おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ザ・シークレット・サービス

2021-02-25 09:05:48 | 映画
「ザ・シークレット・サービス」 1993年


監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 クリント・イーストウッド
   ジョン・マルコヴィッチ
   レネ・ルッソ
   ディラン・マクダーモット
   フレッド・ダルトン・トンプソン
   ゲイリー・コール

ストーリー
フランク(クリント・イーストウッド)は合衆国所属のシークレット・サービス・エージェント。
一匹狼的な異端児で相棒は臆病なアル(ディラン・マクダーモット)だけである。
ホリガンは、ケネディ大統領がダラスを訪問した際の護衛に失敗したことに深い自責の念を持っていた。
大統領の再選キャンペーンがスタートしたところに、大統領暗殺の脅迫が届いた。
やがてホリガンは殺し屋リアリー(ジョン・マルコヴィッチ)が大統領の行動を監視していることを知った。
さらにリアリーはJFK警護に失敗したフランクの過去を知っていて、電話で彼に挑戦してきた。
フランクはキャンペーンの護衛に加わるが、女性護衛官のリリー(レネ・ルッソ)以外の同僚は快く思わない。
変身術を身につけたリアリーはロサンゼルスに飛び銀行に口座を設けると、係の女性とルームメイトを惨殺し、ワシントンに戻った。
演説会場の安全を確保する忙しい日々の中でフランクとリリーに特別な感情が芽生える。
やがてリアリーの面が割れ、フランクは彼のアジトに侵入するが、彼を待ち受けていたのはCIAの局員だった。
逆探知に成功し、フランクとアルがリアリーのアジトを急襲した。
リアリーを追跡するフランクは、ビルの間を飛びこえようとして失敗し、危機を救ったアルは撃たれて絶命した。
やがて大統領がロサンゼルスに到着し、同時にリアリーもビジネスマンに化けて出現。
命令を無視するフランクは任務からはずされる。
フランクは、リアリーが部屋に残したメモが口座番号であることに気づく。
フランクはリアリーが多額の政治献金をして、大統領のパーティに出席していることを知る。
大統領のすぐそばの席に座るリアリー前にフランクは立ちふさがった。


寸評
シークレット・サービスを描いているが派手なアクションやカー・チェイスは出てこない。
主人公のフランクをスーパーマン的なヒーローとして描くことを避け、軽妙でユーモラスな面を見せながらバーでウイスキーを傾けながらピアノを奏でて女性エージェントを口説き、何度もにやけた表情を見せたりする実に人間的な男として描いているのが、かえって新鮮に映る。
大統領の乗る車を走りながら護衛する姿がフランクの年齢を上手い具合に感じさせている。
もう一つのファクターが、ケネディ暗殺事件の際に自分が役目を果たせなかったことを悔いていることだ。
しかも犯人のリアリーが指摘するように、もしかするとその時シークレット・サービスでありながら自分の身をかばったのではないかという疑念を感じさせる描き方は、主人公の精神構造を複雑にしていて興味を持たせている。

リリーによってフランクがケネディの浮気をもみ消して代わりに処罰されたことが語られている。
またリアリーはCIAの要人暗殺部門にいたということで、どちらもアメリカの闇の部分をそれとなく描いている。
秘密がばれないようにCIAがリアリーの殺害を計画したのか、それとも説得にいった仲間をリアリーが惨殺したのかは不明だが、リアリーが言うようにCIAが殺害しようとした方が説得力がある。
銀行の窓口嬢を殺害した理由や、プラスチックで拳銃を制作している理由、弾丸をキーホルダーに忍ばせる理由などが終盤で明らかとなる描き方は堂に行ったものだ。
それとなく描いて疑問を後から解きほぐす演出だったと思う。

CIAの暗殺要員として教育されたリアリーは、自分の人生を狂わし“怪物”に仕立て上げた政府への復讐のために大統領暗殺をくわだてる。
この男が主張する論理はおかしいのだが、そんな狂った男をジョン・マルコヴィッチが非常に説得力のある演技で見事に作り出している。
ハンターたちを撃ち殺すシーンは彼の非情さを見事に描いたものとなっている。
彼は別段個人的な恨みがあるわけでもないのになぜフランクを挑発するような行動をとったのか。
リアリーはフランクに「俺とあんたはよく似ている」と言っている。
リアリーは「お前は本当に死ぬ根性があるのか?」とフランクを挑発する。
彼は「なんのために生きるのか」を問題にしていて、結論的には「人生とはつまらないものだ」と思っていそうだ。
生の対極にある死を望んでいて、大統領を道連れとして死ぬことを望んでいたのかもしれない。
フランクへの録音メッセージを聞くと、自分は死にフランクは生きていることを予期したものと思える。
フランクの留守電に「俺たちのような誠実な人間には生きにくい世の中だ」というメッセージも残していたが、「俺たちは似ている」と言われたフランクは愛する女性とともに生きようとすることでフランクのメッセージを否定する。

ラストシーンのリンカーン記念堂で寄り添い合うフランクとリリー=イーストウッドとレネ・ルッソの後ろ姿、そこにかぶさるモリコーネの美しいメロディに深い感動をおぼえるが、見ていてどうもフランクとリリーの年齢差に違和感を抱き続けていた。
なんだか爺さんの老いらくの恋のような感じを受け続けたことがこの映画の欠点だろう。
とは言え、シークレット・サービスの裏の面を見せてくれた本作はイーストウッドの新たなキャラクターを示した。


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