永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(480)

2009年08月18日 | Weblog
09.8/18   480回

三十五帖【若菜下(わかな下)の巻】 その(34)

柏木は自身でも、

「まことにわが心にも怪しからぬ事なれば、気近く、なかなか思ひ乱るることもまさるべき事までは思ひもよらず、(……)一行の御返りなどもや見せ給ふ、あはれとや思し知る」
――まったく自分でも、はなはだ、怪しからぬ行動だとは思っているものの、このように宮に近づいて、その後却って余計煩悶することになるとは思いもよらず、(蹴鞠の日に御衣の端だけお見上げしたものを、もう少しお側で拝見し、心の内を申し上げたなら)たった一行のお返事位はくださるだろうか、可哀そうだと思ってくださるだろうか――

 こう思いつつお出かけになったのは、

「四月十余日ばかりの事なり」
――四月十日過ぎのことでした――

 明日は賀茂の斎院が、祭りに先立って御禊(みそぎ、ごけい)を行われる儀式のために、源氏方からお手伝いの為に差し上げる女房たち十二人、その他銘々が、明日を楽しみに支度やら化粧やらで、女三宮のお部屋は人少なでひっそりしております。

「近く侍らふ按察使の君も、時々かよふ源中将せめて呼び出させければ、下りたるままに、ただこの侍従ばかり、近くは侍ふなりけり」
――いつもは近くに侍ろう女房の按察使の君(あぜちのきみ)も、時々通ってくる源中将という者から呼び出されて局に下りてしまった間は、ただこの小侍従だけが女三宮のお側に控えているだけでした――

小侍従は、

「よき折と思ひて、やをら御帳に東面の御座の端にすゑつ。さまでもあるべき事なりやは」
――この時こそ良い折と思って、そっと柏木を女三宮の御帳台(高貴な方の寝所)の東側のご座所の端にご案内しました。それにしましても、これほどお近くにご案内する法があるでしょうか――

ではまた。



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