わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 10 1000℃で焼成の焼き物

2014-07-07 21:27:51 | 質問、問い合わせ、相談事
ササっ子様より、以下の質問をお受けましたので、お答えします。

白土を使っています。柔らかい感じにしたくて、1000度くらいで焼きたいのですが、弱すぎますか?

また、市販の釉薬も1000度くらいで溶かしたいのですが、なにか良い方法はないでしょうか?


1) 1000℃ 程度の焼き物として思いつくのは、「楽焼」です。

   その他に、ペルシャ陶器、我が国の奈良三彩などの軟陶陶器があげられます。

 ① 一般に「楽焼」は800~850℃程度で焼成しますので、それより若干高い温度です。

 ② ご存知の様に、「楽焼」は強度的には弱く、素焼きの植木鉢より若干強度がある程度の、
   強さしかありません。

   ササっ子様がどの様な用途を考えているのかは、不明ですが、日常的に使う食器や、花器と

   して使用するには、弱過ぎます。但し、肉厚を若干厚めにし、重さを無視すれば、強度を

   強くする事が可能です。

 ③ ペルシャ陶器も奈良三彩(正倉院蔵)も、稀ですが、千数百年たった現在まで完品が存在

   している事は、使い方によっては、十分強度が有ったともいえます。

   但し、これらの陶器が何度で焼成されていたのかは、当方にはわかりません。

  ・ 尚、唐三彩釉は市販されています。推奨温度は750~800℃ですが、使い方によっては、

    950℃程度まで可能との事です。

◎ 私の結論として、1000℃焼成の陶器の強度的の強弱は、使用目的によって弱い、又は十分とも

  いえます。

2) 釉薬の件。

 ① 一般に陶器の釉として市販されている焼成温度が、1180~1250℃が多いです。

   この釉を調合して、1000℃の釉として使用する事は、無理ではないかと思われます。

 ② 楽焼の釉を使う。無鉛の楽焼用の釉は市販されています。

  楽焼用の釉薬は、最高でも900℃程度までで使う事が理想です。1000℃では高温の為、釉が流れ

  落ちる危険性があります。勿論、調合して熔け難い釉にする事は、不可能ではないでしょうが、

  かなりのテスト焼きが必要に成ります。

 ③ 市販のガラス粉色釉(1000℃用)を使う。

  当方で調べた処、上記の釉が存在している事が解かりましたので、参考にして下さい。

  以下の文は、メーカーに問い合わせた結果です。

  明窓窯 様   平成26年7月7日 丸二陶料株式会社


 いつもお世話になっております。

 この度は、メールにてお問い合わせを下さり、誠にありがとうございます。

 ガラス粉末色釉(1000℃)は、現在も取扱いしております。

 価格は下記の通りとなります。(全て税別価格です)



 K-1 透明光沢ガラス釉     1kg 4,800円

 K-2 ライトグリーンガラス釉  1kg 7,000円

 K-3 ペルシャブルーガラス釉  1kg 7,000円

 K-4 ライラックガラス釉    1kg 7,000円

 K-5 コバルトブルーガラス釉  1kg 7,000円

 K-6 ブラウンガラス釉     1kg 7,000円

 K-7 サンレッドガラス釉    1kg 7,000円

 K-8 オレンジガラス釉     1kg 7,000円

 K-9 イエローガラス釉     1kg 7,000円

 K-10 パールホワイトガラス釉 1kg 7,000円


 出荷の際は、こちらに、送料・代引き手数料・消費税が加算されます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。


------------------------------------------

 丸二陶料株式会社 配送センター

 〒5291802 滋賀県甲賀市信楽町 黄瀬2880

 TEL:0748-83-0201 FAX:0748-83-1005

 MAIL: honsya@02-maruni.co.jp

------------------------------------------

 尚、カタログ上では、以下の使用方法になっています。

   (カタログは上記メールアドレスから、請求できます。)

