わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

盆器(盆栽鉢) 14(盆器の作家1)

2011-09-26 22:59:28 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
盆器は、江戸後期から、明治にかけて各地の窯場で、焼かれています。

 例えば、古常滑、万古焼、尾張焼、瀬戸焼、信楽焼、備前焼、京焼、九谷焼、湖東焼、赤膚焼、渋草焼、

 丹波焼、薩摩焼、唐津焼、高取焼。相馬焼、などです。

・ 今の形の盆器(盆栽鉢)は、昭和初期頃より製造される様になります。

  常滑、四日市、備前、瀬戸、信楽などが有名です。

この様な量産の作品の他に、個人が作り落款を入れた作品も多いです。

1) 著名な陶芸作家も作品を作っています。

  例えば、仁阿弥道八(京焼)、永楽善五郎(京焼)、清水六兵衛(京焼)、柿右衛門、尾形乾山、

  諏訪蘇山、徳田八十吉、河井寛次郎、加守田章二、島岡達三など錚錚(そうそう)たる人物達です。

2) 陶芸家としては無名ですが、盆器作りの世界では、有名人も多いです。

 ① 平安東福寺(へいあんとうふくじ)本名:水野喜三郎 (京都) 1890~1970年

  現代の名高い名鉢に「東福寺鉢」があります。 盆栽鉢の最高峰とも言われています。

  京都東山山麓の名刹東福寺の境内で、盆栽鉢を焼いていた為、この名前を付けたといいます。

 a) 経歴

  34歳頃より、盆栽に興味を覚え、趣味として盆栽鉢を作り始めます。

  40歳の頃から、盆栽鉢を本業として作り始めたと言われています。

  貧乏な為、自前の窯が持てず、56歳頃迄、主に東山の柳屋窯(月輪製陶所)の登り窯を借りて、

  制作していた様です。その後も、昭和40年頃迄、各地の窯(山科北花山服部窯、井野祝峯窯、

  岩淵窯)を借りて焼成しています。

  昭和41年(66歳)以降、電気窯、ガス窯で焼成を行う様になります。

  盆器作りは約40年間続けられていました。

 b) 特徴

  盆栽鉢の形の種類も大小豊富で、大鉢や豆鉢、更には水盤もあります。

  独創的で幅広い作品を作っています。(珍鉢などもあります。)

  泥ものも製作していますが、釉薬の使い方も上手で、多彩な色のものも多いです。

  「盆栽を植えて良く映える」と同時に、鉢単体でも味わいがあります。

 ・ 緑釉は東福寺鉢を代表する釉薬です。

   織部風、青銅マット風、青磁風、結晶風と色の変化も大きいです。

   緑釉は銅釉ですので、元々変化が大きいのですが、借り窯の為、自分の思う様な一定の色に

   仕上がらない結果だとも、言われています。

 ・ その他の釉は、瑠璃釉、均釉、蕎麦釉、桃花釉、珊瑚釉、黄釉、窯変等があります。

 ・ 絵鉢について、東福寺鉢には、絵付けがされた物もありますが、絵付師に描かせたものと

   言われています。(本体は東福寺が作っています。)

 c) 落款に付いて:

   角形篆書体「平安東福寺」、楓落款「東福寺」、円枠丸ゴシック体「東福寺」、釘書「東福寺」、

   明朝体「東福寺」、楕円枠行書体「東福寺」。更にこれらの複数個を入れた物も多いです。

 「東福寺鉢」は人気のある作品で、今でも多数の作品が流通しています。

  (偽者も多く流通している様ですので、くれぐれも注意して下さい。)

 尚、「二代平安東福寺」も存在していますが、二代と落款が添えてあります。

以下次回に続きます。

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