おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ファントム・オブ・パラダイス

2021-10-20 06:58:33 | 映画
「ファントム・オブ・パラダイス」 1974年 アメリカ


監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 ポール・ウィリアムズ
   ウィリアム・フィンレイ
   ジェシカ・ハーパー
   ジョージ・メモリー
   ゲリット・グレアム
   アーチー・ハーン

ストーリー
ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は天才的なロックの作詞作曲家だが、おとなしい若者だ。
その若者が、スワン(ポール・ウィリアムス)という大レコード会社の社長と出会うことによって悲惨なコメディを演じさせられることになってしまう。
スワンは最近ウィンスローが作った叙事詩的なロックのカンタータを横取りして自分のものにしようと企む。
彼は腹心の部下フィルビン(ジョージ・メモリ)に命じて、ウィンスローからカンタータを買いとる約束をさせた。
ウィンスローのカンタータを横取りしたスワンは、それをアレンジして自分の曲として彼が新しく開いたパラダイス劇場のこけらおとしとして公演する考えだった。
それを知ったウィンスローはスワンの大邸宅を訪ねたが、折からそこでは公演のためのオーディションが行われていて、テストを受ける多勢の男女が集まっていた。
ウィンスローは、順番を待つ美しい歌手フェニックス(ジェシ カ・ハーパー)と知り合った。
腹黒いスワンがウィンスローのポケットに麻薬をしのび込ませたために、警官に逮捕され5年の刑を言い渡され、スワン財団がスポンサーのシンシン刑務所に投獄された。
ウィンスローは刑務所内の歯科医の手で金属の総入歯にされ、醜い顔となった。
復讐を誓ったウィンスローは刑務所から脱走し、スワンのレコード工場に忍び込み、機械を壊そうとしたが、不運にもレコード・プレッシング機にまき込まれ顔の半分をつぶされたばかりでなく、ガードマンの拳銃で射たれ、河へ飛びこんだ。
一命はとりとめたものの、彼の顔はふた目と見られぬ形相となり、一夜にしてファントムと化した。
ある夜、ウィンスローはパラダイス劇場の天井さじきから舞台のオーディションの模様を見ていたが、彼のカンタータが改悪されているのを知ると激しい怒りにかられ、スワンにつめよった。
するとスワンは言葉巧みに、一緒に仕事をしないかと持ちかけてきた。


寸評
この映画は「オペラ座の怪人」のパロディなので、元ネタを知っていたほうが楽しめる。
「オペラ座の怪人」は、醜い顔を持つ作曲家がパリのオペラ座の地下深くに潜み、不遇の歌姫を見初めて彼女をスターにするために暗躍し、それに歌姫と幼馴染との恋が絡む話。
こちらは、自分の音楽作品を音楽プロデューサーに騙し取られた冴えない作曲家が、レコードのプレス機に挿まれ顔面を負傷してしまい、その結果仮面の怪人となって音楽プロデューサーに復讐しようとする話で、勿論不遇の歌姫も登場する。
ロック・ミュージカルと紹介されることが多いようだが、僕はそんな感じは受けなかった。
先入観からすれば、ロックはロックでも、もっとハード・ロックの映画かと思っていたが、案外とおとなしい音楽で普通の人でも嫌悪感を抱くことはないと思う。

一種の「カルト・ムービー」なので、 万人向きではなく、見る人によっては 「何だこの訳の分からない、いい加減な話は・・・」と感じてしまう観客も多いだろうことは想像できる。
特に元ネタを知らないと、その気持ちはきっと増幅されてしまうだろう。
脚本・監督のデ・パルマが、要するに彼のやりたい放題をやっている映画なのだ。

面白いのは音楽が商品化されることでの葛藤が描かれていることで、作品に対する入れ込みも解消しなくてはならないし、事細かな契約書も存在する。
そこで生じるひずみにプロデューサーのスワンが悪どい手口で乗じるのだが、最終的に契約書にうたわれている通りの結末を迎えてしまうのは現代的な解釈だ。
レコーディングルームみたいな所でファントムの声を補正していくシーンを見ると、今の音楽は電子的な処理でなんでも出来てしまうのだと思わされる。
実際、テレビの歌番組では口パクがあったり、バンド演奏も実は影のバンドがやっていたりということがまかり通っているみたいだもんね。
さらに面白いのは悪徳プロデューサーが自分の肉体にある秘密を抱えていることである。
これはファントムと化したウィンスロー・リーチが仮面とマントで自分の姿を隠しているのに対して、彼はその姿をさらけ出しているのだが、実は・・・という展開があっと驚かせる。

最後の最後で歌われるのが、「何の取り柄もなく人にも好かれないなら死んじまえ・・・悪い事は言わない・・・生きたところで負け犬・・・死ねば音楽ぐらいは残る・・・」という破れかぶれなものである。
負け犬の滑稽と悲しみにフェニックスが返すのは「ウィンスロー・・・」という切ない一言だった。
身も蓋もない歌詞ではあるが、しかし芸術家は死してその作品が残るのだから幸せというものだ。
凡人の私は残すものなど何もない。

独特の映像美と90分という短時間で語りきるスピード感があり、怪奇的だが喜劇的な要素もタップリなユニークな作品だった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わかる (館長)
2021-10-21 08:06:24
面白い映画だとは思うのですが、日本人にはウケなかったのも分る気がします。
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日本では全く当たりませでした (FUMIO SASHIDA)
2021-10-20 07:58:10
音楽もよく、主演のジェシカ・ハーパーも良かったのですが、日本では全く当たらなかったようです。
私は、DVDを持っていますが。
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