永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(67)

2008年06月04日 | Weblog
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【賢木】の巻 (15) 

 左大臣邸の三位中将(以前頭の中将・故葵の上の兄)の正妻は、右大臣の四の君ですが、絶え間がちに通っては冷淡にあしらっておられたので、右大臣は婿君にはお数えにならず、
「思ひ知れとにや、この度の司召しにも漏れぬれど、いとしも思ひ入れず」
――思い知れというつもりか、この度の昇進にも漏れてしまいましたが、たいして気にもなさいません――

 三位中将は、源氏でさえもこうなっておいでなら、自分などは当然と諦められて、源氏邸に行かれては、昔のように競い合って学問、音楽をご一緒にされます。
春秋の御読経、学者を集めての詩作などに夢中になって、内裏へも出仕されず遊びほうけていらっしゃるのを、
「世の中には、わづらはしき事どもやうやう言ひ出づる人々あるべし」
――世間では、うるさい批評など、だんだんと言い出す人があるでしょう――

 このようなお遊びと、饗宴を何日も続けておられましたのは、夏の雨がのどかに降り続くころでした。

 その頃、朧月夜の君は里下がりをなさっておいででした。熱病が長引いておりましたが、どうにか病が癒えて、右大臣邸の人々はみなうれしく安心されました。
源氏とこの姫君は、
「聞え交し給ひて、理なきさまにて夜な夜な対面し給ふ……」
――めったにない機会なので、二人しめし合わされて、分別もなく夜ごとお逢いになります――

源氏は女盛りの朧月夜の君が、病の後の少し痩せられたのも魅力的だとお思いになります。

姉君の弘徴殿大后も同じ所にお住いなので、本来恐ろしいことですが、
「かかる事しもまさる御癖なれば、いと忍びて度重なりゆけば……」
――源氏はこういう無理な逢瀬をこそ、余計に好まれる御癖でいらっしゃるので、忍び逢いを重ねておいでです。(気づいて居る女房たちも事が面倒になりそうなので、大后には告げる人がいません)――

 ある暁に、にわかに雷雨となって、お屋敷中大騒ぎに女房たちも怖じ気づいておいでのところに父右大臣が渡ってこられて、姫君の様子をご心配なのでしょうか、いきなり朧月夜の君の寝所の御簾を上げてお入りになります。源氏はお忍びのどさくさの中でも、婿として大事にしてくれた左大臣の振る舞いと比較されて、この右大臣の軽率さに思わず苦笑なさって。

 右大臣は、尚侍(朧月夜の君)が、顔を赤らめていざり出られるその様子が、妙で、またお熱が上がったのかとか、修法を延そうかなどと仰って、ふと目をやると
「薄二藍なる帯の、御衣(おんぞ)にまつはれて引き出でられたるを見つけ給ひて、あやしと思すに、また畳紙の手習ひなどしたる、御几帳の下に落ちたりけり。」
――紅花と藍で染めた帯が、尚侍のお衣裳にまつわりついて引かれてきたのを見つけられて、怪しまれますになお、ふところ紙にうたなど書いたものが、几帳の下に落ちていたのでした――

ではまた。




源氏物語を読んできて(二藍)

2008年06月04日 | Weblog
薄二藍なる帯

二藍(ふたあい)について

 二藍は「藍」と「紅(くれない)」をあわせて掛け合わせた色のことです。「くれない」とは「呉(中国)の藍」のことで、当時「藍」は染料全般を指す言葉だったようです。

 この二種の染料の掛け合わせ具合で色は大きく異なります。一般に若いほど紅が強く、年齢が上がるほど藍が強くなったようです。紅を一定にして、藍の量を2~4倍にしていった場合、このような色の流れになるでしょう。

 二藍といってもこのように一定ではありません。

◆写真:二藍の濃淡

源氏物語を読んできて(御読経)

2008年06月04日 | Weblog
◆御読経(みどきょう)

例:中宮による季の御読経
  私邸でも規模を縮小して行うことがあったようです。

・時期:春と秋の年2回、それぞれ朝廷の御読経の数日~数十日後
・期間:4日間
・場所:後宮の中宮御座所。但し里邸の例もあり
・僧の人数:20人
・参列者:公卿・殿上人(初日と最終日)
・内容:初 日…発願、読経、行香、饗宴
    第二日…(不明)
    第三日…論議
    最終日…結願、賜度者、賜禄、饗宴

◆ 写真・レポートby 明さんより