ハイ!読者諸賢!ハウリン・メガネである。
本来なら毎月最終土曜日は編集長と私の「マシュメガネ対談」がスケジュールされているのだが今月は諸般の事情により来月第二土曜掲載予定に変更。入れ代わりで毎月第二土曜連載の当コラムが今回に回る形と相成った。ご容赦願いたい(ま、入れ代えた理由は前回の対談をご覧頂いていれば予想はつくでしょう。来月をご期待あれ!)
では早速今回のお話だ。
突然だが、皆様方、家で音楽を聴くときにどんな聴き方で、どんな格好で聴いているだろうか。
ソファでくつろぎながらヘッドホン?ベッドの上でイヤホン?それはそれで構わないが私はスピーカーで空気を震わせた音を聴きたい男である。
ヘッドホンやイヤホンで聴く人の気持ち、環境の問題も分かるが、個人的に音というのは多少スピーカーと耳の距離を離した方が気持ちいい音になり易いように思う。ギターアンプもそうだが、空気の振動する空間を置くことで響きが豊かになるように思うのだ。
そしてそんなスピーカー派の人間にとって問題となるのが己のポジショニングの問題である。
いつも同じリスニングポジションをキープする為にスピーカーのど真ん前云メートルに椅子を固定しているようなオーディオマニアの人は置いておいて、私のようにスピーカーの前で聴いたり、立ってギターを弾きながら聴いたり、聴きながら「あ、コーヒー飲みてぇ」と、コーヒーを淹れに立ったりとフラフラしてしまうタイプにはどの場所で聴いてもある程度バランスよく聴こえるようにしたいわけだ。
となるとスピーカーの前が一番ベストのポジションとして、それ以外の位置で聴いたときもある程度良く聴こえるようにスピーカーを配置すべきなのだが、面倒くさい事に盤によってローが強かったり、繊細な音が多かったりと振れ幅が大きいせいで一概にここでOK、という判断が中々できない(スピーカーの置き場でローが強くなったりするんです
、ホント。壁の近くとかね)。
そういう時にプロの音響屋さんが鳴らすのが「リファレンスディスク」というもの。
これは「これを鳴らしてバランスを整えればどんな曲が流れても大体OK」という基準にできる曲、アルバムのことで、そんな中でも定番作品として有名なのが……
ナイトフライ/ドナルド・フェイゲン
でございます!
はい、スティーリー・ダンの片割れ、ドナルド・フェイゲンの1stソロアルバムですが、この作品、リファレンスディスクとして業界内では定番中の定番となっているほどバランスの取れたミックスがなされた作品で、私も部屋の模様替えをした際には大体こいつを回しながらスピーカーの配置を考えております
(なおスティーリー・ダンのエイジャ、ガウチョもリファレンスディスクとしてよく挙がる作品)。
曲はスティーリー・ダンでもお馴染み、フェイゲン印の超クールなAORなのだけど、とにかく各パートのバランスが美しい。
ラリー・カールトン、リック・デリンジャー(g)、アンソニー・ジャクソン、マーカス・ミラー、エイブラハム・ラボリエル(b)、ジェフ・ポーカロ、ジェイムス・ギャドソン、スティーヴ・ジョーダン(dr)、マイケル・ブレッカー(sax)といった一流セッションマン達の音をパズルのように組み立てたこのアルバムは各パートの音がきちんと整頓されつつも、スタジオの空気をまるっと集音したように全ての音が小気味よく鳴るといういぶし銀の魅力溢れる唯一無二の作品となっとるわけです(これ、実は無茶苦茶難しい事で、マットな音色をマットなまま気持ちよく聴かせたり、派手になりがちな音(例えばホーンセクション)を派手さは活かしつつ喧しくならないようにしたりというのは本当に限られた作品でしか聴けないんですぞ。ちなみにスティングのナッシング・ライク・ザ・サン辺りもそういう音作りでバランスもいいんだけど、圧が強めでリファレンスとしてはナイトフライのほうがベターというのが個人的な見解)。
アルバムとしても超良作であり、それだけでも推せるが、ここは是非スピーカーを鳴らして私のいっている事を体感して頂きたい。
これで調節するとホントにバランスよくなるから!
以上、ちょうど部屋の配置を見直していたハウリンメガネでした。
さらば諸君!また次回!
《ハウリンメガネ筆》