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線描の狂気、ホルスト・ヤンセン

2014-04-22 23:16:30 | アート

Horst Janssen Blumen Seifert-Binder


Horst Janssen, "Erostod"

20世紀現代ドイツ絵画、なかでも突出した線描の持ち主であるホルスト・ヤンセンは、ひときわ異彩を放っている。
葛飾北斎に多大なる影響を受けたそうで、それは版画や素描の構図やモチーフのいたるところに垣間見える。
デューラーより連面とながれる変質狂的な線の密度も受け継ぎながら、日本的な”間””余白”と融合し見事に調和させ、独自の世界を築く。
高密度な線がありながらもくどくなりすぎないこのバランス感覚を支える卓抜した彼の技術の右に出る者を、浅学な私は他に知らない。
ヤンセンと同じような時代に活躍する、小説家でもあるギュンター・グラスに似たような印象を持つけれど、グラスはよりデューラーに近い位置にあると思われる。
ヤンセンの繊細で密な線が紡ぎだす、グロテスクに歪む静寂なる狂気は、観る者の内面に鋭く浸透してくるのだ。
いつも傍らに置いておくにはつらい感じがあるけれど、時折りこっそり覗きたくなる中毒性がある。
それは、普段意識しないか黙殺している誰しもが持つほの暗い狂気にジャックインし暴き出すからだろう。
ヤンセンは、醜悪奇怪な人の本性を、狂気の線描を駆使しきわどい美しさで描き出す芸術家なのだ。


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