永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(75)

2008年06月11日 | Weblog
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【須磨】の巻  その(5)
 
 尚侍へのお便りは、途中の道も危険ゆえ、細々とはお書きになれません。尚侍は涙に袖をぬらしてお読みになります。
源氏にとっては、右大臣邸という不愉快な先方なので、残念ながらお出かけにはなりませんでした。

出発は明日という暮れ方に、桐壺院の墓所の北山にお参りすべく、まず、藤壺の宮にお出でになります。
「なつかしうめでたき御けはひの昔にかはらぬに、……」
――藤壺の宮には、なつかしくご立派なご様子は昔のままなのにつけても、(つれないお心をお恨みしい気持ちもありますが、じっとこらえて、)――
源氏は、ただ春宮の御治世だけが無事でおありならば…とのみ申し上げます。
藤壺宮は、故桐壺院と源氏の身の上の成り行きに、出家した甲斐もないと、泣く泣く暮らしております、などとお話になります。
お二人は今度のことで、ひとしおこの世の無常を語らいました。出家された宮は、御座所に近い御簾の前に源氏のお席を設けて、直接お話申し上げます。

 月の出を待って墓所へと出発されます。

 「さらなる事なれど、ありし世の御ありきに異なり。みないと悲しう思ふ」
――いまさら言うまでもないが、かつてと違っての侘びしさに、伴人もみな悲しく思います――
伴びとは、官位を外された者、殿上人から除籍され具合が悪いので、須磨へお供する仲間でございます。
途中の賀茂の御社では、昔行列をして葵を挿して歩いたことなども、今では恨めしいことと思いながら通り過ぎます。

 源氏は故桐壺院の御山にお参りなさって、終夜ご陵前に額づき、よろずのことを申し上げますが、もとよりお言葉があるはずもないことでした。
木立が深く、帰りがたく拝みつづけていらっしゃいましたが、
「ありし御面影さやかに見え給へる、そぞろ寒き程なり。」
――御在世中のお姿がはっきりとお見えになったのには、ぞっとして寒気をおぼえたのでした――

 夜の明けないうちにお帰りになり、春宮にもお別れをします。

「一宮のうち忍びて泣きあへり」
――春宮の宮の人たちは、そこここで忍び泣きをされています――

ではまた。

源氏物語を読んできて(女房の日常・裁縫)

2008年06月11日 | Weblog
女房の日常 裁縫

 お裁縫というのは、女房のみならず、当時の女性達にとって重要な
仕事のひとつでした。夫や子供の衣裳を仕立てるのは妻(必ずしも正妻とは限りません)の役目でした。

◆写真 局では、袿姿の2人の女房がお裁縫に精を出しています。
    女童二人も。風俗博物館より