わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

乾燥のメカニズム 1

2010-04-05 22:32:12 | 失敗と対策
乾燥については、以前(2009年、4月)に、カテゴリー「素焼の話」の中で、お話しましたが、

別の角度から、再度、お話したいと思います。

 陶芸で、一番問題に成るのは、「色の良し悪し」よりも、作品が製作途中(完成前)で、壊れや、割れが

 出来る事です。
 
 陶芸をある程度、やられた方なら、完成までに、壊れる危険性は、認識しているはずです。

 どんな対策をしても、壊れ(割れ)る時は、壊れてしまいます。

 前置きが、長くなりましたが、本題に入ります。

乾燥は、製作終了直後から、始まります。更に、素焼中でも、土は乾燥し、性質も変わります。

最後に、本焼きで、土が焼き締り、完全に水が抜け、使用に耐える、強度に成ります。

 「割れ、ヒビ」の最大の原因は、土(素地)の乾燥による、収縮に有ります。
 
  (尚、釉の収縮は、貫入の有無に、関係します。)

1) 素地(粘土)の水分は、製作時に必要な物で、それ以外は、不必要な物です。

   乾式加圧成形で作る、タイルなどを除けば、ほとんどの場合、素地に水を加え、練り土や、

   「泥しょう」にして、使用します。これは、あくまで、成形し易くする為の、作業であり、終われば、

   邪魔になる物と、言えます。それ故、水分を除去する必要が有ります。

   この水分を、取り除く時の方法や、速さなどで、素地が縮み、問題が発生し易いです。

2) 素地の性質による。

  ① 素地の可塑性(かそせい)の大きい程、縮み率は大きいです。

  ② 長石や珪石などや、砂、シャモット等の、非可塑性の原料が、多く入ている程、乾燥収縮が、

    少なく成り、乾燥も速く成ります。

    特にシャモットは、生素地との相性が良く、素地に良くなじみます。

3) 作品の形状による。

  ① 作品の、表面積が、容積に比べて、大きい程、乾燥は速く成ります。

    これは、空気との、接する面積が、大きい程、乾き易い事を示します。

  ② 同じ重さの素地を使っても、形によって、乾燥の速さは、変わります。

   ) 肉厚の薄い物は、早く乾燥し、肉が厚い物は、乾燥が遅いです。

   ) 球形の物や、口径の狭い作品は、内部(内側)の乾きが、遅いです。

4) 周囲の空気の温度による。

  ① 作品周囲の温度が、高い程、乾燥は速まります。空気の温度によって、空気に含まれる、

    水の飽和量は決まります。

    以下の数値は、絶対量(飽和水蒸気量=空気1立法メートル当りの、空気に溶け込む水分量)を

    表し、天気予報で使う、湿度何%は、相対量を表しますので、(絶対量に対する割合)、

    冬場で乾燥しているからと言って、絶対量が多い訳では、ありません。

    むしろ、冬場は、気温が低いので、湿度が低い(乾燥している)場合でも、絶対量は、

    20℃に比べて、格段に低く成ります(乾き難い)。

   )  5℃の空気中では: 水  6.8gが、飽和量です。

   ) 10℃      :    9.4g

   ) 15℃      :   12.8g

   ) 20℃      :   17.2g

   ) 30℃      :   30.4g

   ) 40℃      :   51.2g

   ) 60℃      :  130.g

   即ち、40℃では、20℃の約3倍の速さで乾き、 60℃では、約8倍近い早さと成ります。

   それ故、夏場と冬場では、乾燥速度が違います。

以下次回に続きます。   

   
コメント
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