ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

諏訪敦 絵画作品展

2008-02-09 21:34:09 | Weblog
新宿の佐藤美術館に行き、諏訪敦展を見に行った。
見事までに丹念に書き上げられた絵が並んでいた。まるで写真のようである。精密なリアリズムと言ってよいでしょうか。本物を前にすると、確かに絵ではあるが、迫力がある。
女性の澄んだ目、髪の毛も一本一本鮮やかだし、血管やほくろ、あざも見える。腹部を手術した女性の傷跡は痛々しいが、写実的に描かれていて、力強く生きているようにも思えた。
前衛舞踏家の大野一雄さんを描いた絵、「絵画の原点回帰としての写実表現にある種の限界を感じ始めていた」という諏訪が、取材を通じて得た情報を作品に取り込んでいったという。リアルに描くなかで、そこに幻想的な雰囲気をまとわせている。《大野一雄の幻視》にも、幻想と現実性が入り混じり合っているのである。また、100歳を迎える大野一雄さんは介護ベッドで口をあけて横たわっている絵もあった。老いた姿を克明に描いている。骨と皮はくっついており、しわやしみ、あざなども克明である。その姿が生々しく生きてきた歴史を考えさせられる。
実父のベッドに横たわった姿や遺体を描写した絵画もあって、諏訪敦の父親に対する気持ちも伝わってくるようで、印象的だった。
人物の体の線も立体的に描かれ、背景も人物や物を浮き彫りにするようで、目立たないが、細かく描写され、大きな役割を果たしているように見えた。髪の毛や体の線の影や体についた水滴などもよく見ると細かく描かれていた。
とにかく、ここまで絵で写実的に精密に表現できるのかと思ってしまった。その上で、写実的な絵にとどまっていないのがすごい。