アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

マッハ! 2004年 タイ

2007-10-27 | アクション
久々のタイ映画であった。
昔話風なストーリーを現代に置き換えたようなお話。
村の一番強い若者が、盗まれた村の大事な仏像の首を持ち帰ることをみんなに約束し、首都バンコクへ向かう。

内容よりも、激しいアクションが物を言う、といった作品である。
8割がた彼の肉体を駆使した格闘場面であって、ワイヤーもCGも使わず、本人はもちろん、スタントマンも使わない体当たり演技を見せていた。
格闘技を観るのは嫌いではないが、さすがにここまでやると、溜飲が下がりそうにも、返って上がってきそうだ(苦笑)

これは誉めたい!と、思ったシーンがある。
アクション映画にはつきもののカーチェイス。
車やバス、トラックにバイク・・・などが一般的であるが、なんとここでは、トュクトュクの大追跡だったのである。
〈その国らしさ〉を出した、非常に独特な場面であって、「これはいいなぁ」と思わず身を乗り出してしまいましたよ。
ありきたりな場所や小道具を使っても、物珍しさは感じられないのが現実。
この意表をついた演出はよかった。
トニー・ジャーのムエタイ・アクションも悪くはないけど、個人的にはトュクトュクの大暴走に軍配を挙げるかなぁ。

アンタッチャブル ’87 アメリカ

2007-10-23 | アクション
“映像の魔術師”といわれるブライアン・デ・パルマ監督。
本作品では、いつもより控えめなカメラワークであった。
頭上からの撮影やスローモーションぐらいにとどめていたが、やはり見せるところは見せてくれる。
得意の派手めなサスペンスものと違って、今回は実在した話であったから、カメラテクニックというよりも、ストーリー重視といった感が強い。

1930年、暗黒街を牛耳っていたアル・カポネを何とか告訴すべく、財務捜査官のエリオット・ネスは三人の骨のある男たちと、証拠をつかもうと命がけで奔走する。

ネス役のケビン・コスナーと、若手警官ストーンを演じたアンディ・ガルシアは、共にこの映画でブレイクした。
線の細さが懸念されたコスナー、初老警官マローンに扮したショーン・コネリーの前では青臭さが漂っていた風ではあった。
だが人気に火がつき、思い上がり路線を突っ走ってしまったその後は哀れなものである。
一方ガルシアは、ひたすらマジメに仕事をし、家庭も大事にしているだけあって息も長く、作品のオファーも絶えることがない。

デ・ニーロがカポネを演じるにあたり、髪の毛を抜いたという話は有名だが(体重ももちろん増やしました・笑)、故松田優作は『野獣死すべし』の際、奥歯を抜いて役に挑んだ。
もうここまでくると、プロの域を超えている。
役作りというけれど、それは役者それぞれの考えによるものだろう。

「ビジネスは野球に似ている。 バッターボックスに立つときは一人。 攻めるときは、ガンガン打ちまくればいい。 だが守りに入ったときは、チームワークが大事だ。 一人でもミスれば台無しになる」
カポネの言葉が印象的であった。

タクシードライバー ’76 アメリカ

2007-10-15 | ドラマ
「どうして、タクシードライバーになろうと思うんだ?」
「夜、眠れないからさ」

午後6時から翌朝の6時まで、ここニューヨーク市内を、トラヴィスは客の言うままに車を走らせる。
彼は言う、ゴミ溜めのような、下水のようなこの街にはうんざりだ、と。
あらゆる犯罪が横行するこの街を、本物の雨が洗い流してくれるのを待っているのだ、と。

70年代のニューヨークといえば、彼が言うとおり本当に酷かったようだ。
街は汚れ、犯罪件数は増加する一方。
一歩、危険区域に入ってしまったら、身の安全は保障できない。
前に、スラム街をバスで観光するなんていう馬鹿げたものがあったっけ。
見世物じゃあるまいし。
ジュリアー二前ニューヨーク市長が、この街の空気を入れ替えたのは記憶に新しい。
こういう気骨のある人が、何故日本の政治家にいないのか。
不言実行を貫く人の何たる少なさよ。

じき大統領の暗殺計画を企てるトラヴィス。
銃を買い、体を鍛え上げる。
やや狂気めいた展開は、多少強引なようにも思えたが。
孤独な稼業に疑問をもち、「何かをやってみたい」と同僚に打ち明けていたトラヴィスが、見事、英雄沙汰にまでになったのは、偶然だったのであろうか。

今夜もまた、彼は眠らない街をひた走る。

離愁 ’73 フランス

2007-10-08 | ラブ・ストーリー
第二次大戦中、戦禍を逃れるため、ベルギーに近い小さな村の住民たちは、疎開先へと列車に乗り込む。
臨月の妻をかばいながら、男は最後尾の貨物車両へ。
身体のためと、妻と娘は一等の客車へ優先させてもらえた。

家族と離れ、見知らぬ者たちとの数日間の列車移動。
そんなとき、男は同じ車両の中で一人の女性と目が合う。
たちまちふたりは激情にかられ・・・
密室とはいえ、くっつき合うようにして他人と雑魚寝している中、情を通じるってのは、これは国民性なんでしょうか?
「もう今しかない!」とか?(笑)
停車中、女が伝線したストッキングを脱ぎ捨てる。
枝にひっかかるそれが、妙に生々しい。

知的な色気のあるロミー・シュナイダー。
彼女の横顔って、とても美しい。
男が「素敵な寝顔だ」って言うけど、ホント、そう。

この邦題のように、昔の作品は原題と全くかけ離れていても、そのものズバリの題名が多かった。
作品のポイントをしっかりとつかんでいたなぁ、と感心してしまう。
そのポイントとなったのが、切ないラストシーン。
結局男はシラを切り通せず、女の頬に手を添える。
言葉は何もない。
女は目を閉じ、悲痛な表情を浮かべる。
男女の弱さを明確に映し出した、名シーンであった。