アブリコのCinema散策

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ベニスに死す ’71 イタリア

2012-02-26 | ドラマ
本作品を初めて観たとき、この映画は一体何をいいたいのか解らなかった。
初老のオジサンが、限りなく美しい少年に目を奪われ死んでしまう。
なんなのだ、これは。
いや、まだ映画というものを解っていなかった頃である。
あれから何度か見直しては、その都度印象が変化してきたのは確かだ。
ビスコンティ監督の芸術的作品であるからして、端的にこの話を考えてはいけないのである。

耽美主義をうたい文句にした、悲劇の物語である。
療養に訪れていたイタリアのベネチアで、男は、自分が追い求めていた完全たる美をもつ少年に目に留まる。
上流階級の一族が、別荘にでも訪れているのだろう。
見るからに、品の良さを醸し出していた。

人は、美しい人やものを見ると、小さく「ほぉ」と溜め息をつく。
まさに、この男が目にしている美少年は、その究極たる対象である。
驚きにも似た恍惚の表情が、男の心の内をよく表している。
そしてまた、その思いに苦悩する。
どうしようもない。
わたしが追い求めていた本物の美しさをもつあの少年をどうすることもできない。
ただ、偶然でもいい。
この目に、いつも焼きつけておきたい。

当時ベネチアでは、疫病が蔓延していた。
療養に来ていたはずのこの男も、この流行り病に冒されてしまう。
自分の命は、もはや長くない。
だが、己が信じてきた美しさを見ながら死ねるのであれば本望であろう。

彼は、自分も美しくあろうと化粧をほどこす。
かなり厚塗りに。
高熱と夏の暑さで、汗が流れ落ちる。
涙と汗が入り混じる。
化粧が無残にもはがれ落ちてゆく。
遠くに、少年のまばゆいばかりの笑顔が見える。
キラキラと輝いている。
ああ、わたしは幸せだ。
そのまま息絶える絶望的なラストシーン。

美にかなうものはない。
美しさに酔いしれるほどであればよいが、探求するがあまり、のめり、惑い、もがき苦しみ、あやしさから抜け出せなくなると、もうそれは、あなたの負けなのである。
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