わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

造る82(壷17、扁壷を作る4)

2013-05-19 21:21:45 | 陶芸入門(初級、中級編)

「壷」ではなく、あえて「扁壷」を作る理由として、用途からの開放という事が挙げられます。

 a) 即ち、従来「壷」は、茶壷、油壷、酒壷、種壷などと、食料や飲料を蓄えたり運搬の容器として

    使われ、各々その目的がはっきりしていました。軽くて丈夫で容量が大きい壷が要求されて

    いましたので、どうしても丸味のある「壷」が適し、作られていました。

 b) 現在では、容器としての目的も薄く成ってしまいました。(他の材料で作った方が有利です。)

 c) 従来の壷は大小はあるが、似通った形ですので、広い意味で「扁壷」にする事により、幅広い

    形の作品を作る事ができます。更に、容量をさほど気にせずに形を作れるのも魅力の一つです

 d) 絵付け、彫刻などの装飾を施すスペースを作る事が出来る。

    従来の壷でも、絵付けや彫刻、押印(印花文)などの装飾を施す事も可能ですが、「扁壷」の

    方が平面に近い形の場所を多く持つ為、装飾の範囲が広がります。

    逆に、その様な装飾を施す為に、あえて「扁壷」の形を選ぶのかも知れません。

前置きが長くなりましたが、本日の本題に入ります。

3) 扁壷を作る。

 ④ 手捻りで「扁壷」を作る。

    「扁壷」のイメージは、円形の壷で左右両面を板などで押して、薄くした形の物ですが、「四角い

    物」や「多角形」、「不定形の物」の壷も、広い意味で「扁壷」と呼ぶ事があります。

    実際に、製作者がご自分の作品に「◎◎扁壷」と命名しています。

    この様な形の場合は、タタラ作り、紐作り、型を使うなどの、手捻りで作る事が多いです。

   ) 四角い扁壷を作る。

      奥行きの浅い四角い箱を作り、脚と頸を付けた形の壷(又は花器)です。

     a) タタラ板を6枚用意します。

      即ち、前と後面の2枚、左右面の2枚、天井と底の2枚が必要です。各々同じ大きさであれば

      左右対称で、前後対称の壷になります。タタラの厚みは、作品の大きさや装飾の方法に

      応じて、5~10mm程度にします。彫刻を施す場合には、肉厚にします。

      真四角であれば、前後面の板は正方形になります。

      「扁壷」にするには、扁平にする為、左右面と天井と底の4枚のタタラの横幅(奥行き)は

      小さく(狭く)する必要が有ります。

    b) 貼り合わせの技法で、密閉された四角い箱を作ります。

      作り方は今までに述べてきましたので、要点のみをお話します。タタラ板は自立できる程度に

      乾燥させてから、貼り付ける面に刻みと「ドベ」を塗って、圧着します。

    c) 上記の四角い箱をどの様に使うかによって、形が大幅に変わります。

      即ち、縦長又は横長、あるいは斜め45度に立てた作品にする事も可能です。

   ) 変形の扁壷を作る。

    a) 側面になるタタラ板に、前後の二枚の平たいタタラ板を、サンドイッチ風にした「扁壷」を作る

     イ) 二枚の板はどの様な形でも問題ありません。丸、三角、多角形、不定形など自由に作り

       ます。完全に平坦でなくて、蒲鉾(かまぼこ)型や多少凸凹していても、さほど問題に

       成りません。 この場合には、側面のタタラが二枚の板に隙間無く密着させる為、ある

       程度の工夫が必要に成りますが・・・

     ロ) 側面になるタタラ板を作り、表と裏の板を貼り付ける。

        側面になるタタラ板はなるべき途中で繋ぎ目が無い、一枚板にしたいです。

         (合わせ目の水漏れ防止の為) 

      ・ まず、裏側になる板の内側を上にして寝かせ、その上に側面の板を垂直に貼り付けます

        貼り付ける位置は、裏板の外周に沿う場合と、数cm内側に貼る場合があります。

        即ち、裏板が側面より飛び出ている形状に成ります。

        細い紐土を使い繋ぎ目の隙間に入れ込み、隙間が出来ない様にします。

      ・ 同様にして、表の板も貼り付けますが、面積が広い場合には、側面の板のみでは

        支えきれずに、中央部が凹む(弛む)事があります。

        その際には、新聞紙等をクシャクシャに丸めて中に入れ、凹みの発生を防ぎます。

        尚、新聞紙は素焼きの際に焼失してしまいますので、取り出す必要はありません。

        繋ぎ目には、隙間が出来ない様に注意します。

      ハ) 脚(あし)を付ける。

         「扁壷」の様に奥行きの無い作品では、前後に倒れ易いですので、何らかの工夫が

         必要です。基本的には、前後方向の接地面積を増やす事です。

        ・ 例えば、現在の薄い液晶テレビ等の脚の形が参考に成るかも知れません。

      ニ) 頸を付ける。

         頸の長さと形を決めますが、、全体のバランスを考えれ決める必要があります。

         作り方は轆轤挽きでも手捻りであっても良く、形も丸でも、四角形でもかまいません。

 作品例として、 河井寛次郎氏(1890-1966)作。 

  「花扁壷 鐡薬」 高さ20cm 幅17×12.5cm があります。

  その他にも、多くの作家さんが「扁壷」を作っていますので、ネットでも見る事が出来ます。

  興味のある方は検索して、ご覧下さい。    

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