rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

国吉康雄展 不安と孤独

2023-12-01 23:14:57 | 展覧会など

安眠を妨げる夢

イチョウの黄葉も終わりそうな抜けるような青空の日、茨城県立近代美術館で開催されている「国吉康雄展」に行ってきた。
国吉の代表作がほぼ集まった、見応えのある展覧会だ。
中期までの茶系を多用したアンニュイな表情の女性やプリミティブな雰囲気の風景から、後期の鮮やかな色調で不気味で幻想的な作品へと、画家の変遷を辿れる。
二つの世界大戦をアメリカで過ごし、様々な経験から紡ぎだされたこれらの作品には、人物を描きながらも人間嫌いではないかと思わせるものが漂いだしている。
そう思ってしまうのは、私が勝手にうがった見方をしているにしても、人が登場しない作品のほうに、強い集中力を感じるからだ。
しかし、平日だったためもあって、人の気配に乱されずじっくりと作品と向き合うことができ、贅沢な時間を過ごせた。
地方の美術館ならではのゆとりだろう。
実にありがたい。


ミスターエース


2023年8月4日 テート美術館展 その2

2023-08-07 22:15:50 | 展覧会など

ジョン・ブレット 「ドーセットシャーの崖から見えるイギリス海峡」


ホイッスラー 「ペールオレンジと緑の黄昏ーパルパライソ」

ホイッスラーの風景は、劇的な光の操作など行なわれていないけれども、狭い諧調の中に無限が存在するかのような含みのある色合いをあっさりと見せている。
私にとっては、ブレイクとともにこの展覧会を見て、画像と共に紹介できる作品のうちでは収穫といえる。
大好きなマーク・ロスコの作品が2点展示してあったのだが、これは撮影禁止ということでここでの紹介はない。
現代美術のインスタレーションとして、ペー・ホワイトとオラファー・エリアソンの両者が好みだった。
両者とも実に軽やかで、影を従えて"光”の一面をよく表していた。
幅広い作品傾向を一堂に会させた、とても見て楽しいよい展覧会であったので、ぜひとも足を運んでいただきたい。
国立新美術館で、10月2日まで開催している。


モネ 「エプト川のポプラ並木」


ペー・ホワイト 「ぶら下がったかけら」


オラファー・エリアソン 「星くずの素粒子」

2023年8月4日 テート美術館展 その1

2023-08-05 23:11:33 | 展覧会など

ウィリアム・ブレイク 「アダムを裁く神」


ウィリアム・ブレイク 「善の天使と悪の天使」

体温越えの東京に、絵を見に行った。
国立新美術館で開催されている「テート美術館展」は、18世紀から21世紀までの絵画から立体作品を、”光”をテーマに展示していた。
私の好きな芸術家であるウィリアム・ブレイクの水彩画が2点あり、なかなかお目にかかれない作品なために、期待が増した。
ブレイクの作品の中では、明るめの作品で、確かに光を感じるものであった。
イギリス偉大な作家の一人であるターナーの作品は、印象派や抽象画の先駆者とも言われ、説明的な表現よりも茫洋と境界のない色で画面を構成する思い切りの良さに、うらやましさを感じる。
また、主に風景画の名手として名高いジョン・コンスタブルの小品ではあるが、上品で落ち着いた作品に目を休めさせてもらえた。
このところの激烈な気温で疲れた心を癒す、一服の涼といえる色合いが心地よかった。


ターナー 「陽光の中に立つ天使」


ジョン・コンスタブル 「ハリッジ灯台」

2023年2月24日 エゴン・シーレ展 

2023-02-27 22:43:38 | 展覧会など

エゴン・シーレ 吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)1912年



エゴン・シーレの展覧会は、30年ぶりだったように思う。
そのときは、池袋のBunkamuraザ・ミュージアムで開催され、見やすい展示と照明で鑑賞に適していた。
ここ十年くらい、美術展の展示構成が、エンターテイメント化しているように感じる。
狭く入り組んだ展示会場構成、展示壁面を暗い色にして絵だけにスポットを当てる手法で劇的効果を演出、絵と絵の間隔を狭くするなど、何かしら要素を詰め込みがちだ。
今回の展覧会での不満は数々あれど、デッサンを集めた部屋は、とても鑑賞しにくかった。
暗い壁面に据えられたデッサンたちは、額の内側にLEDライトを施して、そこだけバックライトのモニターで絵を映し出しているかのような錯覚を持った。
LEDライトが、デッサンや水彩に与える変色や退色の影響がいかほどあるかわからないけれど、強すぎる光はかえって絵を見えずらくしていた。
この過剰な演出が、絵の良さを低減させている。
展覧会の始めのころにあった、シーレに影響を与えたグスタフ・クリムトの絵をさらっと展示してあるほうが、よほど絵を自然に見せていた。
一昨年あたりに見たフェルメール展も、展示の仕方に大いに不満があり、昨今の演出手法に疑問が多い。
どんなに素晴らしい作品を招聘しても、その作品を損なう展示がなされては、作品に対して不敬であり、鑑賞者にやさしくない。
どうか、いかに劇的に空間を演出するかではなく、作品を鑑賞しやすい気遣いをして欲しい。
作品を展示する美術展は、アトラクションではないのだから。

「ピカソとその時代」と「国宝展」

2022-10-30 23:06:34 | 展覧会など

ピカソ 踊るシレノス


ピカソ 雄鶏

この二つの展覧会も、10月22日にイッタラ展を見たときに行ったもの。
国立西洋美術館において「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(2023年1月22日まで)は、かなり充実した作品が展示されていた。
ピカソの作品も青の時代から晩年にかけてと幅広く、影響を受けたセザンヌの数点、特に目を引いたのがクレーの質の高い作品の多さだ。
また、キュビズムのブラック、フォービズムのマティス、ジャコメッティもあって、じっくり堪能したい上質な展覧会だった。
今のスマートフォンは展覧会の照明でも、フラッシュなしでよく撮れるためだろうか、数点を除いて撮影可だった。
これからは、このように撮影したものをSNSやブログで紹介下ならば、集客に良い変化をもたらしそうだ。

東京国立博物館が、開館150年記念で「国宝展」を12月11日まで開催している。
会期中は展示換えがあるため、自分が見たいものがいつ展示されているかを調べるか、または全4期来館するようだ。
開催されて初めての週末だったからか、とにかく混んでいてじっくり見ていられなかった。
たいてい静かにゆっくり思いのまま見られる国立博物館が、私の知るところなので、今回みたいなのはもう遠慮しよう。
落ち着かない雰囲気の中では、作品とじっくり向き合うことはかなわない。
本館の重厚で静かな空間こそ、国宝と向き合う儀式的な場だと思うからだ。


クレー 雄山羊


クレー 3掛ける3の十字


国立博物館