わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 163 焼き物の景色とは2?

2015-07-09 11:46:48 | 素朴な疑問
2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ① 作品の成形過程で起こる「景色」。(前回の続きです。)

  ) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?

   主に筒状(袋物)の作品の胴体部分に、竹箆を用いて垂直や斜め線をやや長めに入れる行為

   です。力加減によっては、適度に凹ませ、作品の形と歪み(ゆがみ)の程度が調整できます。

   多くは、側面を切り取るよりも水を付けた竹箆で、内側に力を加えて押し込み撫でる様にして

   跡を付けます。力を入れて一気に行うと、勢いのある線や面になります。

   綺麗に出来ている作品をあえて歪ませ、傷を付ける行為をするのは、陶工の遊び心や悪戯心

   (いたずらごころ)かもしれません。最初は売り物としない作品に、手に持つ箆を押し当て

   傷を付けた処、表情が変わり良く見えたかも知れません。又、たまたまその物を見た人がその

   良さに気が付いたのかも知れません。いずれにしても、この行為が一種の装飾とみなされ、

   「景色」として取り入れられたのではないでしょうか。

   一見無謀の様に見える行為ですが、見方によっては、形全体に動きが出て、軽やかさのある

   作品に生まれ替わります。

  ) 縮緬皺(ちりめんじわ): 砂混じりの素地に場合、削り作業で土が細かく「ささくれ」

   状態になる現象です。あえて綺麗にせず、施釉もせずに、一種の「景色」として鑑賞(観賞)

   します。主に抹茶々碗の高台内に見られます。

 ② 作品の焼成過程で起こる「景色」。

  中世の窖窯(あながま)では、薪を使って無釉の焼締陶器が多く焼かれていました。

  直接強い炎に晒され、燃料の薪の灰が降り注ぎ、変化に富んだ「景色」のある作品が多量に

  作られる事になります。尚、現在でも窖窯で焼成され、人気の作品が作り続けられています。

  ) 窯疵(かまきず)、山割れ : 高温に晒され作品の一部に、亀裂や割れが発生する

   場合があります。 一般にこの様な作品は、失敗作ですので、廃棄処分となります。

   しかし、自然釉であるビードロ釉の美しさ、降り物(薪の灰が降り注いだ物)の見事さ、

   味のある「焦げ(こげ)」など、見所(景色)満載の作品は、廃棄処分する事無く、むしろ

   珍重され、大切にされています。

   特に著名な作品は、伊賀耳付水指 銘「破袋」(16世紀、五島美術館蔵、重文)があります。

  ) ひっつき: 施釉陶器でも無釉の陶器であっても、高温に晒された作品は、素地又は釉は

   軟らかくなります。窯の中で不安定に置かれた作品が、何らかの理由で隣同士の作品や、

   窯道具等と接触した場合「くっついた状態で」窯出しが行われます。

   この場合、両方とも廃棄処分にしますが、一方を助ける事があり、他方は壊す事になります。

   但し、残った作品にも、「くっついた」跡が完全に取り除く事が出来ず残ります。

   多くの場合「くっついた」部分は凸状に膨らみ、「景色」と見る事ができます。

   「くっついた」部分をどの様に処理するかも、制作者の腕の見せ所となります。

  ) 火ぶくれ(せんべい): 煎餅(せんべい)の様に、表面の一部が膨らむ現象です。

    原因は、耐火温度の低い素地(赤土など)が必要以上に高温になった場合。更に、素地に

    有機物や小さな気泡等が入っている時は、ガスが発生し表面の一部が膨らみます。 

    特に、見所「景色」がある場合のみ助ける事に成りますが、作品のどの部分が膨らむかに

    よって、使い物に成らなくなる可能性もあり、廃棄処分になる物が多いです。  

  ) 火表と火裏 : 炎が直接当たる処が火表になり、その反対側が火裏になります。

    火表は高温に成りますので、釉が流れ易くなったり、降り掛かった灰が良く熔けます。

    火裏では、若干温度が低くなりますので、釉や灰の熔け方が弱くなります。その結果一つの

    作品でも、裏表で表情の変化が見られる事になります。この違いが「景色」として見所の

    一つになります。その他、火表側が還元に火裏が酸化焼成になり易い窯の雰囲気であれば、

    釉の色も裏表では違いが出易いですので、この場合にも「景色」が出来る事になります。    

  ) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。

    現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。

以下次回に続きます。
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