無意識日記
宇多田光 word:i_
 



最後の曲、Movin' on without youである。私にとってこの曲は大変思い出深い。Automatic(とtime will tell)がミリオンセラーの大ヒットを飛ばしている時も、私のテンションはまだそんなに上がっていなかった。正直、シーンに与えたインパクトはまだMisiaの方が上だと思っていたし、今振り返ってみても実際にそうだったと思う。Automaticの歌唱は非常に優れていたし、曲もこの日本で大ヒットするポテンシャル十分、こりゃあ今年の最優秀新人はコイツで間違いないなという感じにはなっていたが、まだ熱心に追い掛けようという気持ちまではなっていなかったのである。

しかし、Movin' on without youを初めて聴いた時のインパクトは別次元だった。いやさ異次元だったかも。「なんだこのきょくは!!??」と空いた口が塞がらなかった。ぶっちゃけ、AutomaticやFirst Loveのような曲は、一流のソングライターならばまぐれで書ける類のものだ。何故なら、偶然でもこれらの曲のメロディーに出会ってしまえれば、それが稀代の名曲に"育つ"であろう事は誰の目にも(耳にも)明らかだからだ。

しかし、Movin' on without you は違う。こんなフックラインが楽曲として纏まるだなんて超一流でなければ絶対に見抜けないのだ。即ち、私は、この曲を聴いて、遂に日本に今まで現れた事のなかった「超々一流のソングライター」が登場したのだと確信した。つまり、彼女の出現は、この日本に留まらない世界規模、世界史上での大事件だと思ったし、こいつは程なく全米1位くらい楽々獲ってしまうだろうと思った。今でも思っている。まだなんだけどね。

兎も角、こういう曲を書けるのは超一流のミュージシャンのみ。それは同業者たちがいちばんよくわかっている。しかも、それを、まぁ殆どAutomaticのお陰なんだけど、オリコン初登場1位に叩き込みミリオンセラーにしたという"結果"を伴わせた点がまた凄いのだ。ミュージシャンというのは、如何にも売れそうな曲が実際に売れても嬉しくはあるがそんなでもないのだが、こういうギラギラしたエッヂの立った楽曲を当てた人に対しては心の底からリスペクトを払うものだ。

LuvLiveでの演奏陣のこの曲でのプレイは、そんなリスペクトに満ち溢れている。唯一、ベースのニールだけはそんなにテンションがあがっていないが、他のメンバーはこれでもかといわんばかりにノリノリである。勿論、「これが終わったら浴びる程酒が飲めるぞ今日の仕事は終わりだっ!!」というタイミングだからこそのハイテンションである事も否定出来ないが、結局ミュージシャンはこの曲が好きなんだと思う。Lettersにも似たような雰囲気を感じるが、特に1999年時点でのインパクトは格別だったのだ。あんまり映ってないし音もよく聞こえないけれど、この曲での今さんのプレイは気合いが入っている。前二曲があまりやることがなくて地蔵状態だった反動もあり、見事なカッティングを披露してくれている。

それに呼応するように、ヒカルのフェイクも絶好調。イントロから大盤振る舞いだし、ラストの『いいオンナ演じるのはまだ早すぎるかな』以降のフルスロットルぶりは、最近ではみられないものだ。今ではこんなメロディー運び、ハメはずしすぎで恥ずかしくて歌えないんじゃなかろうか。そういう意味でも若さの溢れ返った、貴重なテイクである。ヴィニーの痺れるドラミングとヒカルの前のめりのヴォーカルを、とことん楽しめる優れたテイク、私としてはこれこそLuv Liveのベストテイクと確信している。この、デビューライブのフレッシュネスと卓越したプロフェッショナリズムの融合。一期一会としか言いようのない、奇跡的なコンサートであった。何度でも言わせてうただこう。リリースしてくれて、どうもありがとうm(_ _)m

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週末の照實さんのツイートは、なかなかに情報満載だった。特に、ツアーに関して、出来るだけ同じメンバーで臨みたい旨の発言は、恐らくそうだろう、とは思っていたものの、改めてこうやって責任者の口から"言質を取れた"というのは大きい。

そもそも、メンバーチェンジというものは、どこかで何かがうまくいっていないから行われるものであり、必要がないなら起こらないものだ。演奏以外の面も同様だろうが、演奏に限った上でも、長年培ってきたバンドの"呼吸"というものを、みすみす捨てる訳にはいかない。

ただ、Hikaruくらいになると幾らか基準が"手厳しく"なり、バンドがずっと同じメンバーだと馴れ合いが出てきて緊張感が薄くなるとか、新鮮味に欠けるとかいった理由で「勝利中のチーム構成を変える」手に出てくる事も不思議ではない。どんな時でも挑戦者としての気概を失わないのは天晴れだが、通常のミュージシャンにとっては、それは99%が「うまくいくチームを見つけられなかった時の言い訳」に過ぎない。広い意味で取れば、マンネリで緊張感がなくなるチームは"うまくいくチーム"のカテゴリーに入らない。ガッチリと組み合わさったチームは、10年でも20年でも固定化したメンバーでクリエイティブで在り続けられるのだ。

ただ、そういうのは、私が物事を"バンド志向/グループ重視"で見ているからかもしれない。Hikaruは、取り敢えずシンガー/ソングライターである。まずは自分の世界を構築する事。そしてその為にバンドのメンバーを集める事。この順番は変わらない。人は変わるし、歳もとる。その時その時で判断するしかない。

しかし、やはりバンドは場数である。私はウタユナで、2ヶ月の間にバンド・アンサンブルが激変するのを目の当たりにした。たった数回試してうまくいかなかった程度で諦めていたら何にも至り得ない。要は一人々々の志なのだ。それを持ち合わせた人間を揃えられたのなら、もうメンバーを変える必要はない。

そのバンド・メンバーの中でも最古参を誇るのがギタリストの今剛である。今回照實さんから、まずは彼に声をかけるという断言をうただいたが、これも当然の事だ。彼は日本での活動が基本だが、実力的には世界レベルのギタリストだ。彼のスケジュールさえ合えば、Utada Hikaruの地球規模ツアーに引き連れ回して貰ってもライブレポートで酷評を受ける事はないだろう。照實さんの判断は正しい。彼が多忙な為断られる事も多いだろうが、そこの所もうまくいくように出来ている。バンドメンバーのヒアリング/オーディションの順番というのは気を遣うもので、どこかから「あの人に断られたからあなたに声がかかったらしいよ」なんていう情報がきこえてきたりするものだ。そういう事態になっても、断ったのが今剛なら大丈夫。大抵のギタリストなら、自分が今剛の後ガマだと聞いても悪い気はしない。寧ろ光栄というかプレッシャーすらあるだろう。プロのミュージシャンというものはプロフェッショナルであるが故にそういった事は気にしないと思われがちかもしれないが、
多分結構気にしている。そういう意味においても、照實さんがまず最初に今剛に声をかけるのは"間違いない"のである。


それにしても、リプライからの話の流れで語ってくれたとはいえ、今の時期にこんな話をしてくれるだなんて、また余計な妄想が膨らんでしまいそうである。いかんなぁもう。じっと黙って待っていようっと。

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