おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

プライド 運命の瞬間

2023-02-24 07:50:49 | 映画
「プライド 運命の瞬間」 1998年 日本


監督 伊藤俊也
出演 津川雅彦 スコット・ウィルソン ロニー・コックス 大鶴義丹
   戸田菜穂 奥田瑛二 いしだあゆみ 寺田農 前田吟 村田雄浩

ストーリー
1941年、内閣総理大臣兼陸軍大将として米英に開戦宣言した東條英機は、敗戦後の9月11日、GHQに逮捕され、連合国による極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判にかけられることになった。
逮捕当日、自決を図りながら未遂に終わっていた彼は、逮捕後、収容された巣鴨プリンスで極刑を覚悟し、裁判を闘うことを無意味と思ったが、弁護士・清瀬に戦争の原因の全てを敗戦国に負わせ、ナチス・ドイツと同じように日本を裁こうとしている連合国側の裁判意図を聞かされたことから、日本が最悪の国家・民族にされないよう、日本の名誉と真実をかけた”闘い”に臨むことを決意する。
1946年5月3日、裁判が開廷されたが、この裁判の判事団はウェップ卿を中心とした戦勝11ヶ国で構成されており、勝者が敗者を裁くという始めから被告たちに不利なものだった。
しかも、キーナン主席検事を筆頭とした検事団は、元満州国皇帝であった溥儀など様々な証人たちを召喚し、時にその証言を捏造してまで東條たちを追い込もうとしてきた。
A級戦犯として告発された東條を含む28人は起訴状の全てに無罪を主張し、弁護団は原爆の罪や戦勝国の殺人を棚に上げ、敗戦国の殺人のみを非合法とする原告側の論調を崩そうとした。
一方で、判事団の内部に戦犯全員の無実を主張するインド代表のパール判事が現れた。
彼は、戦勝国が一方的に裁く裁判のあり方に異議を唱え、その矛盾を指摘すべく訴えを起こそうとする。
裁判は3年の長きにわたって展開され、やがて東條自身が証言台に立つ日がやってくるが、東條は清瀬と元総理秘書官の赤松に、自分が天皇に逆らって戦争を始めたのだと証言して欲しいと頭を下げられてしまう。
人間の尊厳と誇りを胸に証言台に立った東條は、キーナン検事との闘いに真っ向から挑んでいった。
1948年11月12日、東條に死刑の判決が下り、12月23日に東條以下7名のA級戦犯の絞首刑が執行された。


寸評
東京裁判が不当な裁判であったことは間違いないと思うが、不幸だったことは不当な裁判によって戦争時のA級戦犯が裁かれたことではなく、日本人が自分たちで戦争指導者を裁くことが出来なかったことである。
日本人として東條に対し問うべき戦争責任は、東京裁判で追求されたそれとはちがう。
問われるべきは、勝てるはずのない戦争を始め、多くの国民を死地に追いやり無残な敗戦を迎えたことについての戦争指導者としての責任である。
東京裁判が戦勝国によって行われた結果、東條を初めとする指導者の責任と満州事変から太平洋戦争での敗戦に至る戦争への総括なしに現在に至っているのは日本の不幸である。
この映画においても、戦争指導者の責任追及とか太平洋戦争への総括が試みられているわけではない。
東京裁判の矛盾と人間東條を描いているのだが、東條が英雄的に見えてしまうのは描かれている内容からして仕方のないことなのだろうか。
戦勝国が敗戦国を裁くという東京裁判の在り方を糾弾するするのはいいが、最低の作戦行動とされるインパール作戦をインド開放の為の聖戦とするなど疑問の余地がある。
右翼的と批判を受けても仕方がないような描き方である。
しかしながら東京裁判の矛盾を知る上では一応の及第点は与えられる内容となっている。

東條は日本は三国同盟を結んでいたナチス・ドイツとは違うと主張する。
実際そうで、曲がりなりにも日本政府は存在し内閣は組織されていたのだ。
軍部の暴走はあったにせよ、閣議決定されて実行されるという手順は踏まれていたと思う。
しかし誰かが戦争責任を取らねばならないし、自らの責任を回避することなくその責任は取ったと思う。
問題が起きてもトップが責任を取らない今の政治の方がおかしい。
タイトルのプライドとは日本国としてのプライドだと思う。
そう思うと今の日本はアメリカに対して少々卑屈になってはいないか。

津川雅彦が東條英機を熱演し光っているが、何だこの演技はと思わせるのが戸田菜穂である。
僕は彼女が登場するとシラケてしまった。
そもそもこの映画のインドに関するパートはテーマをぼやかしてしまっているから省いた方が良かったと思うし、能舞台を挟むなどの演出も技巧に走り過ぎている。
誰も引き受けなかった東條の弁護を引き受けた清瀬弁護士の反論や、東條を弁護する米国弁護士やパール判事の存在など見るべき点が多かったにもかかわらず描かれたのは少なく盛り上がりに欠ける。
盛り上がりを見せるのは、やはり東條の反論場面で東京裁判において一番東條が頑張ったのだと思わせる。
人間東條に的を絞っているので、東條が裁判の不条理を清瀬弁護士にぶつけたときに「負けたからそうされるのだ」と言われて、東條が「それを言われるとつらい」と漏らすなど笑ってしまう場面もある。
結局A級戦犯7人が絞首刑に処せられるが、執行日が当時皇太子であった平成天皇の誕生日である12月23日であったなど、東京裁判を初め戦勝国の復讐はすさまじいものだったのだと感じる。
歴史は勝者によって書かれるということだ。


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