アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

しあわせな孤独 2002年 デンマーク

2008-09-28 | ラブ・ストーリー
結婚を約束し、幸せの絶頂にいるとき、もし相手が不慮の事故で首から下がまったく機能しなくなっても、変わらぬ想いで一緒になることができるだろうか。

セシリは、本物と信じていた愛情が義理的なものに変わっていってしまうことに悩む。
当事者である恋人のヨアヒムも、セシリに優しくされればされるほど苦痛が増し、暴言を吐き、ままならないがゆえ気持ちもひねくれていく。

―― 今別れれば、セシリにとって、新たな幸せを見つけることが出来るだろう。 
これ以上、彼女を苦しめることは出来ない。 ――
ヨアヒムは、「また会いに来てくれれば、それでいい」と、悲しい笑顔をセシリに向けた。
相手を想うがゆえの別れ。

ヨアヒムを轢いてしまったマリーを庇い、夫ニルスは事故の責任を感じ、セシリの相談相手になる。
セシリはニルスを、いつしかヨアヒムの“代わり”として、たびたび呼び出すようになっていく。
ニルスもそれに応じていくのだが・・・

無理をして愛することほど辛いことはない。
抱けない苦しさを他者で埋めることで、自身をごまかせるのか。
優しさの押し売りも、ことによっては相手を傷つける。
よかれと思ってしたことが、かえって泥沼化し、よって自己コントロールを失っていく。
そんなお話。
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リトル・ヴォイス ’98 イギリス

2008-09-21 | ヒューマン・ドラマ
ずば抜けた才能をもちながら、それを活かそうとしないのは世間的に悪いことなのか。
その才能をどうしようなんて本人の勝手だし、他人がとやかく言うことではないだろう。
堂々と誇示しようが、爪を隠そうが、その人の人生である。

無口なエル・ヴィー(LV)は、奔放で口やかましい母親と二人暮し。
かつてレコード店を営んでいた亡き父が残した、古いレコードが彼女の宝物。
鬱積した生活の中で、唯一の心の拠り所が、名盤から流れてくる歌声であった。

母親の言う“恋人”であるレイ・セイは、LVの歌声を聴き、「天才だ」と確信する。
彼女をショーに出し売り出せば・・・
彼の成功への欲望が始まる。

「わたしに任せれば、全てがうまくいくから。 一緒に頑張っていこう」
そう励ますレイ・セイ。
慎重にLVに語りかける。
「お父さんもきっと、喜ぶと思うよ」
彼女は、「一度だけなら」と承諾するが・・・

LVを演じたジェーン・ホロックスは、口パクではなく、実際に歌っていたというのだから驚きでした。
彼女こそ天才だろう。
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女はみんな生きている 2001年 フランス

2008-09-15 | ヒューマン・ドラマ
フランス映画では、男性が女性に翻弄され“すぎる”ものが多い気がする。
もちろん現実は、男性みんながみんな振り回されっぱなしってことはないだろう。
前に、故岡本太郎氏が対談か何かで語っていたのを読んだことがあったが、映画では、そういった作品が目立つけど、実際のフランスは男性優位の国で、だから逆に女性を強くイメージすることで観客が喜ぶ、のだとか。

本作品の構成はすごくよく出来ている。
主婦のエレーヌの行動力には驚かされたけど。
彼女と主役を二分する、娼婦のノエミのこれまでの生き様がすごい。
厳格、かつ男尊女卑の家庭で起こる悲劇。
娘を人身売買さながら嫁がせようとする、父親の横暴さ。

ノエミを何としても助けようとするエレーヌ。
次々と折り重なるように問題が噴出する中、二人はそれらを乗り越えていく。
彼女たちが何故ここまで強くなれたかは、それぞれ心に負った傷が深かったからだろう。

一言で、「女、強し」といった作品。
とにかく徹底的に女性が〈賢者〉で、男性を〈愚者〉に描いている。
うーん、ここまで男たち(特に、エレーヌのダンナ)を愚かしく表現されては、当の男性諸氏も、観ていて苦笑いするしかないだろうなぁ。
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ピアニストを撃て ’60 フランス

2008-09-06 | 文芸
相手を不幸にしてしまう性分というのは、自分ではどうにもならないもの。
自身を呪うしかないのだろう。
本作品の主人公シャルリが愛した妻テレザと、後に恋人となるレナ。
二人は無常にも命を絶たれることとなる。

ピアニストとして大成し、名声を得たシャルリ。
だが、成功したと同時に妻のテレザは殻に閉じこもるようになる。
やがて苦しみの果てにテレザは、夫に罪の告白をする。
「あなたが成功したのは、わたしが身を犠牲にしたからなの。 汚れたわたしにはもう触れないで」
シャルリは心の中で思う。
「彼女を許せ。 ひざまずくんだ」
しかし臆病者は、黙って部屋を出てしまう。
すぐに部屋に戻ってみたが、時すでに遅し。
テレザは、アパルトマンの6階から身を投げていた・・・

酒場でピアノを弾くシャルリ。
しがない仕事ながらも、彼のピアノで店も繁盛。
そこに、シャルリを慕い続ける女給士レナがいた。
「エレーナがエレナ、そしてレナ、よ」と自分の名を言う。
ふたりが寄り添うのに、そう時間はかからなかった。
レナはシャルリの過去を知っていた。
有名だったピアニストが、何故ここまで落ちぶれてしまったのかを。

酒場の店主とのトラブルや、ギャングたちから逃げ続ける兄のシコを庇ったために、シャルリ自身にも危険が降りかかる。
レナは懸命にシャルリを助けようとした。
「車を借りたの」
ふたりは、シコたちが潜伏している山荘まで走らせた。
しかし追っ手はやってくる。
レナはシャルリを庇いに駆け出す。
銃声が轟く。
レナは真っ白な雪の中へ崩れ落ちる・・・

軽やかなピアノの音が聞こえる。
店はいつものように繁盛していた。
シャルリの顔がアップになる。
その明るい音色とは裏腹に、そこには何も見えていない、ただ虚ろな表情があるばかりであった。
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