アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

うるさい女たち ’88 アメリカ

2007-03-30 | コメディ
ベット・ミドラーといえば、コメディはもちろん、シリアスものも完璧にこなす女優である。
ウーピー・ゴールドバーグとは、その点が似ているかもしれない。
個人的には、コメディ作品の彼女たちの方が好きではある。

邦題で同じ〈女〉のつく’86の『殺したい女』では、ダニー・デビートとの共演で笑えた。
超ド迫力のオーバー・リアクション(歩きかたも楽しい!)も彼女ならではでいい。
思うに、非常にスマートな(スタイルではなくて・・・)女性であろう。

本作品での主演は彼女と、80年代のコメディエンヌの一人、シェリー・ロングであるが、今回は気持ち、シェリーの方が活躍する話である。
とにかく、彼女たちのやりとりが愉快。
言いたい放題のドタバタ喜劇だ。

同じ男を好きになってしまった対照的な二人。
しかし、その男が二重スパイで行方をくらました途端、対立していた彼女たちは力を合わせて男を追いかけてゆく。
映画の中での二人の結束が、スカッとしていて気持ちがいい。
男としてはたまったもんではないだろうが、女たちの執念は男が思う以上にスゴイもんである(笑)

シェリーの大活躍を見ていると、“好きこそ物の上手なれ”のお手本みたいであるが、役の上とはいえ、バレエ歴9年で、これほどの手柄を残せたことに、本人も驚いたに違いないだろう(笑) 

クリミナル・サスペクツ 2001年 アメリカ・ドイツ

2007-03-24 | ミステリー&サスペンス
600ドルでギャングの運転手を引き受けたレニー。
しかし、それが単なるパシリではないと気づくのに時間は要らなかった。

ド素人のレニー。
その世界に少しでも手を貸す“俺”とばかりに、マックィーンの『ブリット』を気取る姿が青臭い。
そんな震える手で銃を構えていたんじゃ、黒のタートルネックが泣きます(笑)
車を発進させる際、バックミラーをパシッと叩くレニーを見た捕われの身ジミーが、「ブリットか? マックィーンの」と訊く。
レニーの格好と仕草でそれと見定めた彼は、なかなかの映画通である。

700万ドルを強奪したジミーを誘拐したミルトン。
だが、レニーを雇ったこの男は、対立派(ジミー側)の車に轢き殺されてしまう。
運転どころじゃない・・・ おいおい俺はどうしたらいいんだ・・・
軟禁されているジミーとミルトンの頭(かしら)、それぞれが言うことに耳を傾けるのだが、どっちの言い分を信じればいいのか判らない。

裏切る者、裏切られる者。
裏切り者は、何度も人を欺く。
しかし、裏切られた事のある者は、同様のことを人に返したりはしない。
ジミーは如何に自分の口が堅いか、レニーに切々と語る。
さて、レニーは彼を信じるのか、それとも・・・

これは実話だそうだが、結局のところ、レニーはラッキーガイだったんだなぁ。 


ヴァンドーム広場 ’98 フランス

2007-03-16 | ミステリー&サスペンス
パリの観光名所で〈広場〉というと、真っ先に思い浮かぶのがコンコルド広場だろうか。
そこからオペラ座へ向かう途中に、このヴァンドーム広場がある。
マドレーヌ寺院やパリ三越も近いから、恐らく日本人観光客は知らずに、何気にこの広場を通り過ぎている確立は高い。

ヴァンドーム広場の一角にある老舗宝石店。
店は火の車という状況の中、主人が自殺する。
その妻マリアンヌは、アルコール依存症を克服し、かつて宝石の名ディーラーだった手腕を再び見せ始めるかと思いきや・・・

盗品の品をさばこうとした理由で追い詰められた夫。
夫の残したこの宝石の買い手を何としてでも見つけて、店を再建させようと願う妻。
だが、夫がこの品を誰から盗んだかが問題であった。
それがかつてマリアンヌが愛した男の物だったとは。

’02の『8人の女たち』では、かなりの厚塗りが目立っていたカトリーヌ・ドヌーブであったが、やはりどの作品でも彼女の存在感というのはすごいと思う。
例えるなら、“くさってもカトリーヌ・ドヌーブ”とでも言おうか。

バベットの晩餐会 ’87 デンマーク

2007-03-08 | ドラマ
温かく心のこもった料理を食せることは、人生の喜びの一つである。
味そのものに関しては好き好きもあるし、個人差があるだろう。
だが、気持ちのこもっているものは、誰が食べても旨いと思うのではないだろうか。

「料理は愛情」とよく言われるが、美味しいものを提供したいと心底願う料理人の腕はやはり違う。
もちろん、お母さんたちのあったかい家庭料理もそう。
反対にお仕着せのものだったりすると、味も素っ気も無い、見た目だけの料理もあったりする。

19世紀のデンマーク。
小さな漁村のある家で、家政婦を務めるバベット。
彼女は、牧師の生誕100年のお祝いの晩餐を任せてほしいと申し出る。

フランスから亡命してきたバベットは懸命に働き、この小さな村にとけ込もうとしていた。
かつてパリの有名店でシェフをしていた彼女は、今回の晩餐のために腕によりをかけて、村人たちにふるまおうと考える。

フランスから取り寄せた食材の数々 ― 海亀や何羽ものうずらにシャンパン・・・
初めて見るこれらの食材に、村人たちは驚き戸惑う。

テーブルを囲んだ村人たちは、その珍しい料理を黙々と食べ続ける。
誰も料理について口にしない。
だが、みんなの表情が徐々に柔らかくなり、和んでいく様子がとてもいい。

まさしく、いい料理は人の心を幸せにする。 



幸福なる種族 ’44 イギリス

2007-03-03 | クラシック
巨匠デヴィッド・リーン監督が描いたファミリードラマ。
1919年から20年間の、ある一家の出来事を時間の流れと共に紡いでいく。
時代背景は違えど、ごく普通の家族の日常は今も昔も変らない。
いつの時代も親は子を心配し、母は家事で忙しく、時折、家庭内でくだらない言い合いをしたり。

子供たちの成長と共に、幸せな時間(とき)はやってくる。
逆に、辛い時期もある。
だが、不幸の波を乗り越えていけるのも家族があってのこと。

個人的に感銘を受けたのが、父親が息子の結婚式当日にしたある忠告。
これがいい話だった。
今でも(いや、時代は関係ない)大黒柱になる息子にこういった話を聞かせたら、身が引き締まるんじゃないかな。
親父に言われれば、男たるもの「そうか」って。

気を揉んでばかりの母親を演じていたシリア・ジョンソン。
何となく狆に似てて、決して器量のいい女優さんではないのだが、彼女が作品を引っ張っていっていたのは間違いない。
翌年の『逢いびき』でも、同監督と組んでいる。
何とも不安げな表情の似合う女性(ひと)である。