2) 「景色」はどの様にして起こるか?。
景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を
使用中に起こる「景色」に分類できます。
① 作品の成形過程で起こる「景色」。(前回の続きです。)
) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?
主に筒状(袋物)の作品の胴体部分に、竹箆を用いて垂直や斜め線をやや長めに入れる行為
です。力加減によっては、適度に凹ませ、作品の形と歪み(ゆがみ)の程度が調整できます。
多くは、側面を切り取るよりも水を付けた竹箆で、内側に力を加えて押し込み撫でる様にして
跡を付けます。力を入れて一気に行うと、勢いのある線や面になります。
綺麗に出来ている作品をあえて歪ませ、傷を付ける行為をするのは、陶工の遊び心や悪戯心
(いたずらごころ)かもしれません。最初は売り物としない作品に、手に持つ箆を押し当て
傷を付けた処、表情が変わり良く見えたかも知れません。又、たまたまその物を見た人がその
良さに気が付いたのかも知れません。いずれにしても、この行為が一種の装飾とみなされ、
「景色」として取り入れられたのではないでしょうか。
一見無謀の様に見える行為ですが、見方によっては、形全体に動きが出て、軽やかさのある
作品に生まれ替わります。
) 縮緬皺(ちりめんじわ): 砂混じりの素地に場合、削り作業で土が細かく「ささくれ」
状態になる現象です。あえて綺麗にせず、施釉もせずに、一種の「景色」として鑑賞(観賞)
します。主に抹茶々碗の高台内に見られます。
② 作品の焼成過程で起こる「景色」。
中世の窖窯(あながま)では、薪を使って無釉の焼締陶器が多く焼かれていました。
直接強い炎に晒され、燃料の薪の灰が降り注ぎ、変化に富んだ「景色」のある作品が多量に
作られる事になります。尚、現在でも窖窯で焼成され、人気の作品が作り続けられています。
) 窯疵(かまきず)、山割れ : 高温に晒され作品の一部に、亀裂や割れが発生する
場合があります。 一般にこの様な作品は、失敗作ですので、廃棄処分となります。
しかし、自然釉であるビードロ釉の美しさ、降り物(薪の灰が降り注いだ物)の見事さ、
味のある「焦げ(こげ)」など、見所(景色)満載の作品は、廃棄処分する事無く、むしろ
珍重され、大切にされています。
特に著名な作品は、伊賀耳付水指 銘「破袋」(16世紀、五島美術館蔵、重文)があります。
) ひっつき: 施釉陶器でも無釉の陶器であっても、高温に晒された作品は、素地又は釉は
軟らかくなります。窯の中で不安定に置かれた作品が、何らかの理由で隣同士の作品や、
窯道具等と接触した場合「くっついた状態で」窯出しが行われます。
この場合、両方とも廃棄処分にしますが、一方を助ける事があり、他方は壊す事になります。
但し、残った作品にも、「くっついた」跡が完全に取り除く事が出来ず残ります。
多くの場合「くっついた」部分は凸状に膨らみ、「景色」と見る事ができます。
「くっついた」部分をどの様に処理するかも、制作者の腕の見せ所となります。
) 火ぶくれ(せんべい): 煎餅(せんべい)の様に、表面の一部が膨らむ現象です。
原因は、耐火温度の低い素地(赤土など)が必要以上に高温になった場合。更に、素地に
有機物や小さな気泡等が入っている時は、ガスが発生し表面の一部が膨らみます。
特に、見所「景色」がある場合のみ助ける事に成りますが、作品のどの部分が膨らむかに
よって、使い物に成らなくなる可能性もあり、廃棄処分になる物が多いです。
) 火表と火裏 : 炎が直接当たる処が火表になり、その反対側が火裏になります。
火表は高温に成りますので、釉が流れ易くなったり、降り掛かった灰が良く熔けます。
火裏では、若干温度が低くなりますので、釉や灰の熔け方が弱くなります。その結果一つの
作品でも、裏表で表情の変化が見られる事になります。この違いが「景色」として見所の
一つになります。その他、火表側が還元に火裏が酸化焼成になり易い窯の雰囲気であれば、
釉の色も裏表では違いが出易いですので、この場合にも「景色」が出来る事になります。
) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。
現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。
以下次回に続きます。
景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を
使用中に起こる「景色」に分類できます。
① 作品の成形過程で起こる「景色」。(前回の続きです。)
) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?
