アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

パリ空港の人々 ’93 フランス

2005-09-29 | ドラマ
ワケありで、空港内に滞在せざるを得なくなってしまったストーリーというと、話題となった’04の『ターミナル』かもしれない。
莫大なお金をかけて、本物そっくりの空港内部を再現させ、主演は適役のトム・ハンクスであった。
だがこれ、あまりにもドラマチックに仕立て上げすぎで、どうも鼻につく。

本作品の主人公、フランス人のアルチュロは、カナダからの機内でバッグを盗まれ入国できず、身元が確認できるまで、ここ、パリのシャルル・ド・ゴール空港内で足止めをくってしまう。
我々日本人にはわからないが、欧州では二重国籍を持っている人が多く、現住所が他国にあったりなんだりすると、どうもややこしくなりそうなんである。
ちなみに彼は、カナダ生まれでフランスとカナダの国籍を持っていて、妻がスペイン人で、現在の住まいはイタリア・・・

彼が数日間身を寄せたのは、〈通過客待合室〉。
そこには既に、4人のワケあり滞在者たちが暮らしていて・・・

彼らの祖国に帰りたくても帰れない理由から、時に見せる沈痛な表情には察する部分が大きい。
重くなりがちな映画になりそうだが、いえいえ、それがクスリと笑える場面も多々あって、観終わった後、少し優しい気分になっている自分に気づくと思う。

その後、アルチュロとやたらキツイ奥さんとの間で、ひと悶着あったであろうことが、やや気がかりであるのだが・・・ 

コーカサスの虜 ’96 カザフスタン・ロシア

2005-09-26 | ヒューマン・ドラマ
戦争の愚かさをうたった本作についてセルゲイ・ボドロフ監督は、こう述べている。
「戦争を始めることは簡単であるが、終わらせることは難しい。 人を愛することよりも、殺すことのほうが簡単なのだ。 だが、私たちは努力するべきだ」

この映画では、残虐な戦闘シーンなどは出てこない。
人間の性質に重きを置いている。

チェチェンの村で捕虜となった二人のロシア兵。
若い兵士と、その上役。
腹を割って語り合うなどありえない間柄であるこの二人は、捕われの身となっている今、友情にも似た心を通わせる。

この村の者たちは温かかった。
敵であるにも拘らず、彼らは優しかった。

人間同士傷つけあって、一体何になるというのだろう。

捕虜としての生活の中では、心の交流に重点を置いた場面が多い。
殺戮シーンなどが、くどい程出てくる米映画と違い、我々に、人間は残酷なだけではないのだ、温かい涙も流せるのだと、ボドロフ監督は言いたかったのかもしれない。

ロシア空軍機の群れが、轟音と共に、村の上空を覆う。
走りながら若いロシア兵が、声を絞り出して叫ぶラストシーンに、胸が絞めつけられる思いがした。 


ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 2001年 アメリカ 

2005-09-21 | ドラマ
捉えどころがない、と言ってしまえばそれまでだが、最初から最後まで淡々と進行する、テネンバウム家の悲喜こもごもをつづったお話。

法律家であったロイヤルは、妻と別居することに。
養女であるマーゴを含め三人の子供たちは、皆天才揃い。
〈第一章〉となる22年後までに、一家は離散。
やがて、ずっと音信不通であったロイヤルが、家に戻ってくるのだが・・・

キャスティングがよかった。
主、ロイヤルをジーン・ハックマン。
以前にも述べたが、本当に演技派といわれる役者はコメディも上手い。
好き勝手をしてきたお調子者のロイヤルを好演していた。

それから目を引いたのが、マーゴ役のグウィネス・パルトロウ。
今回の役は、彼女の新境地といってもいいんじゃないかな?
彼女のイメージをひっくり返すようなキャラだったし、個人的には、こういったヒネくれタイプのほうが、彼女には合ってると思う。

〈序章〉から〈終章〉まで、場面ごとにつづる方法は他でもよく使われるが、マーゴが劇作家という設定からか、なかなかシャレていてよかった。

元天才児たちも大人になれば、わりと情に流されやすい凡人と化するのであろうか。
頭が良すぎれば良すぎたで、それなりの葛藤も生じやすくなるし。

ふと世間を見渡すと、そういった例が結構あることに気づかされる。
 

レッドブル ’88 アメリカ

2005-09-16 | アクション
アーノルド・シュワルツェネッガー・現カリフォルニア州知事が、旧ソ連の刑事に扮し、麻薬組織の首領を追うべくアメリカ、シカゴに飛ぶ。

’84の『ターミネーター』の延長のような動きと、銃をブッ放す勢いは彼ならではだろう。

シカゴで組まされた相棒役に、ジム・ベルーシ。
確か彼は、’89の『K-9』で犬と組まされてたっけ。
二人の対照的な性格と、全くかみ合わない会話がおかしい。
「ソ連の銃が世界一だ」と主張するダンコー。
片や相棒は、「何を言ってる、マグナム44が世界一だ」と豪語する。
「なんてったって、ダーティハリーが使ってんだぞ」
「・・・ダーティハリーって誰だ?」

何事もソ連流に徹していたダンコーであった。
郷に入っても従わないガンコさである。

空港での別れのシーンでダンコーが、「俺たちは政治家ではない。 だから友人になれる」と言うところがいい。
腹のさぐり合いをしながら、表面上友と偽っているのはやっぱりよくないよね。
例えば、どっかの国とどっかの国とか。(笑) 
 

