永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(77)

2008年06月13日 | Weblog
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【須磨】の巻  その(7)
 
 須磨のお住いは、行平中納言の家の近いところで、入り江に入って山の中のわびしいところです。良清が手際よくご領地(荘園)の管理人を召して、ほんの短期間に立派に邸を作らせました。遣り水、植木もそろっていよいよ落ち着かれるお気持ちは夢をみているようです。

良清の父が播磨守で親しく心をお寄せになれますが、
「はかばかしう物をも宣ひ合はすべき人しなければ、知らぬ国の心地して、いとうもれいたく、いかで年月を過さましと思しやるる」
――源氏は、しっかりとご相談相手になるような人もいないので、知らぬ国に来たようで気が滅入って、どのようにこれからの月日を過ごしたものかと思いやられます――

 ようやく落ちつかれた五月の長雨の頃、源氏は京のことをしきりに思われます。まず紫の上のお嘆きの様子、春宮のこと、夕霧の無邪気な戯れなど…と。
紫の上と藤壺の宮へのお文では、何度も書き直されては涙にかきくれるのでした。

藤壺宮へは
「松島のあまの苫屋もいかならむ須磨の浦人しほたるるころ」
――須磨の浦にいる私が涙がちに過ごすときに、入道の宮(藤壺)はどんな思いでお暮らしになっておられるでしょう――

尚侍(朧月夜の君)には、女房の中納言に私信のようにして、同封して、
「こりずまの浦のみるめもゆかしきを塩焼く海女やいかが思はむ」
――こうして須磨の浦に来ましても、性懲りもなくあなたにお目にかかりたく思っていますが、塩焼く海女ならぬあなたはどのようなお気持ちですか――
(「こりずま」に須磨を、「みるめ」に海松布ミルメと見る目をかけた)

(作者のことば)このように様々な思いを書き尽くされた御ことばをご想像ください。

左大臣にも、大宮にも、夕霧の乳母にも文を出されました。

 受け取られた京の人々は、それぞれにお心の乱れる方が多うございました。

 二條の院の君(紫の上)は源氏を見送ってのち、そのまま起き上がれないご様子です。恋しさのますます増していく思いで、女房たちもお慰めしようもなく心細く思い合っております。

◆紫の上を、ここではじめて「二條院の君」と表現。源氏不在の二條院の確たる「主人」の地位を示す。

◆写真:現在の須磨の海岸

ではまた。



源氏物語を読んできて(女房の日常 伏籠)

2008年06月13日 | Weblog
女房の日常 伏籠(ふせご)

 王朝文学によく描かれるお馴染みの生活習慣で、火取香炉の上に伏籠を被せ、その上に装束を掛けて、内側から上がってくる香りを布に染み込ませます。

◆写真は レポートby 明さんより

源氏物語を読んできて(女房の日常 寝姿)

2008年06月13日 | Weblog
女房の日常 寝姿

 1人の女房が裏返した袿を引き掛けて眠っています。
これは「夜の衣返し」と呼ばれる当時の俗信で、夜着を裏返しに着て寝ると、恋しい人の夢を見ることができると信じられていました。
板床に畳の上、直に寝ています。

◆写真は 渡殿で寝る女房  レポートby 明さんより