アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで 2008年 アメリカ

2014-09-30 | ヒューマン・ドラマ
「夫婦げんかは犬もくわない」というが、その程度のけんかなら、むしろ仲のよい証拠だろう。
これを「諍い」と言葉をかえると、多少、おだやかではなくなるニュアンスになる。
そしてこれが「ののしりあい」となれば、いよいよすさまじさが増してくる。

フランクとエイプリルは理想的な夫婦に映っていた。
ふたりは、初めこそ惹かれ合って一緒になったはずである。
だが時間が経つにつれ、複雑に絡み合ってしまった糸のように、もはや互いの気持ちをほぐしていくには非常に困難な状況に陥ってしまっていた。

憎いわけではないのに、嫌いなわけでもないのに、口から出てしまうのは、相手を傷つける言葉ばかり。
ふたりはお互いに無理をしすぎてきたのかもしれない。

冷えきってしまった夫婦の物語というのは、観ていてもブルーになってくる。
'89の『ローズ家の戦争』は、その名のとおり"戦″のようなストーリーだったが、これはコメディだったし、ブラックユーモアがわかるなら受け入れられるだろう。
フランクとエイプリルの場合、ひたすら暗く、重い空気が漂う。

大ヒット映画『タイタニック』以来の共演だったレオ様とケイト・ウィンスレット。(+ キャシー・ベイツも参加していた。)
11年振りとはいえ、息の合ったシリアスな演技を見せてくれた。
どちらも幸せになれなかった結末という共通点はあったが、役の上でのふたりの信頼の度合いに関しては、180度異なるものであった。

ふたりが新居に選んだのは、レボリューショナリーロードに面した、不動産屋イチオシの物件であった。
″レボリューショナリー revolutionaly"だけあって燃え尽きてしまったのかどうかはわからないが、これが、"エボリューショナリー evolutionaly"であったら、まだ救われたかもしれない。

リトルダンサー 2000年 イギリス

2014-09-05 | ドラマ
今年(2014年)は、ローザンヌ国際バレエコンクールで、ソチオリンピックのフィギュアスケートで、それぞれ日本男子がトップに輝いたことで大いに注目を集めた。
本当にすばらしかったし、美しかった。

今日の日本では禁句に等しい「~らしくしなさい」という言葉。
「男の子だから、女の子だから、こうしなくてはいけない」というのは時代遅れも甚だしい。
のびのびと、自分のやりたい芸術やスポーツ、はたまた多方面にわたって、男女隔てなく活躍できることは素敵なことだ。

イギリス、保守的な炭鉱の町に住むビリーは、ボクシングよりもバレエが好きな男の子。
父親には内緒で、密かにバレエのレッスンを受けていた。
後に事実を知った父は、頭から湯気を出す勢い。
「絶対に許さん!」

ビリーはあきらめたくなかった。
素質は備わっていた。
彼は父の前で踊った。
無我夢中で踊った。
その勢いに息をのんだ父は、考えを改める。
あいつに、本格的にオーディションを受けさせてやろうか・・・。
ロンドンまでの交通費、受験費用、その他いろいろとお金はかかる。
父は妻の形見までも質に出す覚悟でいた。
ビリーのためなら、母さんも許してくれるだろう。

バレエ学校でのオーディションは緊張もあってか、パッとしない出来栄えであった。
思いどおりにからだが動かなかったことにビリーはイラつき、ほかの生徒にあたってしまう。
面接時での親子二人は、半ばあきらめの態度であった。
面接官たちも、いまいちよい返答がないことに残念な思いがあらわになっていた。
退席の際、一人の面接官がそっと聞いた。
踊っているときはどんな気持ちか、と。
「わからない」
落胆する面接官。
「・・・でも・・・」
何気に続けたその返事に、彼らの表情が和らいだ。

家族の支えほどありがたいことはない。
もちろん周囲の協力もあってこそだが、根本は親の子への真意である。
苦労を苦とは思わず、いかに子どもの熱意を伸ばしてやれるか。
子どもの関心ごとをつまらないことだと決めつけず、一緒に喜んであげられることがどれほど大切なことか。
才能の芽をつぶしてしまったらもったいない。