無意識日記
宇多田光 word:i_
 



ちょいと気になってるんだけど、もしかしたら今回のアルバム『SCIENCE FICTION』の売り方を「AKB商法のようだ」って形容してる人、どっかに居る? あたしは直接目撃したわけではない(或いは、見たかもしれないけどすっかり忘れている)のだけど、もしそう言ってる(書いてる)人が居るんなら、「多分、かなり違うよ」と申し添えておきたくてね。


AKB48をはじめとした秋元康先生が指揮するところのいわゆる「複数枚商法」の全貌を、私は把握しているわけでは全然ないのでひとまず一般論を語る。例外があるかもしれないけどすいませんそれについては知りません、ってことね。

で、複数枚商法ってのは基本的には例えば同じ内容のCDであっても握手券や投票券がついてくるってやつね(握手権や投票権と書いてもいい…けど読みが同じなので紛らわしいよなこれ)。で、ここが大事なのだけど、複数枚買ったら、例えば、握手券を2枚3枚…と買ったら、それだけ握手をできる回数が増えて(或いは一度に使ったら握手していられる時間が増えて?)、一言かけられる時間も増える、みたいなことになる。また、投票券も、2枚3枚…と買えば2票3票…と投票できる票数が増やせる。どちらの場合も、複数枚買うことで購入者は「推しと多く接触できる」「推しの順位をより上げることができる」といった利得(メリット)が享受できる仕組みになっている。CD沢山買ったらそれだけの分だけ得があるってこと。

ま、だったら握手券や投票券を直接売ればいいのに(というのも実は法律がややこしいのだけどそれは今回は置くとして)わざわざCDのおまけにしちゃうもんだからCDのセールスチャート/ランキングを荒らしてくれちゃって、ということで非難の矛先が昔から向けられてきたわけだけど。また、新古書店等でも買い取り不可なもんで、そのままCDがまるごと廃棄されるのも、絵面的によくなかったわよね。


で。じゃあ今回の宇多田ヒカルの『SCIENCE FICTION』は、複数枚買えば買うほどメリットはあったの?というと、結論から言えば「なかった」のですが、これがちょっとややこしい話になるんだよね。

なので、ここから先は物好きな人だけ読んでください。


CD購入者…というか、ツアー参加希望者は、CDを複数枚購入することによって、主に次の2つをメリットとして享受したがっていた、と思われる。

① 一つの公演の当選確率を上げたい
➁ 複数の公演を観たい

これはどちらもわかりやすいよね。

まず①。無作為な(つまり厳正な)抽選であれば、こちらの頭数を増やせば当選確率も上がる。100件の応募に対して当選が1件なら当選確率は100分の1(1%)だけど、10件応募すれば当選確率は100の10即ち10分の1(10%)で10倍の当選確率になる。これが期待される。

ところが今回、チケットの抽選応募管理はアプリを通してアカウントごとに管理されていたから、運営側がその気になれば「何件重複応募しようと1件と数える」ことをされたら、複数枚購入は無駄になる。そういう対処も予想できた。なので、それについての質問が来たわよね。その際、運営はこういう返答の仕方をしていたのよ。

Q.複数のシリアルコードを持っていますが、同じ公演日に複数回申込みできますか?
A.複数のシリアルコードをお持ちの場合は、シリアルコード数分のお申込みが可能となりますので、同じ公演日へ複数回お申込みいただくことも可能です。
https://faq.ticket.hikaruutada-tour-official.com/hc/ja/articles/9478764742927

こうですよ。「複数回申し込みできる」と。ですが、それで倍率が上がるとも、倍率は変わらないとも一言も言ってないわけ。で、これは踏まえておきたいとこなのだけど、こういう商売上の抽選に関して、どういう抽選を行うかについては消費者に対して胴元は開示する法的な義務はないのね。好きなように選んでいいのよ。法律的には。ラジオやテレビのプレゼント抽選でもときどきあるでしょう、メッセージがよかったとかはがきのデザインが素晴らしかったとかいう理由で当選ゲットするケースが。で、その基準について公表もしなくていい。つまり、なんでもいいんですよ。これが原理原則なんだけど、それでも敢えて問いたい。↑上記の回答の仕方をされたら、「アカウント管理してるのに複数回申し込み可能なのか」「じゃあ当選確率もそれに伴って上がるんだな」と解釈する人が有意に増えることくらい、容易に予測がつくでしょう? その点を指して不誠実だと私は言ってる。

ここが微妙なのよね。もし複数回申込で当選確率が上がるんならこれはAKB商法に似たものでしょう。枚数を買えば買うほど、購入者にメリットがある。が、もし当選確率と申込回数に相関がないのなら、複数枚購入にメリットはないわけで、これをAKB商法或いはそれに準じた何かと呼ぶのは、無理があるのではないかなぁ? 私よく知らないけど、アイドルファンにこういう欺瞞的行為をけしかけたら結構大変な事態にならない? 過去にそういうケースあったというのならこちらが教えて欲しいのだけども。

今回チケット運営はその点について濁すことで(繰り返すが、それに関して開示する義務はない)、購入者に複数枚買うよう暗に誘導したように見受けられる。ここをどう判断するか、ですね。もしかしたら実際は複数枚購入で当選確率が上がっていたのかもしれないが、どうにも皆さんの反応を総合すると、関係なかったようにみえる。これは本気で統計的に処理しないと結論は出ないので、滅多なことは言えないのだけど、信じるも疑うも、皆さんの自由ってことで。(お前もそういうの濁すんかい)

