ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

シッコ

2007-09-06 16:18:33 | Weblog
『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』と米国社会に問題提起を続けているマイケル・ムーア監督の最新作『シッコ』(SiCKO)を観た。
先進国で、唯一国民皆保険制度がないのがアメリカである。そこにマイケル・ムーアは切り込んだ。"sicko"とは"病気"とか"感染者"という意味である。アメリカでは、健康保険は公共サービスではなく、おもに民間の保険会社が受け持っている。貧困層の人が受け入れられない。悲惨である。しかし、この映画はこのような無保険者の話ではなく、保険を受けている人たちの話でもある。
映画の冒頭で交通事故に会い、意識不明のまま搬送された人は「事前に救急車を使うことを申告してなかったから、救急車の搬送費は保険でおりなかったの」という状態。病気になってもなかなか保険会社がお金を下ろさない実態。病院をたらいまわしにされて子どもが死んだり、路上に放置される高齢者などたくさんの悲劇が映し出される。こんなことがアメリカではまかり通るのである。
また、これは政府の政策の問題でもあり、保険会社の政治家の癒着と利益の問題でもある。保険会社に都合の良い法律を通すと、天下り先が用意もされている。こうして、利益優先主義のシステムで、命を落とす国民がたくさんいる。何とかこのような悲劇は変えなければいけないとドキュメンタリータッチで、深刻ではあるが、ユーモアも交えながら訴えている。
カナダやイギリス、フランスなどの医療制度をたずねて、いかに医療が患者のために行われているかが描かれる。アメリカ人が医療を受けるために、カナダ人と「偽装結婚」したり、医療費がかからないフランスに永住をしたり、9・11テロで究明作業に従事し、病気になった人がアメリカで治療が受けれないので、キューバに行って、治療を受けたりする。 
公的医療保険制度の導入が社会主義国の第一歩であると恐怖をアメリカ政府はあおっているが、そうした体制とは関係なく、国民の命や生活に直結する医療とか福祉は営利化や市場化にはなじまなく、必要なところに給付されなければならなく、それは公的な保障が必要である。
このことは同時に日本も例外ではなく、日本の医療制度にも警鐘を鳴らしているともいえる。今日、医療制度の本人負担率は年々上がってるし、介護保険制度も導入され、本人負担が高まり、老人医療費の問題も深刻である。今後の医療制度も考えていく上でも重要な問題提議をしているようにも思えた。