わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問、相談7-1 陶芸を習うという事。

2013-07-23 22:33:14 | 質問、問い合わせ、相談事

R子様より、以下の相談を受けましたので、このコーナーに掲載します。

はじめまして、R子と申します。昨年陶芸を習い始めました。ひと月に2回です。

手びねりで小鉢を3個、たたらで花器1つ、小皿4枚を作り、今は菊練の練習とロクロで土殺し、湯呑み

(まっすぐに引き上げる)練習をしています。自分の作りたいものって、まだよくわからなくて、でも何か

表現したい気持ちはたくさんあります。まだ一年なのに、焦り過ぎだと言われます。

もっと土に触りたいと思い、教室の手伝いをし始めましたが、なんか自分のやってることに疑問を

感じています。土練機や生徒さんの作品にサンドペーパーかけてきれいにしたり。

工房の手伝いをして、基本的なことを身に着けられるのではと思っているのですが、作陶の時間は

月2回のままです。手伝うより、作陶の時間をお金を払って増やす方がやはりいいのでしょうか?

ここの先生は、もとサラリーマンで10年前に専門学校を出て教室を開き、今年で9年目です。

弟子をとったり、スタッフを雇う気はなく、すべて一人でされています。

基本は陶芸教室ですが、カルチャースクールでも講師をしておられます。

教室のスタイルは、自分の作りたいものを楽しく作る。だから、基本的なこと以外は全て自由。

手出しもないし、あまり生徒さんが上手くなることにも関心がなさそうです。

夢中になるくらいしっかり取り組みたいと思っているのですが、私のやってることって見当外れ

でしょうか。変な質問ですみません。何かアドバイスあれば、宜しくお願いします。

 

◎ 明窓窯より: 役に立つかどうか不明ですが、私なりの考えを述べたいと思います。

 相談の内容を整理すると、以下の様になると思われます。

1) 昨年から月2回のペースで陶芸を始め、手捻りで小鉢3個、花器1個、小皿4枚を制作し、

   現在、轆轤作業の菊練と土殺し、及び湯呑の練習している事。

2) 教室の手伝いをしている事。その事に疑問が生じて来た事。

3) 先生の指導方法は、基本的な事は以外は全て自由で、教えて貰え無い事。

4) 「お金を掛けてでも、手伝いを辞めて、作る事に専念した方が良いか?」と迷っている事。

・ ここからが、私の考えとなります。

1)に付いて、作品の制作数が少なく感じます。

 ① 昨年からとの事ですが、もし1年でしたら24回の制作期間が有ったはずです。

   1回の時間数が不明ですが、もっと多くの作品が作れたと思われます。

   又、作品の種類も少ない様に感じます。

 ② 手捻から、電動轆轤へ移行するのが常套手段ですので、現在の菊練りや土殺し、湯呑の制作の

    練習は、そのまま続ける事です。即ち、湯呑作りは轆轤技術の基本であるからです。

    但し、轆轤挽きした幾つかの作品の内、1個は完全に作品に仕上げる事です。乾燥、底削り

    までの工程を行う事です。更に素焼き後の釉掛けも自分でし、焼成して貰い仕上げて下さい。

    そうする事で、陶芸作業の全ての事を学ぶ事が出来ます。単に轆轤挽きが上手に成るだけで

    無く、陶芸の全体の流れを掴む事で、陶芸の難しさや面白さ等が見えてきます。

2)に付いて。 弟子やスタッフを採らない方針のようですので、無給の手伝いと思われます。

  手伝うに当たり、交換条件を出さなかったのでしょうか?。 折角教室に出入りしているならば、

  手の空いた時間や、生徒さんのいない時、教室の終了後など、幾らでも無料で練習が可能と

  思われますが、その辺はどんな状況でしょうか?例え短い時間で、指導して貰わなくても、土や

  轆轤をいじる事は、大いに勉強になるはずです。

3) 指導方法は人により色々なやり方が有りますので、一概に自由にやらせる事が悪い訳では

   有りません。「一番良い教え方は、教えない事だ。」と言う言葉が有る程です。即ち教わった事は

   身に着かない事が多く、自分で学び取った事が本当に身に着くと言う事です。

   基本的には、「技は盗んで覚えろ」と言う事ですので、先生の技を盗み取る事です。

   現在あなた様は、授業料を支払わずして、その環境にいると思われます。

   先生があなた以外の生徒に指導している状態を見て下さい。先生が手本を示すならば、それを

   盗み見てください。又先輩がいるならば、先輩のやる事を見習って下さい。(習う事とは真似る

   事とも言われています。)

   蛇足ですが、昔の陶工の修行は上記の状態で行われていました。即ち直接教えてくれる人が

   いないなかで、技を盗み取り、技を磨いたと言われています。

   他の人の作品にヤスリを掛けているとの事ですが、これは他の人の作品を手に取る事のできる

   チャンスだと思って下さい。その作品の形や肉厚、重さなどを見て、良い所と悪い所をご自分の

   目で確かめる事が出来、良い所を真似たり、自分ならこうすると言う考えが出来るようになる

   はずです。

   更に、先生にはどんどん質問する事です。教えてくれなくても、質問には喜んで答えてくれる

   指導者は結構いるものです。特に男性にはこの傾向が強いです。

4) 手伝いを辞める必要はありませんし、お金を掛けて習う必要もないと思います。

   但し、手伝いも程ほどにして、制作時間を取る様に心掛ける事です。

5) 最後に、先生は現在あなたが陶芸を続ける意思があるかどうかを、試しているとも見えます。

   「まだ一年なのに、焦り過ぎだ」と言う言葉に表れている様に感じられます。

   私の経験では、陶芸を直ぐに辞めていまうタイプの人は、

  ① 「暖め易く、冷め易い人」は長続きしません。  

     逆説的ですが、早く技術を憶えたくて、熱心に陶芸に打ち込む人は、長続きしません。

     陶芸は面白いと思い込み、最初から意気込む人程、早く陶芸に飽きてしまう様です。

  ② 「器用な人」も直ぐに辞めるタイプです。

     器用の人は他の人より、飲み込みも早く、技術の上達も早いです。

     その為かどうか解かりませんが、ある程度で、「陶芸はこんなもんか」と一人合点し、興味が

     薄れ、他の方向に向いてしまう様に思われます。

  ・ 陶芸で習得する技術は、単に作品を作るだけでなく、広範囲に及びます。

    もしあなたが、陶芸を真に身に着けたいと思うなら、焦らずじっくり時間を掛けて一つずつ身に

    着けることですし、先生もあなたの性格が陶芸に向いているかどうか試しているのではないで

    しょうか。

  ・ 尚、指導者が生徒の上達に無関心と言う事は、絶対ありません。無関心に見えても、常に

    心掛けているものです。

  ・ 「弟子をとったり、スタッフを雇う気はなく、すべて一人でされています。」と有りますが。

    特別大規模な陶芸教室以外、普通の陶芸教室はこのスタイルが一般的です。 

以上 長々と述べましたが、参考にして下さい。  

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