おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

獲物の分け前

2023-09-10 06:52:45 | 映画
「獲物の分け前」 1966年 フランス


監督 ロジェ・ヴァディム
出演 ジェーン・フォンダ ミシェル・ピッコリ ピーター・マッケナリー
   ティナ・マルカン ジャック・モノー ハワード・ヴァーノン
   ジェルメーヌ・モンテロ

ストーリー
サッカール家の広大な屋敷はパリ郊外にあり、うっそうと繁った木立に囲まれた建物は、古風な美しさを備えていて、そこに住む若くて美しいルネは二十も年上の男アレクサンドルと結婚していた。
彼は工業プロモーターで旅行が多かった。
ルネは莫大な遺産を相続していて、彼とはカナダで知りあった。
ルネは家庭とカナダから逃がれるため、アレクサンドルは金のために結婚したのだった。
アレクサンドルは社交界で周囲の人々を魅了するルネに満足していたが、家庭でのふたりの間には、最近夫婦の交わりがなかった。
アレクサンドルの先妻の息子マクシムは、そんな父母の関係を気にもとめず、勉学のかたわら、中国人の教師について中国語を習っていた。
ルネは気軽に彼を学校へ迎えに行ったり、悩みを打ちあけたりした。
若いふたりの親しさはやがて淡い愛に変化していった。
それでもふたりの間には危険な関係が起るようには見えなかった。
だがある日アレクサンドルの留守中、マクシムは父親が毎年催す仮装舞踏会のためのジンギス・カンの衣裳を着て、日光浴をするルネを驚かした。
ふたりのたわむれは、いつしか真剣さを加え、情熱に身をまかせるのだった。
アレクサンドルが数日旅行することになり、ふたりの関係を知らない彼は留守中ルネとマクシムの田舎への旅行を快く承知した。
清々しい田園の中でふたりの愛は深まり、女の歓びを知ったルネは盲目的となっていた。
ある晩ルネはアレクサンドルに離婚を申し出た。


寸評
ロジェ・ヴァディムは雑誌のモデルをしていた18歳のブリジット・バルドーと結婚したのを初め5人の妻を持った。
バルドーを主演にして「素直な悪女」でロジェ・ヴァディムは映画監督としてデビューしたのだが、むしろバルドーが一躍セックス・シンボルとしてスターとなったことが印象深い。
バルドーと離婚した翌年に再婚し娘をもうけるが2年で離婚し、その後カトリーヌ・ドヌーヴと交際して息子を授かったが結婚はせず、3人目の妻となったのがジェーン・フォンダである。
この映画はロジェ・ヴァディムが妻のジェーン・フォンダの為に撮ったような作品で、若い頃のジェーン・フォンダが艶めかしい姿でスクリーンを闊歩するのを見ることができるということ意外に表現のしようがない。
父親の再婚相手の若くて美しい義母と息子が恋に落ちると言うのも通俗的なテーマである。
それ故に禁断の恋に落ちる二人の心の内や、父親と息子の間に沸き起こる確執など、描くことができる事柄は一杯あったはずなのに、単なるロジェ・ヴァディムの自己満足映画で終わっている。
ルネとマクシムが初めて結ばれる場面の処理などはユニークで面白いと思ったのだが、それも不発に終わってしまった感がある。

アレクサンドルはルネの持参金で会社を立て直し豪邸に住んでいる。
結婚は打算的なものだったので、二人の間に愛情があるようには見えず、年配のアレクサンドルが若いルネの肉体に溺れている風でもない。
同じ屋根の下で暮らしているマクシムは二人の関係を感じ取っていたはずで、年齢的にはむしろピッタリの義母に恋するのは当然の成り行きだったと思える。
むしろ若くてピチピチして艶めかしいところもあるルネの肉体に魅かれていたとしたほうが納得感が持てたと思う。
父親の目を盗んで二人は逢瀬を重ねるが、そこに存在するはずのスリル感も全くないので、禁断の恋という雰囲気がまったく出ていないのは不満である。
はじめは軽い気持ちだったルネも、マクシムへの想いが募って遂にアレクサンドルとの離婚を決意する。
アレクサンドルは、財産を放棄すれば離婚してやるとの条件を提示したところ、マクシムへの愛が深まっていたルネはその条件に納得する。
アレクサンドルにとって、ルネとの結婚は金銭目的だったのだ。
さらに事業継続の為にアレクサンドルは金持ちの娘アンとマクシムを婚約させる。
父から婚約を強要され、なんとか拒否しようとしたマクシムだが、結局アンと婚約し仮装パーティの席上で発表されたのだが、マクシムが意に反してアンとの婚約を受け入れざるをえなかったわけがよく分からない。
彼の苦悩があってしかるべきなのだが、やけにあっさりと婚約を果たしてしまっている。
今の満ち足りた生活を失いたくないというだけの打算的な理由であったにしろ、悩んだ末の決断であったにしろそれを描いておかねば、ルネの絶望感が引き立ってこない。
ルネは邸宅の池に飛び込んで自殺を図るが、それもなんだか悲壮感がないし絶望感も感じ取れない。
結局、何もかも失くしたことになってしまったルネの悲劇はラストの表情だけでは表し切れないものだったはずで、描く事が出来なかったロジェ・ヴァディムが悪いのか、演じきれなかったジェーン・フォンダが悪いのか、ルネの絶望感を感じ取れなかったなあ。
多分ロジェ・ヴァディムが悪いのだ、僕は監督としてのロジェ・ヴァディムを評価していない。

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