あたしは、先も言ったように、不誠実だと思うなぁ。しかも、これによって損を被るのは信用を失うレコードレーベルの方ってのがまた嘆かわしい。


そして➁に関して。こちらも微妙なんだ。観測範囲においては「どうやら1アカウント1公演しか当選しないらしい」という結果となってるので、複数公演を観たいからと複数枚購入した人たちは思いっきり損だった!という結論を導けそうなんだけど、これについて運営側は理屈としては

「もし一巡目の抽選でソールドアウトにならなかった場合、二巡目に同一アカウントで複数公演当選するケースも出ていたかと思う。が今回に関しては一巡目でソールドアウトとなった為、複数公演当選したケースは実際は出なかった。そういうことです。」

と説明するんだろうな。で、また言わなきゃなんないけど、この説明も運営はする「義務」はない。そして実際にこういう説明はなかった。でも、これもまた欺瞞的だとあたしゃ思ったね。宇多田ヒカルの6年ぶりのツアー。「抽選一巡目でソールドアウトする確率が非常に高い」わけですよ。だったら最初っから複数公演応募するのはやめとこう、って判断をしますってそこで。それをこうやって黙っていたら、素直に「たくさん回数観たいからたくさん応募しよう」ってことで複数公演分複数枚CDを購入する人たちが出てきますって。

てことで、②のケースも、AKB商法って言わなくない? 複数枚買ってもメリットなかったわけだから。


以上、①➁ともに、「AKB商法とは言わない」&「複数枚買わせる為にいろいろ黙ってただけ」ということだと、思うんだけどねぇ。どうでしょうか



で、なんでこんなことになったのか、ってときに真っ先に疑われるのが「CDを一枚でも多く売りたいレコード会社」なのだけど…って話は、うん、今夜は長くなりすぎたからまた続きは今度ね。長々と失礼致しました。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




場が荒れた時は全スルーが最良の選択なのよね。色々学んできたけど、無関心による風化がいちばん手際がいい。人は余計な手出しをするものなのだ…。

ということで、SFツアーのチケットに関して荒れた発言が多いのだけど、色んな視点から眺めている。今書いた通り、嵐の過ぎ去るのを待ちつつ、いつもの楽しい話題を振り撒いていくのが対処法としては良いだろう。

一方でその「良心的な手段」はしばしば言論の弾圧の加担に利用されがちだというのもどこか気に留めておいて損は無い。「場の雰囲気を壊すな」と言って正当な反論や反駁、本来あってしかるべき権利の主張などを封殺する光景は、個人レベルから国家レベルまで至る所に現れる。結局はバランスが大事だ。

バランス、平衡というのは便利な言葉なので濫用されがちだけれど、要は集中力の事である。ただ、これも概念として難しい側面もあり、局所的平衡は集中力だけど大域的平衡は熱的死でしかない。まさに正反対。しかも局所と大域は相対的な概念なので、今ここがどちらであるのかも見方次第。「どうとでもなる」のが、バランスの危ういところ。

とはいえ、大抵の場合何が局所的で何が大域的なのかは無意識裡にコンセンサスが取れている。宇多田ヒカルのバランスの良さについて語られる時も、そこは大概大丈夫なのだ。

絶え間無くそのバランスを取ろうとし続ける為、人に会うのが億劫になる。自分以外の人間が場の要素として加わると、それにそのまま伴ってバランスをとるべきファクターも増えるからね。だから、ひきこもりがちだけど、人に会うのが嫌いなわけじゃない。疲れるから程々にしとかないと保たない、という話。そこらへんは『Parody』によくよく歌われているから皆さんご存知でしょうて。


さて、今回の事態でヒカルがどう動くかを、それらの観点から考察すると、やはり無言総スルーが最良の策だろう。喉元過ぎれば熱さを忘れる。何も言わねば風化する。これって結構いつも通り。最近はメディア露出とリポストがたくさんだから感覚が違っているが、何年も「沈黙は金」だよね。

では銀色の饒舌の選ぶ場合はどうするか。英語だろうな。今回取り上げられてる問題の中で真に深刻なのは在外者の抽選に関する様々な訴えである。様々といっても「当らんやないか!」って話でしかないんだけど、有り難くも集めてもらった情報をみるに、流石にこれはマズいという事態に陥っている模様。何かアーティスト本人から発言があった方がいいのではないかとは思う。

ただ、ヒカル自身は公演本編の準備にかかりきりで(バンドの楽譜書く人だからね)、チケット販売に関してはノータッチだろう。「あたしの方が知りたいよ!」というのが本音かな。かといって、今回はレーベルも深く関与していない。担当会社はダンマリを決め込むのが最適戦略。なので、本来ならここは宇多田ヒカルのマネージメントからの発言がいちばん公正だ。昔ならここで照實さんが現れてくれたのだが現在は表に出てくる意向はなさそう。というわけで、現行のチーム宇多田の弱点はここなのよな。レコード販売ともチケット販売とも違う視点から公的にステートメントを出せる人、この人材が要る。できればヒカルが会ってても疲れないくらいの人がいいんだけど、うーん、一朝一夕では解決できないやねこれはね。長い目で見守りますか。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )