アブリコのCinema散策

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ある子供 2005年 ベルギー・フランス

2013-02-01 | ヒューマン・ドラマ
「親になる」とはどういうことか。
子どもが生まれれば、必然的に親にはなる。
しかし、尋常ではない出来事が多い昨今、懸命に育てることで、初めて親になれるのではないか。

ブリュノは20才、妻のソニアは18才。
その日暮らしのふたり。
ブリュノはチンピラ稼業でどうにか日々をしのいでいた。
そんな中、ふたりに初めての子が生まれたのである。

ソニアは大事に我が子を抱き、愛しそうに息子の顔を見つめる。
対して夫は、特別関心がなさそうな感じ。
我が子よりも、金を稼ぐことしかいまは頭にない様子。
ソニアは言う、「定職に就いて」
だがブリュノは決断してしまう。
金を得るために、我が子を売ることを。

大金は入った。
ソニアはその事実をしるやいなや、その場に倒れこんでしまう。
動かないソニア。
ブリュノはここで、初めて子どもの大切さに気づくこととなる。
〈オレは子どもを売ってしまった。 だからソニアは悲しみのあまり倒れてしまった。 だから子どもは大切なんだ。〉
おそらくこんな感じで、彼なりの思いが頭の中で駆けめぐっていたに違いない。

このブリュノという青年。
本物のワルにはなりきれていない。
自分の仲間(子分)は小学生くらいの子どもたちだ。
ブリュノは、彼らにも正当な分け前を渡してやる。
子どもだからといって見捨てるようなこともしない。
なにより彼は、ソニアを愛している。

ふざけ合う二人は本当に若い。
まるで高校生のようだ。
それがラストでは、互いの額をつけ合い、手を握りしめ、むせび泣くのである。
なぜこの映画がカンヌでパルムドールを受賞し、日本では文科省特別選定されたのか。
それは映画の後半で、十分に証明されているように思う。


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