baf9a20ec664e0757ca4e4a07

曲もこのカナダ盤と3曲ほど重複しています。逆に本作収録の大ヒット曲「I'm telling you now」はアメリカでは『タワーレコード』というキャピトルの子会社的レーベルから同じ65年に出されており、見事に全米1位に輝いております。ちなみにカナダでもこの曲は1位を獲得しているんです!(本国イギリスは2位)

曲の権利とか云々は一体どうなってるんだという感じですが(この辺りは本紙「編集長」と会議したいところですが・・・)、今となっては当時の明確な情報が無いので筆者にはよくわかりません。ただ、彼らはの音楽は『一時(いっとき)の流行り』であり、「短い間にさっさと売り切ってしまおう!」というレコード会社の意図は透けて見えます。

では、そんな彼らの音楽はどうだったのでしょうか?それは盤に針を落とせば良くわかります。当たり前ですが1965年当時のオリジナル盤で聴いてこそ!しかも本家UK EMI直のマスターを使用しているので『カナダ・キャピトル』からの本作は圧倒的に音が良い!

この『フレディ&ザ・ドリーマーズ』ビートルズの少し後でデビューした「ほぼ同時期のバンド」であるにも拘らず、リーダーの『フレディ』は1936年生まれと『ジョン・レノン』より、4つも年上という事実!そう考えるとこの時点で「実は中々のベテラン」と言って良いでしょう。

当時のブリティッシュ・ビート勢と同様にブラックミュージックの影響を多分に受けており、そこまでビートを強調してもおらず、ドラム、ベース、2本のギターと時折加わるアコーディオンは、ボーカルやコーラスを引き立てる為の非常にシンプルな物です。どちらかと言えば「50年代のアメリカン・ポップスやドゥワップ的なアレンジ」が目立ちます。

彼らはこの後、ビートルズストーンズも出演した、アメリカにおいて成功のカギとなるTV番組「エド・サリヴァン・ショー」にも出演し、アメリカで一定の人気を得るのですが、それは彼らの「アメリカン・ポップスをバンドでやってみました」的なサウンドと、22歳で急死した伝説のロックン・ローラー「バディ・ホリー」を意識したフレディのルックス、そして動き回るダンスがアメリカで受け入れられた要因だと筆者は結論付けております!

このアルバムに収録されている「Do the freddie」と並ぶ彼らの代表曲「I'm telling you now」は彼らの魅力を凝縮した素晴らしい曲で、たった2分間ですが、クリーントーンのごまかしのないギターサウンドはシンプルで美しく「当時のエレキギターってこんな美しい音なんだ・・・」と純粋に溜息が出るほどです。ここぞのタイミングで味のあるフィルを入れるドラムも、なんともツボを押さえていイカシております。ドラムに合わせてギターのストロークの強さを変える『ライブ1発録音』も実に良く、バンド全体で演奏の抑揚を付けている点が、アナログ・オリジナル盤だとより一層ダイレクトに伝わるのは当然でしょう。これがデジタルになった途端「すべてが平坦に聞こえ、ただの耳障りの良いポップスにしか聴こえない・・・」そうなると?そうです。残念ながら聴かれずに、消えていく音楽となってしまうのです。特に60年代のロックミュージックというものは、アナログ・レコードで聴かないと「その本来の音が埋もれてしまう」ものなのです。

「I'm telling you now」のほかにもB面1曲目「I love you baby」ではチェット・アトキンスばりのカントリー奏法が聴かれ、ビートルズのカバーでもおなじみ「Money」「Some other guy」も、これまた全く違う解釈で演奏しており興味深い仕上がりで、彼ら独自のポップ感覚が感じられます。聴けば聴くほど、彼らの音楽的な素養の深さや、バンドとしての演奏の巧みさを印象付けられますが、そんな実力があっても、後々「Do the freddie」に代表されるコミックバンド的な要素を取り入れなけば行けなかったのが、彼らのセールス的な苦境を映し出した部分でしょう。

ただ、このアルバムに関して言えば、純粋に音楽で勝負をしており、演奏にもその緊張感が伝わります。そういったバックグラウンドを知ると、「I'm telling you now」にも明るさの中にもどこか「切なく甘酸っぱい・・・」そんな当時にタイムスリップしたような感覚に包み込まれます。

ブリティッシュ・ビートの入り口に、まずは「フレディ&ザ・ドリーマーズ」をアナログ盤でぜひ聴いてみて欲しいです!次回もお楽しみに。

《Starman★アルチ筆》

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