主に筒状(袋物)の作品の胴体部分に、竹箆を用いて垂直や斜め線をやや長めに入れる行為
です。力加減によっては、適度に凹ませ、作品の形と歪み(ゆがみ)の程度が調整できます。
多くは、側面を切り取るよりも水を付けた竹箆で、内側に力を加えて押し込み撫でる様にして
跡を付けます。力を入れて一気に行うと、勢いのある線や面になります。
綺麗に出来ている作品をあえて歪ませ、傷を付ける行為をするのは、陶工の遊び心や悪戯心
(いたずらごころ)かもしれません。最初は売り物としない作品に、手に持つ箆を押し当て
傷を付けた処、表情が変わり良く見えたかも知れません。又、たまたまその物を見た人がその
良さに気が付いたのかも知れません。いずれにしても、この行為が一種の装飾とみなされ、
「景色」として取り入れられたのではないでしょうか。
一見無謀の様に見える行為ですが、見方によっては、形全体に動きが出て、軽やかさのある
作品に生まれ替わります。
) 縮緬皺(ちりめんじわ): 砂混じりの素地に場合、削り作業で土が細かく「ささくれ」
状態になる現象です。あえて綺麗にせず、施釉もせずに、一種の「景色」として鑑賞(観賞)
します。主に抹茶々碗の高台内に見られます。
② 作品の焼成過程で起こる「景色」。
中世の窖窯(あながま)では、薪を使って無釉の焼締陶器が多く焼かれていました。
直接強い炎に晒され、燃料の薪の灰が降り注ぎ、変化に富んだ「景色」のある作品が多量に
作られる事になります。尚、現在でも窖窯で焼成され、人気の作品が作り続けられています。
) 窯疵(かまきず)、山割れ : 高温に晒され作品の一部に、亀裂や割れが発生する
場合があります。 一般にこの様な作品は、失敗作ですので、廃棄処分となります。
しかし、自然釉であるビードロ釉の美しさ、降り物(薪の灰が降り注いだ物)の見事さ、
味のある「焦げ(こげ)」など、見所(景色)満載の作品は、廃棄処分する事無く、むしろ
珍重され、大切にされています。
特に著名な作品は、伊賀耳付水指 銘「破袋」(16世紀、五島美術館蔵、重文)があります。
) ひっつき: 施釉陶器でも無釉の陶器であっても、高温に晒された作品は、素地又は釉は
軟らかくなります。窯の中で不安定に置かれた作品が、何らかの理由で隣同士の作品や、
窯道具等と接触した場合「くっついた状態で」窯出しが行われます。
この場合、両方とも廃棄処分にしますが、一方を助ける事があり、他方は壊す事になります。
但し、残った作品にも、「くっついた」跡が完全に取り除く事が出来ず残ります。
多くの場合「くっついた」部分は凸状に膨らみ、「景色」と見る事ができます。
「くっついた」部分をどの様に処理するかも、制作者の腕の見せ所となります。
) 火ぶくれ(せんべい): 煎餅(せんべい)の様に、表面の一部が膨らむ現象です。
原因は、耐火温度の低い素地(赤土など)が必要以上に高温になった場合。更に、素地に
有機物や小さな気泡等が入っている時は、ガスが発生し表面の一部が膨らみます。
特に、見所「景色」がある場合のみ助ける事に成りますが、作品のどの部分が膨らむかに
よって、使い物に成らなくなる可能性もあり、廃棄処分になる物が多いです。
) 火表と火裏 : 炎が直接当たる処が火表になり、その反対側が火裏になります。
火表は高温に成りますので、釉が流れ易くなったり、降り掛かった灰が良く熔けます。
火裏では、若干温度が低くなりますので、釉や灰の熔け方が弱くなります。その結果一つの
作品でも、裏表で表情の変化が見られる事になります。この違いが「景色」として見所の
一つになります。その他、火表側が還元に火裏が酸化焼成になり易い窯の雰囲気であれば、
釉の色も裏表では違いが出易いですので、この場合にも「景色」が出来る事になります。
) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。
現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。
以下次回に続きます。