 ・ ガラス釉薬100%にCMC(化学糊)3%粉末で良く混ぜた後、水40~50%を添加する。

 ・ 適温は、1000~1050℃で焼成する。


 更に、手持ちの他のメーカーカタログからは、同じ様な釉は見つかりませんし、ネット検索でも

 見当たりませんが、同じ様な釉薬が他のメーカーから出ている可能性もありますので、ご自分で

 検索して下さい。

不明な点がありましたら、再質問してください。 以上です。
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騙しのテクニック21 名を騙る7(箱、箱書き2)

2014-07-07 16:29:11 | 騙しのテクニック
5) 焼き物に付随する物を「仕度(したく)」と言います。

  仕度には、箱、仕覆(しふく)、御物袋(ごもつふくろ)、風呂敷などがあります。

 ① 仕覆は、茶入や茶碗、小壷などの焼き物を包む布製の袋で、開け閉じする為の紐が付いて

   います。布が古裂(こぎれ)であれば、時代を推定する事も可能です。

   (あくまでも布の作られた時代で、焼き物の作られた時代ではありません。)

   仕覆は布を縫って作られていますので、何回も開け閉めすると、長い年月には、縫い目が

   ほつれてきます。この様な状態であれば、仕覆は古い物と思われます。

 ② 風呂敷は、箱全体を包む為に使用する布です。この布からも風呂敷の古さ(年代)を特定する

   事も可能です。但し、箱、仕覆、風呂敷が同時代に作られた保障はありません。

6) 箱書は、収められた焼き物が本物である事を証明するもので、上蓋の内側に墨書される事が

   多く、更に落款(らっかん)、花押(かおう)、印、銘などがあります。

  注: 落款とは、筆者が署名し、「雅号」の印を押す事です。

    花押とは、一種のサインで、実名の漢字の偏や旁(つくり)を組み合わせて、模様化した

    ものです。箱書きには次の四種類に分類されます。

 ① 作者による箱書(共箱の場合)。

   製作者が「自分の作品」である事を証明する為に箱に書いたものです。

   近年の、ほとんどの著名な作家の作品に付けられますが、江戸時代には京焼きの作家や光悦

   などに限られていました。 騙しの手口として、筆跡を真似た偽の箱書きがあります。

 ② 製作者の親戚、縁者による箱書き。

   作者の家族、親戚、友人、弟子達によるものです。

 ③ 茶の湯の宗匠などによる箱書。

   茶道の家元、高名な茶人、数寄者、愛好家達による箱書です。

   家元が好んで使う、無名の作家の器などや、世に出ていない器の美を発見した茶人、数寄者

   などの人々が、保管の為、箱を作り箱書きを墨書する事もあります。  

 ④ 古美術研究家又は、専門家による箱書。

 いずれの場合にも、直に作品に入ったサインに比べ、箱書は後から添えられた物ですので、

 収納された物が、必ず本物である事を証明するものではありません。   

7) 書付(折紙、極書き)について。

  箱の中に、陶磁器と一緒に入っている物に、書付があります。箱の蓋の裏側に貼り付けられた

  物や、別紙に書かれ物が、封筒などに入れられている場合があります。

  書付により、その焼き物の伝承や伝来も判明し証明されれば、その真贋は、経済効果を左右する

  要素になります。

 ① 極(きわめ)書きとは、書画骨董の鑑定書です。又、折り紙も鑑定書、保証書を意味します。

    (注: 「極め付け」、「折り紙付き」の元になった言葉です。)

   その作者を特定し、証明する物です。鑑定家や研究者、専門家が書きます。

   単に、制作者の特定だけでなく、昔の持ち主や伝来なども、鑑定する場合もあります。

   筆跡を調べる事で、その記事の真贋が判断できるそうです。

 ② 添え状、古文書、言い伝え。

  ) 古文書や言い伝えは、その焼き物が手に入った由来などが書かれています。

    例えば、殿様より拝領の器であったり、逆に神社の宝物が天皇や著名な大名、貴族など

    からの寄進による等の言い伝えや、古文書になっている場合があります。

  ) 伝承、伝来、古文書などは、事実と異なる事が多いものです。

    それ故、その作品の正当性を証明する物とは、必ずしもいえません。

以下次回に続きます。

  
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