市販されている黄色系の釉の種類は比較的少なく、黄瀬戸釉、黄色釉、淡黄釉、黄伊羅保釉、
金結晶釉などがあります。
1) 黄瀬戸釉: 透明性のあるやや茶色を帯びた釉で、鬼板などの下絵付けが可能です。
桃山時代に美濃地方ので開発された釉ですが、当時、瀬戸と美濃の窯の区別が付かなかった為
「瀬戸から来た黄色い焼き物」の意味で、黄瀬戸の名前が付いたと言われています。
木灰(備長炭の自然な灰が良いと言われています)を基礎釉にし、鉄分を含む黄土類を加えて
作る事が多いです。
① 素地は信楽などの白土が適し、1230℃程度で、酸化焼成すると発色が良い様です。
透明系ですので、土の色を強く反映し、半磁器など白い土ほど、明るい黄色に発色します。
良く焼く(時間を掛ける)程良い色が得られます。 還元焼成では、緑掛かる釉になります。
・ 白土でも肌理の細かい土ですと、釉が縮れて玉状になる場合もあります。
② 施釉の厚みは、薄掛けから並(普通)掛けが一般的ですが、メーカーによっては流れ易い釉も
ありますので、その場合には薄掛けにします。
③ メーカーによっては、酸化と還元の両方で使える釉もありますが、(酸化と還元では若干差が
ありますが・・)、還元焼成すると、完全に別の色になってしまう釉(緑色)もありますので、
注意が必要です。
④ 油揚げ手黄瀬戸釉: 光沢の少ないやや焦げのある油揚げと呼ばれる釉肌で、表面が滑らか
でなく、やや「かさついた」感じになり、ぐい呑み等の酒器や懐石料理の器(向付など)に
珍重されています。
2) 黄瀬戸マット釉: 黄瀬戸土に施釉し、酸化で焼成すると、マット状に焼き上がります。
3) 黄色釉: 辛子(カラシ)色やカナリア色、バナナ色などの明るい黄色の不透明又は半透明の
濃い釉に発色します。これらの釉は、鉄などが釉に溶け込んだ物と違い、黄色を呈する酸化
チタンや、酸化ルチール(チタンを含む天然素材)などの顔料が、添加されたものと思われます。
顔料は、釉に熔けずに分散したもので、色は綺麗で安定していますが、単調感は否めません。
更に、下絵付けの色も隠してしまいます。
4) 淡黄釉: やや透明性を有する黄色の釉です。鉄分が2%程度でこの色が出るそうです。
5) 黄伊羅保釉: 流動性のある釉です。斑(まだら)に流れ落ちる釉が見所となります。
長石と土灰の配合によって得られる釉です。灰に含まれる鉄分などの雑味成分が、肌に景色を
作ります。伊羅保釉には色違いの釉も多く存在しますが、黄伊羅釉は、鉄分を多く含んでいます。
① 焦茶が強い流動性のある結晶釉です。焼成温度、雰囲気、焼成時間、窯詰めの仕方など、
各種条件によって、様々な様相を呈しますので、どの色が最良とは言えません。
好みの色に焼き上げる為には、試行錯誤を重ねる必要がありそうです。
② 極端に薄掛けにすると、焦げが強く発生します。
6) 古瀬戸釉: 熔け易く(1220℃)斑(まだら)状に流れ、流れた部分(釉溜り)は黒く線状になり
ます。鎌倉、室町時代に焼かれたものを古瀬戸と呼びます。
釉は土灰や天然木灰と長石を調合した釉に、鬼板などの鉄分を入れたもので、成分の違いに
より黒、褐色、黄色に焼き上がります。
7) 土鍋用黄色釉: SK-5a(1180℃)で焼成する釉です。
8) 金結晶釉: 流動性が強い釉ですので、焼成温度と、施釉の範囲に注意する必要があります。
以下次回(青系、紫系)に続きます。