永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(80)

2008年06月16日 | Weblog
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【須磨】の巻  その(10)

 花散里からは、源氏を偲んで涙にくれています、というお文がありました。源氏は後見のない御邸を思い、急いで京の家司に命じて花散里邸の修理に当たらせます。

さて、
「尚侍(朧月夜の君)は、人わらへにいみじう思しくづほるるを、大臣いとどかなしうし給ふ君にて……」
――朧月夜の君は、人の笑い物になるとひどくしょげておられるのを、右大臣の大層大事に可愛がっておいでの姫君なので、(大后や帝に熱心にお願いなさって、格式ある女御や御息所ではなく、公務の宮人としてならと、ゆるされました。)――

七月になって参内なさいます。

朱雀帝は
「いみじかりし御思ひの名残なれば、人の謗りもしろしめされず、例の上につと侍はせ給ひて、よろづにうらみ、かつはあはれに契らせ給ふ」
――帝は、もともと熱愛されていましたので、人の謗りもお聞きにならず、元どおりご自分のお側にぴたりと引きつけられて、何事につけてもお恨みになったり、いろいろなことをお約束をおさせになったりされます――

 朧月夜の君は帝のお気持ちがもったいないとは思うものの、源氏について思い出すことばかりが多いのでした。

帝は、
源氏の居ないのは大層寂しい。光が消えた心地がします。故桐壺院のご遺言にも背いてしまって罪を得ることでしょう。世の中は、生きていてもつまらぬものと思い知りました。
いつまでも生きていようとは思いません。もし私がそうして世を去りでもしましたら、あなたはどうお思いでしょうか。先頃の源氏とのお別れほどには悲しんでもらえまいと思いますと、ねたましいです。
それそれ、その涙はだれのために落とすのでしょう。
あなたに御子がないのが(帝との間に)寂しいことでしたが、春宮をお立てしますにも、面倒なことになりますし……と、

お若い上に、強いところのない方なので、お困りになることが多いのでした。

須磨では、ただでさえわびしい心にしみじみと沁みる風が吹いて、海は少し遠いのですが、夜は大層近くに波の音がして、いっそうあわれ深いのがここの秋でございます。

ではまた。




源氏物語を読んできて(殿舎)

2008年06月16日 | Weblog
殿舎(でんしゃ)

 桧皮葺(ひわだぶき)で寝殿(寝殿造の正殿で屋敷の中心に位置する殿舎)は入母屋(いりもや)造・他の殿舎は寄棟(よせむね)造の屋根、基本的には四面七間(縦四間×横七間)。柱は土台式(柱を土に埋めず、基礎の石の上に据える)。

 内部は三層になっていて、内側から母屋(もや)、一段低くなり、庇(ひさし)、さらに低くなり、簀子(すのこ)となる。母屋(もや)と庇(ひさし)の間は段を設けないこともある。
庇の外側に孫庇(まごびさし)という、もう一段低い庇が付くことがある。

 母屋と庇の間の柱は丸柱で、間を格子(こうし)や御簾(みす)で仕切る(両方の場合は御簾が外側)。白壁(しろかべ)や襖(ふすま)を仕切りとする場合もある。

 母屋は中を白壁で区切って、塗込(ぬりごめ)という部屋を設けることもある。

◆参考 平安娯楽館「嘉暮郷」より