メルシィ!人生 2000年 フランス

2005-09-11 | コメディ
フランスの大物俳優がくり広げる、ハートフル・コメディ。

妻に見捨てられ、一人息子には軽蔑され、果てには会社もクビになりそうな、マジメだけが取得のピニョン。
すべてが悪い方へ向おうとしていたところ、引っ越してきたばかりの隣人の男から、あれこれとアドバイスを受けるうちに、あらあら!どんどんピニョンの人生に光が射してきて・・・

ピニョンに扮したダニエル・オートュイユと、人事部長役で出演していたジェラール・ドパルデューがよかった!
この二人、演技派なだけに、こういったコメディをやらせてもやっぱり上手い。
いつも同じ役柄しか演じない(演じられない?)役者さんとは違いますねぇ。
あ、逆にいつも同じ役柄だから、安心するって見方もあるか。(笑)

ピニョンを毛嫌いしていた、マッチョな人事部長のサンティニ。
彼が同僚の企みによって、どんどん軟弱化していく様子が笑える。
ピニョンを見つめる目なんて、マジで恋しちゃったの!?と思えてしまう変貌ぶり。

終盤、すっかり自分に自信を持ったピニョンが誇らしく見え、頑張ったじゃん!と肩を叩いてあげたくなってくる。
元妻に面と向って、「君が本当に嫌なやつと分かってよかった」と断言するとこなんて、いやぁ、よく言ったじゃん!と背中を叩いてあげたくなってくる。
一年後の社員たちの集合写真で見せたピニョンのタックルに、よくやったじゃん!と拍手したくなってくる・・・が、堂々と真ん中に割り込んじゃえばよかったのに、と思うけど、そこが彼の控えめでいいところなんだろうな。
 


6ixtynin9(シックスティナイン) ’99 タイ

2005-09-08 | アクション
OLのトゥム(といっても冒頭で会社を解雇させられてしまうんだが)の住む部屋番号が〈6〉。
実はそのプレートが壊れていて、ちょっとの振動でもあると、クルンと逆さまになってしまい、なんと〈9〉になってしまう。
それが後々やっかいな事に・・・

本当の〈9〉号室の部屋へ向うはずが、「お、ここだ」とトゥムの部屋の前に、大金の入った箱を置いていく男。
限りなくヤバイ金に違いないのだが・・・

そこから展開がすごいことになっていく。
カワイイような顔をしていながら、この主人公のトゥム、自分の身を守るために次々と凄まじいことをやってのけていく。
度胸があるってモンじゃない。

演じているラリター・パンヨーパートって女優さん。
どうもタイ人ぽくないと思ったら、イギリス人とのハーフだそう。
あちらの女優や人気アイドルたちって、白人とのハーフが多いようだ。

おぞましいような場面も、何だかコントを見ているようだし、変にオドロオドロしくなく仕上がっていて、なによりテンポがいい。
メイド・イン・タイランドのアクション&サスペンス&コメディのごった煮、笑わせてもらいました! 

デュエット 2001年 アメリカ

2005-09-04 | ドラマ
アメリカ各地のカラオケ・バーでは、カラオケ愛好者たちが、自慢ののどを披露しようと夜毎集まってくる。
そして、各バーの優勝者たちは、5000ドルを目指し、カラオケ・コンテストに挑む。

のっけからシブイ声で歌っていたのはヒューイ・ルイス。
立ち寄ったバーの優勝者に対抗して、ちゃっかり歌って、掛け金も手に入れてしまうのだが、それはちょっとズルイよ!
だってあなた、ヒューイ・ルイスだし。(笑)

彼の娘役で出演していた、グウィネス・パルトロウ。
うわさのとおり歌、お上手でした。
吹き替え無しの地声だそうで、少し見直しました。
これをもし、実の親子であるスティーブン・タイラーと、リブ・タイラーが演じていたらどうだったかな?と思ったりしてみたが、それはそれで面白いかもしれない。
でもスティーブンじゃ、インパクト強すぎるか!?

この映画の監督は、グウィネスの今は亡き父上だそうだが、娘を出演させたわりには彼女の出番が意外と少なかった。
でも愛娘だけあって、結構可愛く撮ってあげてたな。

笑えたのは、マイレージを80万マイルもためたのに、なかなかそれを使えないってとこ。
いつでも宿泊(航空会社提携ホテル)に使えるとは、限らないってことですか?

歌は国境を越える。
自信がある人は、あちらのカラオケ・バーで試してみるのもいいかもしれない。



狂っちゃいないぜ ’99 アメリカ

2005-09-01 | ドラマ
旅行やビジネスで、帰省や所用で、飛行機を利用するときがある。
我々が安全に目的地に着けるのは、パイロット以上に、航空管制官たちのお陰でもある。

ニューヨークの航空交通管制では、1日に7000機近くを誘導しているらしい。
これをほぼ毎日・・・
めまいがしてくるほどだ。

本作では、キャスティングがなかなかであった。
やり手の管制官、ニックにジョン・キューザック。
実の姉のジョーンと、ますます似てきた感がある。(ホント、そっくり!)
そして、ニックのライバルとなるラッセルに扮したのが、カメレオン俳優、ビリー・ボブ・ソーントン。
彼の妻役がアンジェリーナ・ジョリーであったのだが、まるで当時の彼らのプライベートを、そのまま見せつけていたかのようであった。

自分が一番と思っていたところへ、強敵なるラッセルが加わったことにより自分を見失い、コントロールできなくなってしまったニック。
思っていたほど悪いヤツではなかったラッセルに、やがてニックも心を開くんであるが、中盤のW不倫やらを交えて考えると、あまりにもラストがお粗末で、それでいいのか!?とも言いたくなってくるんだが・・・

空は広く、男は罪深い。
この作品で言いたかったのは、このふたつであろう(笑)